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神話の残骸 2

















引き金を引けば弾が出る、それは銃の基本動作である。そして撃たれたら当たり所によっては死ぬ


「場合によっては即死の方が楽な時もあるのよ?」


「……そうか…?」


「苦しむ時間を与えないこと、これが戦争の基本」



死に損なった敵兵の応急処置をしながらユリアナが言う


医学の知識でもあるのか、例によって手際がよかった。看護婦にでもなればよかったのに


「ま、結局は状況によりけりなんだけどね。長時間放置されてしまうようなら殺してしまったほうが楽」



いきなり息の根を止めろと言われても土台無理な話である


無意識下で急所を外してしまう



「いつか慣れるのか?」


「慣れるっていうか頭のネジが外れるっていうか」


過度の爆撃と性能差により戦車戦はクランフォールの圧勝で終わり、市街戦も小康状態となっている。両陣営共に陣形を整えているといった具合


これからどうなるにしろ、エクストロキア側にはもう退路が無い。援軍として現れた戦闘機フランカーもF−15とF−16が叩き落としてしまったし


後は一点突破か、じりじり削っていくだけ


「こんな場所にいるからね、脳が麻痺してるだけだと思うわ。終戦したらどうなるか」


死なない程度の応急処置を終わらせ、ユリアナは敵兵を物影へ移動させた


普通にしている分には存在に気付かないレベルで隠蔽している


「何やってんだ?」


「ちょっとね…」


30秒ほどでそれを済ませ、程なくしてマリアンが帰ってきた


いくらか戦闘したらしく、MG4から煙を吹いている


「下水道から施設内まで行けそうだ、敵もいない」


「わかった、行きましょう」


無線機を取り出してレオンと通信し出す。ストライカーを呼んで入口の防衛に当てるようだ


地図上で確認すると下水道は北へずっと伸び、途中で敵基地の真横を通っている、距離約2km


「篭城体勢を整えられる前に侵入したいから、お昼はこれで我慢して」


圧縮シリアルバー数本を渡された


前大戦中のクロスフロントが使っていたDレーション(チョコレートを小麦粉他と混ぜて固めたチョコバー。通称『ヒトラーの秘密兵器』)よりはマシだが、これもだいぶ酷い。噛み砕けないほどに圧縮されているのだ


「……FSRくらい持ってこれなかったのか」


「そんな最新鋭、傭兵に回ってきやしないわよ」


言いながらマリアンにも同じものを渡す


包装を開けてみると中身は大きめのクッキーかカロリーメイト。が、レンガと同じ触感である


「なんつーか…とりあえずこれ『空軍用』って書いてあるけど流通ルートはどうなって……ッ!!!?」


「?」


シリアルバーにモラセスを染み込ませるマリアンを発見、思わず目を逸らした


まぁ、完全に無い組み合わせではないが、戦場に瓶を持ってくるなよ



硬い穀物棒をどうにか飲み込みながら歩き、下水道入口に到着する頃にはストライカーも合流


「戦闘終了時間延長だ。軽く昼休みして、B−52でバンカーバスターをぶちまける。後はひたすら突撃だ」


「え」


「ここから侵入するんなら時間合わせた方がいいだろ」


と、レオンがクラッカーをかじりながら言う


バンカーバスターとは地中貫通爆弾と訳され、土やコンクリート壁を突き破って内部を破壊する特殊爆弾で、要するに徹甲弾を100発ほど投下して基地を耕してしまおうという魂胆のようだ


