この嘘つきが (旧作 最新話)
三日後。
下駄箱を開けた私は軽く固まった。
見覚えのある黄色い透かし入りのの封筒
「まさか、次が来るとは……」
呟きつつ封を開けると
『 藤堂紗綾様
手紙は気に入っていただけませんでしたか?
君をイメージしたレターセットと香りなのにとても悲しいです
先日は来てくれなくてとても残念です
僕の気持ちは手紙では書ききれないので、どうしても会って話がしたいのです
今日こそ同じ場所同じ時間で待っています
君を愛するものより』
「紗綾、それ続き?」
登校してきた優樹が私の手元の便箋を見て、小さな声で囁くように話しかけてくる
「……これって、前この話をしたときにどっかにいたって事?」
「私達が話しているの聞いていてフォローを入れたって感じだよね?」
「っと? ……黒田?」
私のもってた手紙がすっと消える感触に驚いて振り向くと、黒田が眉を潜めていた。
「だれが信じるんだと思うけれど、強引にお前を呼びだそうとするのは感じるな……行くなよ?」
心配そうにこちらを見る黒田に
「行くわけ無いじゃない?」
敢えて明るく、笑ってみせた。
「鳴木!」
今日一日休み時間のたびに一人になるタイミングを探していた彼が、漸く人通りの少ない廊下に向かってくれたのにホッとして話しかけた
「藤堂? 珍しいな、お前が学校で俺に話しかけるの」
「まぁ、今は他に人居ないし、偶には良いでしょう? ちょっとね、公式の確認がしたくて……」
「そう言えば、今日は小テストか、どれだ?」
「ココなんだけどね……」
「ああ……ちょっと分かりにくいかもな、先ずはこの角度に注目するんだ……」
用意した問題を渡せば、そのまま丁寧に答えてくれるのに良心がうずく、……だけど、隣の席が黒田なのにわざわざ鳴木に言うのは流石におかしいと思われそうで、もののついでを装うにはこうするしか無くて、心の中でごめんと言いながら質問を切り上げると
「……あ、そうそう、今日勉強会少し遅れそうなんだ、心配しないで先に始めてて?」
このために一日探してた一言添えると、一瞬怪訝な顔をしたけれど
「判った」
そう言って、頷いてくれた
「ありがとう、お願いね?」
これで準備はよし
夏期講習以降も勉強会は続いていて、授業開始の一時間前に塾の教室でということになって居た。
だから、メンバーも美術室での頃よりも多いし、一日参加できないのは私は少し痛いが、皆には迷惑はかけないで済むと思う。
二通もおかしな手紙を出した相手が気になって、遠くからこっそり見てから塾に行こうと決めたんだ。
五時半と言っているから三十分位前から公園の何処かに居れば姿が見えるかなと、呼び出された場所がよく見えそうなテニスコートのそばの用具室の影に隠れた。
ここは、私が小さい頃ママがテニスに嵌った時によく来ていた公園で、方向音痴の私でもなんとなく地理がわかる……ん、だけど、これちょっとまずい?
ここから見る呼び出し指定位置にはなんだか、同い年位の男の子が二、三人うろうろしているのが見える。
この前から優樹や黒田と話していた内容からも、姿を見せるかは半々の確立だけど、いずれにせよ来るのは絶対女の子だろうと思ってただけに少し焦る。
うーん、流石に私一人で男の子三人に話しかけるのは少し迷うし、第一彼らが手紙の相手とは限らない、どうしようかと考えていると……
「この嘘つきが」
「……っ!?」
背中から急に声がして吃驚して振り向くと黒田が居た
「何でここに!?」
「ちょっとな……それっぽいのはあの三人か、……ひょろそうでは有るがおまえが居るし、目的が判らねぇ以上接触しない方が良いだろうな」
視線が合わないようにとしゃがみ込んで彼らの方を見る私の上から、いつもより鋭く見える視線で彼らの方を見て居たと思うと、そのままひょいと下の方に居る私の方に顔を向けて
「おまえもここまでチャリだろ? どこ置いた?」
そう聞いてくるのに、思わず口ごもる。
「それが、……あそこ通らないと取りにいけないんだよね」
「馬鹿阿呆考えなし」
すると案の定、容赦なく私をこき下ろしたけれど
「重いけどしかたねぇ、乗せてってやる、俺のチャリは向こうだし気づかれず行けるだろう」
大きな身体でさりげなく広場の方から私を隠しながら、自分の自転車まで連れていってくれたのだった。
ここで、削除した日までの本編はup終了です。
今後は、通常通りの月.木更新で続けていこうと思います。
次作最新話は、月曜日までに手を入れてupしようと思っておりますが、先日の削除はこの話のすぐ後だったため、この作品が最新話という状況の方は多いかと思います。
別章をたてて作った過去拍手お礼は、先日のようなミスを避けるためシリーズとして纏めた上で別枠として数日中にup致します。
ご心配及びご迷惑をおかけして誠に申し訳ありませんでした。
今後とも宜しくお願い致します。