第1話
10部位の話を書きたくなりました。短くまとめたいと思いますが、うまくいくかどうか・・・・。
内容もなぜかどんどん暗くなっていくような気がしてます・・・。
お気に召さない方はどうぞ、回れ右をしていただけると幸いです。
どの本も、『こうして王子様と幸せに暮らしましたとさ』で終わる物語が大半だ。
しかし、私はそこに待て!!と大声で言いたい。
なぜならば、私はそこまでを経験した張本人だからだ。
「王妃様!!何をぼぉっとされているのですか!!あなたにはまだまだやっていただかなければいけないことが沢山あるんですから、休んでいる暇などないのですよ!!」
私の目付役としてついたのは風格漂うやり手の侍女頭だった。
「す、すみません!え、えっと、次は確か孤児院の訪問に関する書類に目を通すんでしたよね?」
思わず下から見上げるように侍女頭を見れば、侍女頭からの叱咤の声が飛んできた。
「私などに謝る必要はありません!敬語も不要です。何度申せばわかるのですか?それから、そのように下から見上げる目線ははしたないのでおやめくださいと何度申し上げれば覚えていただけるのですか!?」
王子には有効な上目使いも侍女頭にかかれば、はしたないと一蹴されてしまう。
再び頭を下げそうになるのをこらえて、うなづいた。
私は、今更ながらに思う。
・・・・・ヒロインになんてなるんじゃなかった・・・・・・・と。
事の始まりは、今から1年前。
まだ、私はただの田舎の領主の娘だった。
ある日突然、王子一行が私の父が領主を務める田舎までやってきた。
なんでも、狩りをするのに遠出をしたのはいいが、途中で雨に降られてしまい雨宿りをさせて欲しいと我が領地まで足を運んでこられたとの事だった。
それはいい。別に雨宿りするくらいならなんてことはないから。
しかし、問題はそれからだ。私はと言うと、王子が雨宿りしに来ていることなど知らず家に帰宅。
質素な服に包まれていながら、頭がびしょ濡れのまま我が家の廊下を歩いている王子を発見。王子が歩いたところをわざわざ目印として付けているのかと言いたくなるくらい濡れていた廊下を見て私は一喝!
「どこの誰か知らないけれど、人様の家の廊下を水たまりを作りながら歩くのはいかがなものかと思います!!」
・・・・今思えば、相手が誰であろうとそんなこと言うべきじゃなかった。大人しく廊下を拭いて置けば良かった!!
王道中の王道と言われればそれまでだが、実際に人に怒られた事のなかった王子は初めて私に怒られ大層驚かれたようだ。
そして、持たなくてもいい興味をもたれたと言うことだ。
以下、大体王道なので略させてもらう。つまり、あれこれあって、王子は私に猛アタックをかけてきて、私もそんな王子に惹かれて結婚をしたということだ。
そこまでは良かった。
結婚するまでには身分の差がどうだ、ライバルがどうだと色々あった。しかし、それを乗り越える度、私と王子の絆は強いものとなっていった。
まさしく、『お姫様は王子様と結婚して幸せになりました』状態だった。
それまでは!!
ここは強く強調したい。大事なので大声でもう一度言わせてもらう。
そ! れ! ま! で! は!!!!
ここまで、言えばお分かりの方もいらっしゃるだろう。
結婚した当初は王子は優しく私も幸せだった。
しかし、ひと月もたてば、やれ王妃教育だ。執務だ。勤めだ。と王子と合う時間はどんどん減り、今までまったくした事のなかったことをやらされる羽目になった。
そして、王子はというと、あれだけ私にアプローチしてきていたにもかかわらず、結婚して1年も立たないうちに側室を迎えた。その側室は、生まれた時から王子の嫁になるために教育をされたとかなんとか言う公爵の娘だ。
私がいなかったら、その側室が王妃となっていたことは間違いないらしい。
結局、王子の為に教育されたその教養や知識、また王子の喜ぶ事だけをするように躾られているその娘の元に毎日通っているとの事だった。
「まぁ、そりゃ喜ぶ事だけ言われて、私にはわからない貴族の話も出来て、知識も教養もあるならそっちが楽だしいいわよね」
それならば、なぜ私を選んだりなどしたのか!と言いたい。
「全く、幸せに暮らしましたとか、勝手な事言ってるんじゃないわよ!!」
私たちの話もその中の一話として、街で語られているその冊子を私は思い切り壁に投げつけてやった。
「こんな事になるなら誰か初めから言ってくれればよかったのに!!どうして、王子と結婚したその後は幸せになる話しかないのよ!!そんなんだから、ありもしない夢をみてこんなところまで来てしまうんじゃないの!!」
結婚して、もうすぐ1年。たった1年の間に王子は私への愛は冷め、同じように私も王子への愛は冷めた。
そして、夢見ていたお姫様生活にも、もう既にうんざりとしていたのだった。
「あ~ぁ・・・。もう王妃なんて辞めたい・・・・」
出来るのならば、1年前に戻ってやり直したい。
そうしたら、あの時声なんて掛けなかったのに。アプローチされても無視するのに。
もう、何度もそう考えるが、それが現実になることはない。
諦めて、再び自分専用の机に向かい、積み重なっている書類を手に取る。
「・・・側室にはこんな仕事はないのに、どうして私にだけ・・・・・」
ため息と共に手元の判を書類に押す。
「側室の彼女ならこんなことも喜んでやるのかしら・・・・。あぁ、代わってもらいたい・・・・・」
つぶやきは誰に聞かれることもなく、書類に判と一緒に吸い込まれていく。
お姫様ってもっと楽なものかと思っていた。
侍女達が全部周りの事をしてくれて、優雅にお茶を飲んで、王子が帰ってくるまでに刺繍をしたり本を読んだり。
ちらりと、書類の山を見ると再び深いため息が溢れた。
「・・・・そんな楽なわけないよね。普通の家に嫁いだって家の手伝いやらあるのに、王妃がそんな楽な訳ないかぁ・・・・」
それでも、女の子ならば誰でもそんな想像をするに違いない。
やはり、やりきれない思いに私はこの状況を打破するために、判を押しながら考え込んでいた。
この話を読んでいただいた皆様ありがとうございます。
いつも長くなってしまうので、今回は10部を目安に短めにまとめられたらと思っております。
王妃がやさぐれていますが、どうぞ暖かい目で見守っていただけると幸いです♪