表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/117

おまえさ……なんでそう攻撃的なの? (side 鳴木) 1

 二年になり、目の前であいつのトラブルを見た時は驚いた。

 出席番号順で隣同士になった時にに戸惑いがちに挨拶をした後、信じられないほどささやかなことで妙に嬉しそうな藤堂。

 けれど、別の奴に声をかけられた途端その柔らかさはするりと姿を消した。

 以前、廊下で見かけていた時よりずっと苛烈な口調、キツい態度、射貫くように相手を睨み付けるその視線……、それは硬質な分何処か危うい気がした。

 手助けをするべきかと思ったけれど、全身で近寄るなと拒絶する様子にどうすることも出来なくて。


 そして、一条。

 出身小学校が同じで、一年の時からクラスも部活も一緒ではあったものの、サッカー以外ではあまり交流がなかったから、いきなり塾のことを聞いてきた時は驚いた。

 そう言えば以前塾に通っていると話したことを思い出し、問われるままに塾を紹介し、二年から行くことになったと言われた時は、ふと藤堂のことを考えたけれど、一条自身から女子に近づくところを見たことはなく、よく周りにいる女子とあいつは明らかに違うから接点は生まれないだろうと、そう思っていた。


 だから、二年になって初めての塾の日に、一条を見て驚くあいつの顔とそんな藤堂を見て妙に満足気な一条を見て、知り合いであることに初めて気がついた。

 それからは、学校でも塾でも何かと近より嫌みを言っているという、らしくない一条の行動にうっすらと浮かんだ考えもあったけれど、下手に口を出せば余計過剰になりそうな一条の反応に介入もしにくくて。


 どうにも手を出すことは出来ないままに、けれど塾で見せるのとは違うあいつの姿は気になって、隣の席という近さもあってつい目で追ってしまう。


 兎に角こいつに絡む奴は多くて、構う奴らの行動も色々だ。

 先日は藤堂名義のラブレターなどを送られたらしい戸田達に呼び出されていた。

 生徒も多い休み時間の教室の前なんて場所で、自分名義のそんな物を披露されたら直接の心当たりは無くても、普通は動揺ぐらいはするんじゃ無いかと思う。

 けれどもあいつは、しらっと筆跡が違うなんて冷静に指摘した挙げ句、私そんな勘違い起こさせるような行動取った? なんて真っ直ぐに戸田を見つめて真顔で言っていた。


 大方、クラスでそれを見つけた戸田が教室で開けて、他の連中に見つかってからかわれまくり頭に来て藤堂のクラスに来たという所なんだろうが……。

 全く冷静な藤堂に比べて明らかに頭に血が上っていた戸田と、その手紙を微妙な目つきで眺めていた坂本。

 特に坂本は、戻り際には『あの男女にそんな感情があるわけ無いと思った』なんて言っていて……。

 

 廊下で一部始終を見ていた俺は、誤解が解けた瞬間、もうそんな奴らには全く興味が無いとばかりにくるりと背を向けて教室に入っていく、凜々しいとも言えるような藤堂にほっとすると同時に溜め息が漏れた。


 基本的に学校でこいつに構っている奴らは、こいつを崩したいと意地になっているんじゃないだろうか? なのに、弱みを見せずに叩き返すか、存在さえしないかのような完全な無視などをして、揺らぎを見せないから苛立ちは更に募る。

 しかも、時々こちらの想像とは全く違うことをしでかす所がある、だから、何となく目が離せない。

 遠くのクラスにまで散ったはずのコイツをかまっていた連中が、わざわざ違うクラスにまで来て構うのは、多分そういう事。


 藤堂は多分自分は嫌われているから攻撃されていると思って居るんだと思うが、俺にはそれだけじゃ無いんじゃないかと思う部分も有って……。


 今の藤堂の苛烈な反応は、徐々に大人に近づいている俺達には毒が強いように思う。

 現に他の女子には普通に振る舞えるクラスの奴らも何故かこいつにだけは別人のような顔を見せる

 そして、それが周囲の目に触れて違和感を生み、……良くも悪くも特別ということは軋轢を生む。


 その事に気がつかずに苛烈に振る舞う藤堂は俺にはどうにも危なっかしく思えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=623019519&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