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神話の残骸




















『戦況報告書』



当方が交戦したすべてのクランフォール軍はアルメリア製兵器を中心に装備しており、十年単位で大量の兵器支援を受けていた事は間違いない。本戦争はクランフォールがアルメリアの代理をしているだけであり、根底の元凶はアルメリアにある。つまりここでクランフォール他5国を武力によって制圧する事は何の意味も無く、下手な戦力消耗は避けるべきである。ついては全兵力を各拠点の守りに回し、ある程度の譲歩を含めた和平交渉を……





『飛行戦艦計画進捗状況』



夜間のうちに実施した試験飛行は成功、トゥール港より発進、離水したのち、沿岸10km地点で着水した。これにより『ウムル・アト・タウィル』本体は完成したことになり。残りの弾道弾迎撃用レールガンを実装すれば飛行戦艦計画は完遂となる。しかしサジタリウス計画を遂行中であるパラナはクランフォール軍による侵攻を受けており、早急な研究所移転もしくは戦力拡充……





『エクス・トロキア軍司令部宛』



この計画は間違っています。

サジタリウス計画はICBMへの対抗手段だったはずです、対地攻撃能力は必要ありません。しかも核を撃つなど、アルメリアと考えている事が変わらないではありませんか。

エクストロキアは世界の抑止力とならなくてはならない、それは理解しています、しかし抑止力も一歩間違えばただの暴力となり得る事を思い出して欲しい。

これ以上計画を歪ませるというのなら私は計画責任者としての立場を辞任し……











まだ間に合う、と直感は告げていた


「…………」


数冊の報告書と送られなかった手紙を元に戻し、それから基地内の地図を見る


ここから真下へ8階、そこに獲物があるはず


ウージーを持ち直して部屋を出、さっき蜂の巣にした警備員をまたぐ。サプレッサーの耐久性を考えると、射殺できるのはあと5人か6人。できれば見つからずに8階下まで降りたかった


手っ取り早いのはエレベーターだが、咄嗟の自体に対応できない。そう考えると階段、もしくは他の何か


絵に書いたような緊急通路があるはずもなく、階段方向へ歩いていく



クランフォールが攻め込んでいる事もあってかほとんどの人間が出払っていて、階段は無人、特に問題無く目的階に到達した



まっすぐな通路が1本。その先に扉がひとつあり、SMG装備の兵士が2人


どうにかしないと近付ける筈も無く


装備はウージー2丁とMk23拳銃。この位置から狙撃するのは厳しいものがある



少し考えて、Mk23の11.42mm弾を取り出し、投げた


カツン、と音が鳴る



「ん…?」



物陰の侵入者には気付かずとも今のは気付いたようだ、2人で目配せし、片方が歩き出した


ナイフをホルダーから取り出しつつ、もう一度音を出して残り1人の死角へ誘導


「……弾丸…?」




音の元凶を拾い上げようとした瞬間、後ろから首を掻き斬って、それから心臓



びちゃり、と血が飛び散る



「おいどうした、金目の物でも拾ったのか?」


後の話は簡単だ


ウージーの銃口を残りへ向けた


















「やっと着いたか」


スーパーロデオガール操縦のストライカーから降り、パラナ中心部を見据える。断続的な銃声が聞こえ、上空をFー16Cが飛び交っている。制空権は完全にクランフォールが握っているらしく、先程のイーグル小隊が暇そうに旋回していた。航空隊に展開される前に飛行場を絨毯爆撃したらしく、郊外の一角が大炎上中、煙がすごい


