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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 一学期~
56/117

謝るな……

「うわっと! ごめんっ……、って、一条!?」

「藤堂? どうしたんだ?」

「や、ちょっと……」

「おまえっ! 人の話くらい聞けよ」

「あぁ! もぅ! しつこいな、鳴木とは何でも無いっ! あそこに居たのはたまたま! どこ行くつもりかなんてあんたには関係無いでしょう!」


 放課後、教室を出て美術室に向かう階段の途中の踊り場で、後ろから鷲尾に声を掛けられた。

 けれど今日は、いつものように髪をからかってくるでも無く、なぜかしつこく先日の事を聞いてくる。

 鳴木と付き合っているのか? 何であんな場所に? 遅れるって何処に行ったんだなんて聞かれて、付き合ってないし、塾の事は言いたくなくてちょっと用事があったと言うにも、はっきり言えないのはやっぱりあいつとデートでもしてたのか、などと絡んでくるのに、面倒臭くなって

「だから違うって!」

 って、そこだけ否定して駆け出したらまだ追いかけて来た。

 そのしつこさに、もう振り切って美術室に行ってしまおうと階段を駆け下りて廊下に飛び込んだ所で一条とぶつかりそうになってしまった訳で。


「なにやってるんだか、おまえは……」

「なにもやってないよ、ただ、鷲尾がしつこいから……」

 そう言うと、一条は私から鷲尾へと視線を移して、何を聞きたいんだ? なんて言い出した

「……何で一条が? 関係ないだろ!」

「関係はない、だがな? 今までこいつと接して来て、その態度で欲しい答えなんて帰って来ると思ってるのか?」

「おまえが間に入れば、答えるとでも言うのかよ……」

 すると一条はそれには答えず、私を見て

「藤堂、今後もこんなのに追いかけられるのは面倒だと思うなら話をすませとけ」

 そんな事を言い出すのに、一条まで巻き込む位なら逃げたりするんじゃ無かったと思い思わず肩を落とすと

「大丈夫だから」

 思いがけない優しい声がして驚いた、悪いようにはしない、そう続けて促すように首をかしげて私が話し出すのを待ってくれるのに、どうしようと思う。

 一条を巻き込みたくは無いけれど、鷲尾の言いたいことも良く判らなくて対処のしようが無い。 

 私が判って欲しいのは、鳴木とは付き合っていないし、何とか塾のことは話さずにたまたまあそこで鳴木と何か用事があったということにして話を終わらせたい……それだけだから、違う人からの意見なら鷲尾も聞き入れるだろうか? 一瞬そんな事を思ってしまった。

 

 けれど、一条のその様子に鷲尾は更に苛立ちを募らせたかのように

「何なんだよ! まさかそいつとまで付き合ってるのか?」

 私を睨み付けてくる。

 ……なぜそう言う発想しか沸かないのかな?

「だからっ! 私は誰とも付き合ってないよ、なんでそういうおかしな事ばかり言うの?」

「~~っ! もういい、本当におまえはイライラする……、マジでこんな女とも思えない奴に、鳴木も一条も頭おかしいんじゃねえの?」

結局そんなわけの分からない捨て台詞を吐いて駆けて行く背中を呆れて見て居ると

「頭がおかしい、か……」

隣で一条が苦笑するのにはっとなる。


「っと、さっきの捨て台詞! あいつまさか変な誤解してないよね!? うわ、やばい、おかしな妄想するなって釘刺しておかないと」

慌てて追いかけようとして、止められた

「やめとけ折角追い払えたのに、どうせ余計ムキになるだけだ、それより鳴木と何があったんだ?」


「助かったけど、やっぱあの言い方はまずいよね? 鳴木にまで迷惑掛けたくないんだけどなぁ……」

 そもそもの切っ掛けと思われるあの日のことを一条に話すと

「まぁ、あの鷲尾の様子じゃ否定した所で変わらなかったと思うが?」

 そんな風に一条が言うのにうんざりする

「おかしいのはあいつの頭だよ、……ごめんね、一条」

 付き合ってるとかとかあり得ないのにね、って謝ったら

「謝るな……お前は悪くないだろう?」

 そう答えてくれたけれど、一条のその顔はなんだか少し辛そうで……。

 私と鷲尾のいざこざに巻き込んだせいで嫌な思いをさせてしまったんだなって申し訳なくて、その顔を直視することができなかった。

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