じゃ、もう彼に近寄らないで?
お久しぶりです。
漸く、紗綾を再開する事が出来ました。
二週間~一月と書きましたが、本当に一月掛かるとは……誠に申し訳ないです。
なのですが、ごめんなさい、今後の更新は週一更新となってしまいそうです。
もう少し詳しい言い訳は、「後書き」若しくは今日の「活動報告」をご参照下さい。
「新年会和也お兄ちゃんは来ないの?」
「紗綾には少し残念かもしれないけれどね、でもおめでたい事なのよ」
冬休みも終盤の週末掛かってきた電話は、和子伯母さんからでその中で『あら、和也君には会えないのね?』って言ったのが聞こえたその人は、丁度その時読んでいた本の持ち主だった。
「和也君とうとう彼女が出来たんですって、その日は彼女さんが帰省から帰る日で半月ぶりだからどうしても迎えに行きたいからって言っていたそうよ、和子さんも嬉しそうでね~」
ママの従兄弟に当たる大学生の和也兄さんは私にとっては本当はおじさん? なんだけど、六つしか離れていない人をそうは呼びにくくて、小さい頃からお兄ちゃんと呼んでいる。
賑やかな人間の多いママの親戚の中でもひときわ賑やかな和子おばさんの息子である和也お兄ちゃんは、おばさんには似ずメタルフレームの眼鏡が似合う静かで本好きな人。
特に推理小説が大好きになったのはお兄ちゃんに借りた本の影響が大きくて……だけど遠方に住んでいるのもあって会えるのはのはたまに巡ってくる法事の時と毎年恒例になって居るママの方の親戚の集まる新年会位なんだ。
新年会の会場は恒例の美味しい中華料理のお店、そこでのフカヒレスープも楽しみではあるけれど毎年その時に借りた本を返して、私が自力で見つけた作家さんの話をすることも楽しみにしていた私はお兄ちゃんの幸せを喜びつつ、今まで年一回と言えど、当たり前に顔を合わせていた人に一番大切な人が出来るって事はその人との距離が開いてしまうって事でもあるのかなぁって、ほんのちょっとだけ……、寂しく思った。
放課後の美術室でいつも通りデッサンをする優樹の隣で塾の課題をしていたところに、突然美術室のドアが開き入ってきたのは、長い髪を三つ編みにして形の良い頭に沿わせている髪型が特徴的な女の子。
沢木さんだったかな? サッカー部の美人マネージャーコンビの一人って話は、例によっての香織からの情報。
女子の中には私を嫌いな子も多いけれど、彼女とは一度も同じクラスになった事は無いし、すれ違いざまの嫌味を受けた事も無いから特に接点も無く、同じ学校でも別世界の人のように思っていた。
そんな彼女が柔らかな微笑みを浮かべつつ
「ちょっとお話ししたい事があるのだけれど、付き合ってくれないかな?」
そう言って小首をかしげて両手を合わせてきた
「構わないけど、ここじゃ駄目なの?」
部員に対してはよく向けられてるらしい通称マドンナの微笑みなんて言われて居るらしいそれを浮かべて誘ってくるけれど、そんな殆ど接点も無い私にそう重要な話でも無いだろうとここじゃだめなのって聞いてみたんだけれど
「ごめんね、二人だけが良いの、お願い」
真摯な瞳で頼み込まれて、そこまで言うのならと彼女の後ろを付いて歩き出した。
連れて行かれたのは屋上で、一階の端っこの部屋からまた随分遠いところをと晴天の青空を眺めつつ
「随分遠くまで来たものだね? それで? 沢木さんは私に何の話があるの?」
そう口を開けば、帰ってきたのは
「鳴木君を好きなの?」
って質問でやっぱりね、とは思った。
私とは殆ど接点の無い彼女、それもサッカー部のマネージャーが私に用事があるとすればそれは鳴木か一条の事だろうとは思っていた。
それに友達としては好きだけど、そう言う意味じゃ無いんだよね? って確認すれば彼女は頷いて
「なら、鳴木に恋愛感情は持っていないよ」
そう答えれば、それで終わると思いきや
「藤堂さんが鳴木君を友達としてしか見ていないって事は判ったわ、なら私が彼と付き合う事になったっても構わないわよね?」
「……何でそんな事私に聞くの? それは沢木さんと鳴木の問題じゃないかな?」
「良いから、返事をして? それともやっぱり藤堂さんは……?」
含みのある口調と責めるような上目使いにうんざりしながら
「構わないよ、これで良いの?」
「ええ、ありがとう」
そう言いながら沢木さんは先ほどのような微笑みを再度浮かべると、何故かわたしの耳元にすっと顔を寄せて
「じゃ、もう彼に近寄らないで?」
「え?」
ごく小さく呟かれた言葉に聞き間違えかと彼女の整った横顔を見つめると
「ね? 鳴木君? もういい加減彼女があなたを何とも思ってないって判ったでしょう?」
――は? 鳴木?
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
さて、漸く再開した「紗綾」なのですが四月からの新生活が予想以上に日々の時間を喰ってしまい如実に小説に使える時間が減ってしまい、非常に心苦しいのですが今後は週一回更新とさせて頂きたいと思います。
基本的には毎月曜日更新を考え中です。
リアルの事を余り書いてしまうのは、この小説の場の空気を壊しそうなのと愚痴だらけになりそうで避ける事として、本気でここまで時間を喰われるとは思ってなかった現状にひたすらあわあわしております。
ですが、ここまで自分なりに綴って来て完結の見えてきた「紗綾」をきっちりと最後まで丁寧に書ききりたいと思いますので、今までの更新のペースでお付き合い頂いた皆様には非常に申し訳ないのですが何とか週一で最後までupを続けたいと思いますので、皆様も出来ましたらこのお話の最後まで一緒に見守って頂けたらと思います。
ここまで待って頂き本当にありがとうございました。
これからも精一杯頑張りたいと思いますので宜しくお願い致します。