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王妃様の苦悩  作者: 睦月
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第7話

私達は見つめあったまま、重い空気が漂っていた。

しかし、その空気は意外な所から破られた。


「・・・・それよりも、もっといい方法がありますよ?」


私たち2人しかいないはずの空間からなぜか先程出て行った宰相の声が聞こえてきた。

その声のする方をみれば、扉を開けて寄りかかっている宰相がいた。


「・・・・おかしいですね。確か、侍女にコーラル様と2人で話したいと伝えて置いたはずなのですが?」


ジロリと宰相殿を見れば、宰相は肩をすくめ笑った。


「はは、侍女達は本当に素直なようだ。貴方達を2人にする為にどこか行ったのでしょう?ここまで誰にも会いませんでしたからね」


その言葉に、思わずため息を着いた。

いくら2人にしてくれと言ったからと言って、続きの部屋に誰も待機していないとはどういう事だ。職務怠慢もいいところだ。・・・・まぁ、確信的犯行なのだろうが。後でこってり絞ってやる。


「そうですか。それは失礼しました。どうやら彼女達には私の言葉を無駄に広く解釈してしまったのでしょうね。・・・・・それで、どういったご用件でしょうか?」


傍にいるコーラル様は宰相殿と私のやり取りにびくびくしながらその様子を伺っていた。


「いえ、お見舞いに参上しただけですよ?そうしたら、なにやら面白そうな・・・いえ、重大なお話をされていたものですからつい・・・」


まったく悪びれずに寄りかかっていた扉から身を起こすとこちらに歩いてきた。


「・・・・どこから聞いてらしたのでしょう?」


ジロリと睨む頃には宰相殿は既にコーラル様の隣りに立っていた。


「私、王妃をやめたいのです。辺りでしょうか?」


・・・・・ほぼ最初からじゃないか!!!!!

思わず叫びそうになるのをぐっと堪えて、とびきりの笑顔を作った。


「ま、まぁ!宰相殿ともあろう方が盗み聞きとは感心いたしませんね」


もう、本当に!!盗み聞きとかありえないから!っていうか、聞かれたらいけない人№2ですから!!

もちろん、№1は王子ですよ。


「それは、申し訳ない事をしたと思っていますが、こんな重大な事を貴方がた2人で話すのはいかがなものかと思いますよ?」


先程までの表情とは打って変わって真剣な表情になった宰相殿に、思わず顔をそむけてしまう。

もちろん、こんな話をしていいわけがない。王妃をやめるなど言語道断だと言う事もわかっている。

わかっているのだが・・・・・。

そろそろ、私だって限界なのだ。

王子に望まれて王妃になったのに、いざなってみれば私は必要とされなかった。

それどころか、周りからは疎ましいものを見る様に扱われる。

私の所に仕事がたくさん廻ってくるのだって、私が大きなミスをして王妃として資格がないと言いたいからなのだろう。

侍女だって、今回の様に仕事を放棄するのも私に仕えている事を不満に思っているからだ。

元々、行儀見習いで入っている侍女達。本来ならば私よりも爵位が上の貴族ばかりなのだから。

そんな中で、コーラル様は私に唯一普通に接してくれていた。

こんな事を頼めるのはこの方しかいなかった。

2人の視線が私に向いている事すらも私にはもう辛かった・・・。


「・・・・・も・・もぅ・・・・限界なんです・・・・・・・」


必死の想いで出した言葉に私は今まで我慢していたものがあふれ出した。


「これまで、必死に頑張ってきたのは王子の為でした。ですが、いつからか王子の為ではなく、私がここにいていい理由を見つける為に王妃業をやってきました。しかし、誰も認めてくれない。王子はコーラル様に。侍女達は上辺だけ。仕事だって今まで王妃がやってきた事のない様な仕事をさせられて・・・。いつも失敗しないよう細心の注意を払ってきました。それに、あの謁見。上座に座らされて私の意見を聞きに来ているわけでもないのに彼らは私にわからない専門の話をする。まるで、お前はこんなこともわからない役立たずなのだと言われているようでした。・・・私は何のためにここにいるのでしょう?」


あふれ出てくる想いと、頬に伝う冷たい涙が止められなかった。

傍にいた2人は黙って私の話を聞いていた。


「・・・・コーラル様でしたら、きっと王子を支えて差し上げられます。十分な教育を受けられているコラール様ならば専門的な事もわかるでしょう。公爵家のコーラル様でしたら、侍女達も素直に従うでしょう。そう思うと、私がいなくなって困る事などないと気付いたのです。それどころかすべてが丸く収まるのではないかと・・・。ならば、私は・・・・・もう・・・・自由になりたい・・・・」


こんな事言いたくなかった。

私のわがままだってわかっている。最初に望んで王妃になったのはこの私だ。

誰も悪くない。

ただ、私が夢を見すぎていただけだ。

そして、現実を直視して私ではだめだと感じただけ。

これを我がままと言わず何と言うのだろう。

こんな私に振り回される王子もコーラル様も宰相殿も侍女たちだっていい迷惑だ。

それが、分かっているからこんな事言えなかった・・・・。

言ってはいけなかったのに・・・・・。






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