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王妃様の苦悩  作者: 睦月
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第5話

「王妃様。ご成婚1周年のパレードで着るドレスが出来上がって参りました」


侍女頭自らドレスを運ぶとは、このパレードがいかに大事かが伺える。


「素晴らしい出来ね。パレード当日まで大事にそちらの衣裳部屋に置いておいて頂戴。それから、私ちょっと体調が思わしくないの。それを片付けたら少し一人にしてくれる?」


少し、大げさにふらついて見せた。


「まぁ!王妃様、どうされましたか!?すぐに医師を呼んでまいりますので今しばらくお待ちください!!」


そういうと、侍女頭は慌てて部屋を出て行った。

と、言うのもこの王宮にきて私は初めて体調を崩した。・・・・ことにした。

実のところ体調はすこぶる良い。ぴんぴんしている。

目的は、側室・・・コーラル様のお見舞いを期待してだ。

コーラル様が側室になられて、コーラル様が体調を崩されたときに、私は何度か見舞いに行った。というのも、


「コーラル様が伏せっておいでのようです。側室だろうがなんだろうが、後宮を筆頭とする王妃様がお見舞いに行かなければ示しがつきません。もちろん王妃様が伏せった場合には側室が見舞いに来られます。昔は体調を崩したら、ご懐妊かどうかの確認の為にそれぞれの方がお見舞いに行かれていたようですが、それがいつしか、体調を崩せば見舞いと言うのが後宮内の暗黙のルールとなっております」


何それ。ホントくだらない。っていうか、病気のときくらい静かに休ませてよ!って普通思うのではないだろうか。なんて、思いながらそれを聞いて、しぶしぶコーラル様の元へ向かった。

もちろん、体調を崩されていると言う事は心配だったが、医師の話によればただの軽い風邪だとの事。

ならばしっかりと薬をのみ寝ていれば治るだろう。

我が家では、体調を崩せば、病人を気遣って静かにしていたものだ。それこそ、誰かに移してはいけないと母か使用人以外は近づかない様になっていたものだ。

まったくもって、後宮とはめんどくさい。そんな仕来たりが一体どの物語に書かれていただろう?

夢は本当に夢なのだなと改めて実感する・・・・。


「って、今はそれどころじゃないわね。とりあえず、医師に診察してもらって・・・・・」


医師に診察してもらえば、病気でない事くらいすぐにわかるだろう。それでも、王妃が体調がすぐれないと言えば、過労もしくは軽い風邪と診断されるだろう。

その後、きっとコーラル様がお見えになるだろう。・・・・まぁ、あんなこと言った後に来てくれるかどうかは分からないが・・・・。

そんな事を思っていると、扉からノックが聞こえた。


「失礼します。王妃様、宮廷医師のトレートでございます」


待っていた医師が来た。・・・・確かに待っていたのだが・・・・。


「な、なぜ、宰相様も・・・?」


医師の後ろに見える人影は間違いなくこの国の宰相殿だ。

・・・・この人こそ、私に色々と仕事を持ってくる張本人。この人の顔を見ると思いだしたくもない山の様な書類が思い浮かんで若干焦ってしまう。


「王妃様、お加減いかがでございましょう?先程、トレート殿の所でお茶を頂いておりましたら、王妃様の体調がすぐれないとお伺いしましたので、お見舞いに参上した次第にございます」


・・・嘘だ!!

にやりと笑う宰相の顔を見れば、言っている事とまったく違う表情をしている。

もともと、この城に来た時から思っていた事だが、実はこの宰相が王子ではないのかと思うほどだ。

と言うのも、常に王子の傍にいるこの若き宰相が、裏で王子を操っている様に見えるのだ。

というか、確実にそうだと、最近思う。

最近は側室にうつつを抜かしている王子に代わって、大半の仕事をしているのがこの宰相なのだから。人前に出る時だけ王子が表立ってはいるが、裏の仕事は全てこの宰相がいなければたぶん成り立たないだろう。


「・・・それはそれは・・・・。お忙しいお時間をわざわざ削ってまでお見舞い痛み入りますわ」


・・・これくらいの嫌味は勘弁してもらいたい。

宰相の持ってくる書類の案件の半分は王子の執務だ。ここ最近、書類を読みながら??と浮かんでくるマークを打ち消すものの、どう見ても私が手掛ける案件ではないだろうというものが多々混ざって来ている。

もちろん、そのたびに確認するが、宰相はどこ吹く風で、問題ありません。と言う。

いや!!問題あるだろう?

っていうか、王子仕事しろよ!!!

と、会ったら怒鳴るのは間違いない。今現在コーラル様の元に通っているので、会う機会もなくそれを言う機会を逃しっぱなしでいるのだが・・・・。


「いえいえ、最近随分と仕事が楽になりましたから、この通り王妃様の見舞いにも参上出来ますよ。・・・で、どういった症状なのですか?」


それは私がやっているからねっ!!!

それに、アンタ医者じゃないだろう!?

と突っ込みたくなるのをぐっと我慢して、私は弱弱しく答えた。


「えぇ・・・、何だか身体がだるくて・・・。熱はないと思うのだけれど、風邪のひき始めかしら・・・」


そういうと、傍に来ていた医師トレートは私の脈を測り始めた。

その後ろでは相変わらずにやにやとしている宰相がこちらに話しかけてくる。


「・・・そうですか。それはお気の毒に。とうとうご懐妊かと思いトレート殿と駆けつけたのですがね・・・」


くっ!!こいつ・・・。王子が私の所に来ていない事を知っていてわざわざそんな事を言うとは一体何を考えているのだろう。こいつの言葉にトレート医師なんてちょっと焦っているではないか。

私は、この城の中できっと一番こいつの考えが読めないと言い切れる。


「まぁ、そんな事あるわけありませんわ。そんな事ご存知でしょう?」


にっこりと笑って言ってやれば、極上の笑顔を返された。

ホント、何なんだ、一体。


「・・・王妃様。脈が少し早くなっていますね。やはり、風邪の初期症状でしょう。本日はゆっくりと横になってお休みください」


トレート医師に望み通りの答えを貰うと、私は弱弱しく頷きベットへ横になった。

そして、トレート医師が部屋を後にしようと立ちあがった瞬間、宰相殿が傍にきて耳打ちをした。


「・・・血圧を上げるお手伝いが出来たのではありませんか?何を企んでいらっしゃるかは知りませんが明日はしっかりと働いていただきますよ?」


思わず舌打ちをしたくなった。

そうですね!!ばれてますね!!ちくしょう!なぜ、わかった。いや、わかるだろうけど、そういう事は黙っとくもんでしょ!!

心の中でがっつりと罵倒すると、私はプイッと顔を横にそらし、宰相は小さく笑いながらトレート医師と共に部屋を後にした。





いつも読んで下さっている皆様、ここまで読んで下さって本当にありがとうございます。


さて、今まで読んで下さった方でも疑問に思われた方もいらっしゃると思いますが、先日ご指摘を頂きましたのでご報告とお詫び申し上げます。


キャロル様が『姫様』と呼ばれる件について・・・。


未婚の姫の呼称であるとのご指摘を頂き、た、確かに!!と思い、急いで訂正致しました。

ここまで姫様と呼ばれていたキャロルは『王妃様』と呼ばれている事になりましたのでお知らせいたします。

変更前に読んで下さっていた皆様に謹んでお詫び申し上げます。

大変失礼致しました。


では、引き続き駄文ではありますが、王妃様の苦悩をお楽しみいただければ幸いです。


睦貴

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