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王妃様の苦悩  作者: 睦月
11/15

王子編  出会い 前編

王子とキャロルが出会った時のお話です。


・・・かなり、嫌な感じの王子になってしまいましたが・・・・。


まったく冗談じゃない。

あの時の俺はどうかしていた。


「王子!!聞いておられるのですか?」


耳元で怒鳴り喚くのは俺の妻であり王妃をしているキャロルだ。


「聞いている。わかっている。やっている」


もはやいつもと変わらないこの言葉は既に口癖の様になっていた。


「・・・・わかっていらっしゃいませんわ・・・・」


ポツリとつぶやくキャロルの言葉はあまりにも小さく聞こえなかった。



****************************


ある時、俺は城の傍の森で狩りをしていた。

あまりにも夢中になり城とは反対の森の奥へ奥へと進んでいる事に気づかず・・・・。

そんな俺に声をかけたのは、ケイルだった。


「王子、そろそろ引き返しましょう。雲行きが怪しくなって参りました」


ふと見上げると青い空を覆い隠す真っ黒な雲が頭上に集まっていた。

だが、そんな事俺には関係ない。狩りに出たのにまだ1匹も獲物を捕らえられていないのだから。


「・・・まだだ。王子ともあろう俺が獲物1匹仕留められないとはいい笑い物だ!!」


そんな俺の後ろについていたケイルが溜息をついた事になんて気づくはずがなかった。


「・・・・ほどほどになさってください」


ケイルの言葉を聞くかきかないか、俺は真っすぐに馬を走らせた。

反省など俺の辞書にはない!ないのだが・・・・・


「なぜ、早く止めなかった!!!」


冷たい雨が俺の身体を叩きつける。

雨が降る前に城に戻っていればこんなことにはならなかった。


「・・・お止しましたが、王子が聞く耳を持たなかったのです。とにかく、このままではお風邪を召されてしまいますから、近くの村に避難しましょう」


俺の側近でありながらまったく気が効かないこの男の言うことに従い、冷えた体を雨から守るためにしぶしぶケイルの言うとおりに馬を走らせる。

しばらく走ったところにこの土地の領主家が見えてきた。

・・・・小さい質素な家だ。

無意識のうちに眉を寄せてしまうのも仕方のないことだとおもう。

俺が暮らしている城に比べてなんと質素なことだろう。

しかし、今の俺はとにかく屋根のあるところで休みたい。広い心でしぶしぶその領主家に足を踏み入れた。


「邪魔をする。この通り雨に打たれて困っている。一晩世話になれないだろうか?」


こんな小さな村の領主家にここまで丁寧に礼をする俺を拒めるわけがない。

俺の顔を見た途端、領主は目玉が落ちるのではないかと思うくらい目を見開いていた。


「・・・・・へ?は?・・・・・お、王子で・・・??!・・・っは!!も、もちろんです!!わ、我が家のような狭苦しい場所に、王子をお泊めする事が出来るなど、天にも昇る気持ちでございます!!」


そうだろう。そうだろう。この様な事がなければ、俺だってこんなところで一晩明かしたいなどと思わん。

そう思いながら、領主であろう禿げ散らかした頭の親父の後に続く。


すると、背後から大きな声と共に背中に何かを投げつけられた衝撃を感じた。


「ちょっと!!どこの誰か知らないけれど、人様の家の廊下を水たまりを作りながら歩くのはいかがなものかと思います!!」


振り向けば小さな女が怒りで顔を真っ赤にさせながらプルプル震えてこちらを睨みつけていた。


「・・・・ほう、誰に向かって口を聞いているんだ?」


見たところ、この家の娘であろう女ごときが私に向かってその様な口の聞き方をするなど、身の程しらずな。


「アンタ達よ!見てみなさい!!アンタ達が通ったあとが水たまりになっているでしょう!?いったい誰がこれを掃除すると思ってるの!?」


ビシッ!!とこの俺様に向かって人差し指を向ける小娘に思わず米神がぴくりとする。

この俺が誰だか分からせてやろうと思ったその前に、俺たちを案内していたハゲ親父が慌てて俺たちの前に出てきた。


「こ、こら!!キャロル!!こちらは王子様達だぞ!!あ、頭を下げんか!!・・・お、王子。大変申し訳ありません。不肖の娘でして、気が人一倍強く礼儀を知らないもので・・・・」


ハゲ散らかした頭を必死で下げる領主に思わず舌打ちをしてしまった。


「・・・ちっ。娘の教育位ちゃんとしたらどうだ」


「・・・王子。背中が汚れております。早く湯をお借りしましょう」


ケイルの言葉に先程の衝撃があった背中を見るとそこが汚れていた。

一体、何があったのかと思いふと足元を見るとそこには汚れた布が・・・・


「も、申し訳ありません!!!娘には後できつく叱っておきますので!!!」


必死に頭を下げる領主に視線をやるとふさふさとは言えない髪の毛がふわふわと舞っていた。

ふと、横ではケイルが小刻みに震えていた。小娘の仕出かした罪に怒りで震えているのだろう。

2人を見ることで俺の怒りも少し収まり、小娘のすることだと広い心でその場を収めた。


「・・・よい。とにかく今は湯につかりたい。早く風呂に案内してくれ」


そう言うと、領主は慌てて頭を上げて先を歩き始めた。

・・・それにしても、この俺に盾突くとは面白い。

あの小娘にはぜひとも俺にぞうきんを投げつけてくれた礼をしなければならないな。それを思い描いて思わず笑いが零れる。

さて、一体何をして泣かせてやろう。






後編も王子の株が更に落ちる気がする・・・・。

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