「ま、ゆっくり行けな」


「わかった」


ジャベリンミサイルを引っ張り出そうと奮闘しているエレナの横を通って下水道内へ


「…………」


一歩踏み入れた瞬間、ユリアナが停止した


「……ちょっと、ガスマスク無い?」







































爆撃が始まった


地中数メートル下まで潜り込んでから爆発する特殊爆弾がふざけた弾数撃ち込まれ、基地施設が上から崩れていく


まったく面倒な事をしてくれる、このままでは生き埋めてはないか



『地上にいる者は基地外へ退避!!それ以外は地下へ避難しろ!!』


スピーカーが怒鳴り声を上げる


が、数秒で爆発音に変わり、やがて何も聞こえなくなった



「む……」


正面からの弾幕が半分になった、逃げたらしい


残り半分が弾切れになるのを待ち、スモークグレネードを投げつつウージーを構える


拾って投げ返そうとした1人と、妙な動きをした新人をまとめて射殺。煙が巻き上がってから普通のグレネードを追加した



地下3階、クリア



「無茶苦茶だ!!ストラトフォートレスが編隊組んでやがる!!」


「とにかく下行け!!生きてればどうにかなるだろ!!」


地下2階への階段を登ろうとした所で話し声が聞こえ、兵士2人が駆け降りてきた


壁に張り付いてウージーを構え


「条例違反で訴えるぞあいつらーー!!!!」


「航空爆撃に関する条例なんてねえよ!!ありそうだけどねえんだよーー!!!!」


すごい勢いで無視された


「………………」


まぁ、いいけど



今ので地下への避難は最後だったらしく、地下2階に人は無し。崩壊した壁と天井が瓦礫の山を作っている


爆撃はまだ継続中。あと30秒もすれば爆撃機が基地上空からいなくなり、再度爆撃するための旋回に入るはず


脱出するならそこしか無い


地上への階段は埋まっていて使えそうにないが、ついでに天井も無かった。地下2階まで日光が注いでいる。後はロッククライミングすればなんとか


爆撃停止を確認してからひたすら上へ上へ


「ッ…!!」



本当に無茶苦茶だ


もう1編隊いやがった



予想より相当早く再開された爆撃で振動が起こり、足場ががらがらと崩れていく


地上まであと数十センチだというのに


崩れる前に次を踏んで鉄筋を掴み最後の上昇


「は……!!」


できず


地下3階の天井が崩落したらしい。瓦礫はごっそりいなくなり、落下を防いでいるのは鉄筋1本のみという有様



そこに爆弾が降ってきた



不幸中の幸いはそれがバンカーバスターだった事だろう、こんな地上付近で爆発するものではない




「ちょっ…まだ終わってなかった!!戻って!!早く戻って!!!!」


「落ち着け!!踏むな!!痛い!!!!」




瓦礫に埋まる前


やけに騒がしい声が聞こえていた


































「夏草や 兵どもが 夢の跡」


「何それ」


「松尾芭蕉」



俳句を詠んでも今は夏ではないし、草も生えていない


B-52が去った後の基地内には、瓦礫と、焦げ跡と、大穴がひとつ


基地としての原型はほとんど留めていない、市街地ではまだ戦闘が続いているが、360度全方位においてアリ1匹も見当たらない


『いやな、ここまで激しいとは俺も思わなかったんだよ』


焼け野原でユリアナが無線機越しにレオンと話している。敵陣を強行突破する訳にもいかず、ストライカーは相変わらず下水道の向こう側で留守番中


「なんつーか、これ、早いところ掘り返さないと生き埋め組がやばいんじゃないか?」


「……とにかく探索してみましょう。マリー、降りれる場所探してきて」


軽機関銃を担いだマリアンが縦穴を覗きだした


地下3階あたりまで突き抜けて崩壊している、そのまま降りるのは厳しいと思うが


「ロープか何か無い?」


『荷物固定用のチェーンからいくらか、今持ってくから待ってろ』


話し合っている間、明はマリアンの元へ


