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第37話 『貴女の名は』

「サラ……」


 私は思わず歯噛みした。最悪のタイミングで鉢合わせた。まだ全身の脱力感が抜けない。

一難去ってまた一難……だが、サラは微動だにしなかった。


「…………?」


「案ずるな。消耗したところを襲うのは、誉れに反する」


 そのホマレとやらが何か判らないが、ひとまず助かったらしい。


「「ところで」」


 ほぼ同じタイミングで切り出す私とサラ。彼女は短く舌打ちして……


「「訊きたいことが」」


 また被った。サラは小さく嘆息して、その場にドカッと胡座(あぐら)を掻く。そして、懐から一枚のコインを取り出した。


「……何を?」


「お互い知りたい事は山ほどある。ここは一つ、腹を割って話し合おうではないか。コインを持っている側が、相手の質問に答える」


 成程……それなら口論になる事もない。私は早速、サラが弾いたコインを受け止めた。


「よし、まずアレはどういう腹積もりだ? あの様な大立ち回りを演じるとは思わなんだ」


 アレとは礼拝堂での一件だろう。


「大立ち回りも何も、私は普通に名乗っただけよ。それが何か?」


 私がそう答えると、サラはしばし考え……


「リア……それが本当に貴女の名か? ()しくは頭部を強打して、事実と記憶が乖離(かいり)しているとか? 『重要』な事だ。心して答えてくれ」


 サラは至って『真剣』だ。下手にウソなど()こうものなら、首を()ねられかねない。私は包み隠さず、これまでの経緯を簡潔に説明した。


「記憶喪失? ふぅむ……出来れば先に申してほしかったが、拙者の調べも足りなかった」


 今度は私が、サラにコインを弾いた。


「知りたい事は山ほどあるけど……。まず私の名に何故、あそこまで過剰反応したの? 『RTypeX』というのは何? それとフードの連中、妙なスキルを使ってたけど?」


 私が一気にまくし立てると、サラはどうどうというジェスチャーをした。そして、彼女の口から衝撃の事実が明かされる。


「落ち着け、一つずつ答える。まず『リア』というのは、我々の宿敵である女神一派の『盟主』の名だ。次いで『RTypeX』は貴女の父親、AI研究の第一人者であるドクター高田が、『最初』に開発に成功した『人口生命体』の呼称だ」


「…………っっ」


 私は衝撃のあまり、胸を撃ち抜かれた気分になった。『普通の人間』じゃないって薄々気づいていたけど、それでも直に聞くとショックだった……。

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