第9話
「・・・・コーラル様。貴方は私の言った事を理解して頂けなかったのでしょうか?」
ふと忘れていた存在の宰相殿を見やると、宰相殿は眉を寄せコラール様を見ていた。
「貴方様が次の王妃となる事は確実でしょう。それなのにこの様な事に手を貸したとなればそれを望む事が出来なくなるのかもしれないのですよ?・・・・王妃になる事が貴方の望みではなかったのですか?」
その言葉にコーラル様は宰相を見た。
「・・・王妃になる事が私の望みだったわけではありませんわ。私は陛下のお傍にいたかっただけなのです。王妃になどこだわっている訳ではありませんわ。それに、宰相様は何か誤解をされているようですが、私は手を貸すわけではありません。・・・友人の幸せを願っているだけなのです」
そういうと、コーラル様は私をみてにっこりと笑った。
その言葉に、その笑顔に私は止まっていた涙が再び溢れだしてくるのを感じた。
「・・・・コーラル様・・・・・」
これまで、私はここで一人だと思っていた。友人という言葉になど縁がないと思っていたのに、思わず貰ったその言葉に胸がいっぱいになった。
「・・・・よろしいのですか?本当に・・・」
渋る様に宰相殿はコーラル様に詰め寄るが、コーラル様は宰相の言葉に耳を傾けなかった。
「・・・っはぁ・・・。わかりました。では、その件は私は何も聞かなかったという事で。キャロル様の王妃の件については議会に報告しますが、その後の事は私は存じ上げませんよ。よろしいですね?お2方」
宰相殿はあきらめた様にそう言い残すと、私たちの返事をきかずに部屋を後にした。
・・・残された私たちは、口を開く事もなくお互いを見つめあった。
コーラル様の瞳には悲しみと怒りが見て取れた。
コーラル様から見た私はどのように映っているのだろう。
みっともないただの小娘になり下がっているだろうか?いや、それが本当の私の姿なのだけれど。
そんな事を考えていると、目の前のコーラル様が突然席を立ち、ベットに腰かけている私の元へ来ると私は目の前が真っ暗になった。
バチンっ!!
音と共に頬に痛みが刺した。
思わず、無意識に頬に手を当てて、やっとコーラル様に叩かれたのだと気付いた。
「・・・・貴方はずるいです」
叩いた手をさすりながらコーラル様は私を見下ろす様にそう言った。
「コーラル様・・・・・・・」
叩かれた頬に手をあてたまま私は間抜けな声を出してしまった。
彼女が言った言葉の意味は何となくだがわかる気がした。
「・・・・申し訳ありません・・・・・。ですが・・・・」
いい訳をしようとは思わなかったがつい口から言葉がこぼれ落ちた。
しかし、コーラル様はそれを遮った。
「結構です。わかっているのです。私だって貴方の気持ちがわからない程馬鹿ではありません。しかし、どうしてもっと早くおっしゃって下さらなかったのですか・・・。王妃の立場がどうというわけではありません。私達はもっと上手くやれていると思っていたのに・・・・」
そういうと、コーラル様は肩を落とした。
「・・・・申し訳ありません。叩いてしまって。・・・・・わかっているんです。キャロル様が私にそれを言えるわけがないと言う事も。ですが、やはり・・・・・っ」
コーラル様はギュッと両手を握ると何も言わず後ろを向きドアの方へと歩き始めた。
そして、ドアまで来ると扉に手をかけて言った。
「・・・・我が屋敷に来られるという件は必ず私が何とか致します。・・・・しばらくの間、キャロル様にお会いできないでしょうから、これだけは言っておきます。・・・・・・私は、心の底からキャロル様の事が好きなのです。ですから、私を見くびらないで下さいませ」
そういうと、コーラル様は部屋を後にした。
短めですみません・・・。
あと、2話で話も終わります・・・・。
予定ですが・・・・・。