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紗綾 ~君と歩く季節~   作者: 萌葱
三年生 一学期~
32/117

おまえは俺怖くねえの?

 新しいクラスでの初めてのHRで私は早々に席替えをすることになった。

 本来は出席番号順なんだけど、黒田君の本来のお隣さんが急に目が悪くなったとかで、前に行きたいなどと言い出したんだ。

 みーのは……と見ると、みーのの席は後ろから二番目、ちょっとそれは通らない。

 本来後ろの席というのは人気が高いはずなんだけど、みな口には出さないけど怖がってるみたいで立候補者が居ない。

 なので、一番前の席の私が手を上げて、HR終了直後に引っ越した。

 元々の黒田君のお隣さんは申し訳なさ気な顔で私に頭を下げるから、大丈夫だよって笑っておいた。

「では、宜しく黒田君」

「何で、俺だけ黒田君? おまえ、大抵のやつ呼び捨てだろ?」

「あぁ、黒田君は敵じゃないから」

「敵?」

「極少数だけど、君つけている人は他にもいるよ、初対面の人は基本そうだし、だけど一回でも攻撃された人間に敬称はいらないでしょう?」

「あー、……おまえなんか色々噂あったな」

「黒田君まで知ってるの?」

「まぁな、みのりが心配してた」

 クラスは離れても、遠くに心配してくれる友達が居たと知って、ちょっと心が暖かくなる。

「黒田でいい、なんかおまえに黒田君とか言われると気持ち悪ぃ」

「む……結構レアなのに失敬な」

「おまえは俺怖くねえの?」

 そう言われて、思わずまじまじと黒田を見つめてしまう、確かにこの少し威圧感を感じるような雰囲気を苦手と思う子は多いかなと思わなくは無い。

 けれど、目の前の彼からは私への敵意は感じなくて、

「怖がる気持ちはわかるけど、怖くない、でも、黒田は敢えて威嚇するようなことはやめたほうがいいと思う」

 そう答えると、黒田は意外そうな顔をした後ふっと笑った。


 席替えする前の席は隣が修学旅行の時に鳴木の部屋に居た立原君で、お互い席についた時に吃驚して顔を見合わせてしまった。

「立原くんだったよね? あの時はお邪魔しました」

 そう言うと、相変わらずの穏やかな雰囲気で

「こちらこそ、ご馳走様でした、一緖のクラスなんだね、よろしく」

 笑ってくれて。

 鳴木との時はおかしな邪魔が入ってしまったけれど、今回のクラスは率先して私に突っかかってくるようなのは居なくて、そのまま、私にとっては初とも言える和やかな会話なんかを先生が入ってくるまで満喫してしまった。


 だから、席替えするのが少し惜しくて、残りの荷物を取りに最初の席に戻った時に

「ちょっと残念だったな、この席……」

 机に手を置いたら

「僕も残念だな、でもクラスが変わっちゃう訳じゃないし、今後とも宜しく」

 後ろの席の男子生徒と話して居た立原君がそんな風に声を掛けてくれて、嬉しくなって、振り向きながらおもいっきり頷いたら

 立原くんとしゃべっていた後ろの席の男子が

「へぇ……」

 なんて低い声で呟くのが聞こえた。


「あ、ごめん、邪魔しちゃった」

 慌てると、そのがっしりとした体格の大柄な男子はそんなことはないが、なんて言いつつ

「藤堂……だよな?イメージと違うから驚いた」

 物珍しげな顔で私を見ている

「ん? ごめん、どっかで会ったこと有った、かな?」

 同じクラスになった事も、絡まれたことも無かったから全然知らないはずの彼を見つめ返すと

「結構有名だろ? おまえと話したことはねぇけど、知ってた」

「有名……」

 その言葉に流れている噂を思い出して軽く凹んでたら

「あ、いや、悪ぃ……」

 しまったという顔をして謝ってくれるから、おかしくなって

「謝らなくていいよ、身から出た錆っていうか……でも、無差別攻撃なんてしないよ? よろしくね」

 そう言ったら、立原君までまじまじと私を見た後、二人とも同時に吹き出されてしまった。

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