「じゃあ俺は狙撃に回る、後よろしくな」


ストライカーから降りずレオンが言う。持っているのはPSGー1対人狙撃銃で、弾倉を装着しつつスコープを調整中


「進攻ルートはわかるな?6時撤収だから時計はこまめに見ろ、もしかしなくとも延長されるだろうが」


「独断撤退はアリ?」


「基本的にはナシだが最終判断は各個人に任されてるぞおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」



そのままロデオストライカーで去っていった



「行くわよ」


「え、あ、おう」


残ったのは明、ユリアナ、マリアンの3人。小銃2人に分隊支援火器1人、どこにでもいるごく普通の編成である、女性2人な点を除けば


「後方、異常無し」


「はい前進、急ぐわよ」


急ぐといっても、全方位警戒態勢じりじり前進内での急ぐ基準だったが


慣れていない明を他2人がカバーしつつ市街地を進んでいく。住民は避難したのか人気が無く、所々の家の窓が割れていた、火事場泥棒でも入ったんだろう


「誰もいないわね、まだ気付いてないのかしら」


「捕捉はされているだろう、こっちに回す余裕が無いか、待ち伏せか」


ガチリとMG4が脇道の先を睨みつける、敵影無し


「分隊規模で散開しているから対応に手間取っているだけかもしれんが、なんにせよ敵の残戦力は少ない、恐らく日中には篭城を決め込む」


「また伏兵でも出てこなければいいけどね」



人の隠れられそうな所をくまなく探していくが当たりは無く


しばらくすると無線が入った


『あー、あー、こちら狙撃チーム、エレナです』


「はいこちら明」


『立体駐車場屋上からサーモグラフィーで索敵していますが、ここ近辺に熱源はありません、進んで頂いて結構です』



上方向を見回してみると、一際大きい建造物の上にストライカー装甲車、目立っていた


大丈夫なんだろうかあれは、ストライカーの防御力は口径14mmが限界で、ロケット弾でもぶち込まれたら瞬時に爆散するのだが


「だそうだがどうする?」


「…信頼性は?」


『70から80%』


微妙な数字である、賭けてもいいが、担保は命だ。できれば90は超えて欲しい


「いいわ、行きましょう。どっちにしろやる事は同じだし」


SCARを右肩で構えたまま、ユリアナが走り出す、すぐにマリアンも続き、少し遅れて明


『動きに合わせてこちらも移動しますが、銃の射程には限界がありますので、緊急時にはジャベリンで援護します、留意してください』



あのエイブラムスを1発で吹っ飛ばせる対戦車ミサイルで歩兵を援護するというのか、下手しなくともフレンドリーファイアだろ


まぁむざむざ殺されるよりはマシだと思うが


「近いわよ、準備は?」


「オーケーだ」



とにかく、今は前方に集中しよう




















----------

-------

---



カツン、と、空薬莢が床に落ちた


既にサプレッサーは役立たずとなったため捨て、両手には加熱されたウージーが1丁ずつ。総数で20人ほど殺したろうか


他に敵影は無し、警備に当たっていた連中はすべて急所を貫かれ、薬莢に紛れて転がっていた


「……」



目的の物は無かった


研究開発室らしき部屋の奥には長大な通路のようなもの、恐らく実験射撃場だろう。砲台を据え付けるための場所には何も無く、コンピュータ類も軒並みシャットダウンされている。プリンターを見ると、出力された実験結果が放置されていて、慌てて撤収した様子が見て取れた


大体30分から1時間前。ギリギリで逃げられたか


ともかく目標は失われた、残った情報を入手しようと1台のパソコンを起動させ


「動くな」


拳銃を突き付けられた



「っ…」


人数は1人、白衣を着た男で、50歳から55歳。トカレフを両手で構え、こちらに照準を合わせている


「クラン軍か…?とてもそうには見えないが…」


素人が自衛用だからと押し付けられたような構え方だった。最後のデータ抹消を任され、撤収後も残っていたらしい


胸の名札は男がここの所長だと証明していた。警備員が全滅したのにたいした度胸だ


「答えろ、何をしに現れた」


「……あなたの研究成果を破壊しに」



一瞬、照準がぶれた



その一瞬で体を反転させ、といっても最初から撃つ気は無さそうだったが、ウージーを突き付け返す。弾はまだ10発ほど残っていたはず


所長は大きく怯んだものの、トカレフは構えたまま


「レールガンはどこに?」


「……答える義理は無い…」



やはり度胸がある、死体の散乱するこの状況で拒否するとは。まぁ、こちらとしても撃つ気は無い訳だが


彼は別に殺し合いするためにここにいる訳では無いのだ


「失礼ながら机を漁らせて頂きました、この計画に不満があるのでは?」


「……そうだな、もはやあれは私の望んでいたものとは程遠い」


共に凶器を向けたまま


「だがそれでも、この国には必要なものだ」


「……そう…」




カランと、スモークグレネードが転がった




「なっ…!?」


破裂した缶から大量の煙が噴き出し、完全に視界が失われる


持続時間は約1分、その間煙は滞空し続け、霧散後には所長は気絶して倒れていた



「さて…」


パソコンには初期設定の入力を求める表示、これも手遅れだったか


少し考え、PCケースを開けてハードディスクを取り出した。初期化した後でもデータを復元できる場合がある


保存と消去なんてものは対応するビットを書き換えているだけなのだ、0と1をいじくってやればすぐ復活してしまう



その作業が終わったあたりで階段を駆け降りる足音が聞こえ、それからエレベーターも到着


「強行突破になりますか…」


あたりを見回して、緑色のアーモ缶を見つける。9mmパラベラム弾が詰まっていた


使い切ったウージーの弾倉にそれを流し入れ、装着。重量的に余裕があったので取っ手部分に適当な紐を通し、アーモ缶ごと肩に引っ掛ける



「まぁ、嫌いじゃねーですけど」



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