何であーゆー事するかな?
今日の給食は、具沢山のおうどんとちくわの磯辺揚げにほうれん草の白和え、それに牛乳。
嫌いな物では無いけれど、麺類の時はどうしても食べるのが遅くなる。
一生懸命食べているのだけど、すするのがどうにも下手で、うどんだと一、二本ずつしか食べられないんだ。
教室のクラスメートの大半は外に遊びに出ており、私みたいに食べるのが遅い生徒か、あとは、昼休みは教室でまったり過ごす極少数の生徒のみが残っている状態。
昼休みには予定もあるしと目の前の食べ物に集中して居ると、目の端がチラチラとなぜだか眩しくて光の方に視線を向けると、窓際の棚に鳴木が座って鏡で光を私に当てていた。
一生懸命食べているのにって、軽く睨むと、くっと笑って更に眩しくなった。
文句を言おうかと思ったけれど、今日はお昼休みに済ませたい用事もあったし、眩しさを我慢して一生懸命食べた。
それに、学校で鳴木に接するのはどう接したらいいか迷う部分が有ったから。
「もう、何であーゆー事するかな? 一生懸命食べてるのに」
「いや、だからこそ? おまえ麺類だとやけに遅くねぇ?」
「猫舌だし、麺類食べるの苦手なんだよ、解ってて何で邪魔するかな、それに何時も昼休みは教室になんて居ないのに」
「部の奴が書類持ってくから教室居ろとか言ってたんだ、暇だったから教室見てたら、誰のか知らねーけど鏡が置いてあるし、必死で飯食ってるのが居るし、何かモルモットみてーって、ああいうのが必死で飯食ってるとつつきたくなんねぇ?」
教室で揉めるのは面倒だったから、その日の塾て文句を言ったら、反省の色もなくそんな事を言って来る。
「かわいそうじゃない! しないよそんな事」
「俺だってしねーけど、おまえなら良いかなって」
「どういう意味よ? 大体学校で私に関わるのは……」
「言っとくけどモルモットって、可愛いとかいう意味じゃねーぞ? 丸っこい顔とその髪が……」
一応は心配をしているというのにロクに聞きもせず、失礼な事を言って居るのに、私の顔がキツくなるのが解ったのだろう。
バッと席を立ち走り出すのをつい、追いかけてしまう
「失礼過ぎない? 食べるの邪魔した挙句のそれ?」
そう言って教室を出ると、丁度入って来た一条とすれ違って、……キツイ視線で私を睨みながら
「何をやってるんだか、ガキっぽいんだよ、おまえ」
なんて言って来る。
一年の時から、何かと絡んで来る一条は、しかし戸田や戸田の取り巻きとは違い攻撃的なわけでは無い、私に向けられているのはひたすら苛立たしげな言葉と強い視線で…。
「放っておいてよ、一条には関係無いでしょ?」
そう言い捨てて、鳴木の後を追いかけつつ、本当にそうしてくれたら……と思う。
多分彼は、私の様な女子が嫌いなんだろう、香織から聞いた覚えの有る彼の周りの女の子の話。
華やかで可愛らしく女の子そのもののような学年でも目立つタイプの彼女達と交流が有る彼には、そりゃぁ私は異様に映るだろう。
同じ女子というカテゴリーに入っていること自体を信じられないかもしれない
挙げ句、ただでさえ目障りなんだろう私が塾にまで居たのは彼にとっても災難だとは思わなくもないけれど……、私だって大切なこの場所でそういう態度を取られ続けるのは嬉しくは無くて。
いい加減こんな子も一人位は居るんだって認めろとまでは言わないから、少しは慣れて放っておいてくれれば良いのに。
そう思いながら、ぐんぐん遠くなる鳴木の背中に向かって、嫌なことを忘れるように思いっきり走り出した。