着地地点までの距離を測っているようだ。普通に飛んだら骨折どころでは済まない高さではあるが、紐を垂らすにしろ落差は少ない方がいい


「手榴弾はあるか?」


「ん…?2つほど持ってるが…何に使うんだ?」


と、聞いた所で斜め下を指差された


あったのは大量の瓦礫


「あそこの山を崩せばこっちがいくらか平らになって高さも上がる」


「ああ…なるほど…」


腰に付けていたアップルを手渡す。破片手榴弾にそこまでの衝撃力は無いのだが、場所を撰べばつつく程度でいいんだろう


というか、強すぎると更に床が抜けそうだ



ぽいっと手榴弾を放り込む



「……」


「…………」


「………………ピンを抜いていなかった」


そりゃ爆発しねえよ


「ほら、最後の1個だからな……ん?」


もうひとつを手渡そうとし


マリアンがMG4を構えた


背中のナイロン製リュックから伸びる弾帯と給弾装置を接続し、照準はさっきのアップル


「耳塞げ」














「持ってきました」


「あれ…あのオヤジは?」


鎖を持ってきたのはエレナだった


寸足らずの女の子が自衛用MP7を肩提げして駆け寄ってくる様はお使い帰りの中学生のよう。しかし年齢は18だったはず


「車内で通信機広げてます」


「撃ってよし」


「……あれは撃っていいんですか?」


「あー…まぁいいんじゃない?どうせハッパかけるだろうし」















「どう?」


「だいぶ狭いが…通れない事は…っとと!」


瓦礫の隙間に体を押し込んで地下4階への侵入に成功。電力供給は止まっていないようで、ぽつぽつと電灯が光っていた


生きている人間は1人も見当たらず、あるのは死体のみ。やけに床が赤いなと思ったら、上の瓦礫から血液が雨漏りしている


あの中で何人死んでいるのか


「射殺されてるじゃない、何かあったの?」


「いや最初からこうだったから何もわからん。…つか…悪い先行くぞ」


胃の中身を吐き出す訳にはいかない。明は階段を降りて階下へ


地下5階も同じような惨状だった。血の雨漏りが無いだけ幾分かましだが


「すみません…ここ掴んでていいですか…?」


「ん?」


左腕の肘近くを握られる


振り向くと、小さいエレナがさらに縮こまって引っ付いていた


「こんな頼りないのでよければ」


「…すみません……」


自分以外にも慣れていないのがいたようだ。いや、ユリアナ定義だと"頭のネジが外れていない"だが


コバンザメよろしく追従してくるエレナを引き連れ、部屋の調査を開始


「やっぱり死人見ていい気はしないよな」


「いえ、そういうのじゃなくて…怖いんです、血が」


地下5階は士官の私室のようだ、ネームプレートのついた部屋は軒並み鍵付きで、不用心な部屋も情報が残っているとは思いにくい、典型的な男の独身部屋なのだ


死体を避けつつ一番奥まで行くと、あったのは所長室。この基地は研究所も兼ねていたらしい


「……鍵が撃ち抜かれてる…?」


ドアには銃痕が残っていた


中に入ると特に異常は見当たらず、他と違うといえば、散らかっていないくらいか


とりあえず机の引き出しを開けてみる


報告書数冊と、手紙が1通。大部分が飛行戦艦に関するもので、制式化が近い事を記していた。手紙は嘆願書のようだ、しまわれていたあたり、出す気は無かったのか


「飛んだのか?あんなバカでかい鉄塊が?」


「見たことあるんですか?」


「2歳の時な、失敗した方のだけど」


明が孤児員暮らしになった理由でもある、が、わかりきった地雷を踏むいわれも無いので黙っておく


というか、実感が湧かなかった。あれの犠牲者120名の中に自分の両親が入っているなどと


2歳までの思い出なんて、その後の18年に飲み込まれてしまった



などと考えながら報告書をぺらぺらめくり、『サジタリウス計画』という単語を発見。ここで進行させていたもののようだ


「これは、飛行戦艦の開発計画?」


「いえ、プラットフォーム本体は発案者の名前を取って『オーグレスト計画』です。恐らくそれに付随する兵器の開発計画か何かじゃないかと」



とにかく、これは回収しておこう



他に何か無いかと引き出しをすべて開ける


部下の辞表、故障した空調の修理見積書、基地戦力表、世界地図、よくわからない数字の羅列、マルボロ赤ソフト


「メモ帳を発見」


ただし半分以上が破られている。ここの所長は不必要になったページはすぐに排除していく人間だった、おかげで何か書いてあるのは1ページのみ



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クルスク移転処理



今日の日付だった



「手遅れ臭いな……」


「まだわかりませんよ、もっと下に行けば何か残ってるかもしれませんし」


「そうか」



報告書を持って部屋を出る



次は、更に下か


降りるのが面倒だ


後書きって書いた方がええのん?


じゃあせっかくなので兵器紹介でも。

と思ったのですが。

軽ーく操作ミスして書いた説明文がすべて消失しました。


今回はこれで勘弁してくださいorz




90式戦車きゅうまるしきせんしゃとは、日本国陸上自衛隊の最新兵器であり、チハたんの遠い子孫にあたる高級ブリキ缶(副業で戦車)である。

まだ主力戦力になれていない90式は、各国MBT中でダントツの軽さを誇るスマートで可憐な可愛い外見であるが、中身はハイテクの塊である立派な第三世代戦車なのだ。自衛隊上層部は「主力戦車は情操教育が大事。だから空気のいい大自然の中で90式を育てたい」とし、90式を北海道と富士山のふもとに配置している。


74式戦車ちんからは「最近の若い戦車は…」と渋い顔で見られることもあるが、これは昔から戦車の間で言われている文言であり、エジプトの壁画にも書かれていることである。


90式の開発は70年代より始められた。ドイツ連邦軍のレオパルド2を見た陸上自衛隊の幕僚が

「お母さん!! あれ買って買って!あんなかっこいい戦車うちにも欲しいよう!」

「だめです!前に74式を買ってあげたばっかりでしょ!」

「やだやだ、買ってくれなきゃグレてやる!」

と大騒ぎした結果、しぶしぶ似たような戦車を日本国が開発した。

しかしこれを見ていた海上自衛隊幕僚が「イージス艦買って買って」「16DDH買って買って」とマネして連発したため、90式の購入金が底を尽きてしまい、毎年細々と数輌購入している。なお海上自衛隊のおねだり癖はなかなか消えず、陸上自衛隊は最近お小遣いを減らされつつある。まあほら最近、陸より海のが危ないしね。


当初は10億円という高価な戦車だったが、町工場のおじさんが赤字覚悟で値引きしたため、最近は少しづつ安くなっている。とはいうもののいまだにエンツォ=フェラーリ10台分より高い値段であり、全部に配備するわけには行かず配備は一部のみである。このため、大部分の部隊はスクラップ工場の前でドナドナを合唱しながら整列していた74式戦車を再度使う羽目になってしまった。


なお、この戦車の装甲、ナイチチの少女のごとくツルペタで垂直だが、

「避弾経始つけるなんて面倒でイヤン」

と主張する三菱重工技術陣の怠慢いや涙ぐましい努力により、第二次大戦前の戦車も真っ青のマッチ箱スタイルが採用された。

60年ほど時代を遡ることとなったこの画期的やっつけ設計は、後に比類なき癒し性とやわらか装甲を誇る「やわらか戦車」の発想に大きな影響を与えることになった、かもしれない。さらに、2006年からはイラク派遣で実戦テストしていた、33発の迫撃砲・ロケット弾と一個の即席爆弾(IED)の攻撃を受けても自衛隊員に死者を出さないA.T.フィールド を搭載しその防御力に磨きをかけた


アニメ版

* オープニングテーマ「檄! 戦車教導団!(ゲキセン)」

* エンディングテーマ「夢見るブリキ缶」

作曲・作曲:JAM Project&陸上自衛隊中央音楽隊

スポンサー:防衛省

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