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666 3



















寝て起きて外に出たら、ストライカー兵員輸送車が用意されていた


要員2名、完全装備の兵士9人を運ぶことが可能であり、12.7mm機銃1挺を装備する。105mm砲装備の戦闘型も存在するが、目の前にあるのは通常型


最大速度100km/h、500kmを走破できる最新鋭8輪装甲車だ


「……」


「…………」


それはいい、傭兵に割り当てられる兵器にしては高性能すぎる気もするが、きっとレオンが頑張ってくれたんだろう


問題は運転手だ、身長150cm付近の少女がタイヤの空気圧をチェックしていた


栗色の髪が膝下まで伸びている、長い、身長と不釣り合いだ。というか、服装、装備、車両すべてが似合っていない


あえて例えるならば、特殊プレイ中の援交学生


「エレナと言います」


「お…ああ、明だ」


普通に敬礼してきた


「攻略本隊からこちらに回されて来ました、本日付けで第666分隊配属となります。それで突然ですが、サイドウォール部に多数のクラックが入ってしまい交換したいのですが、予備タイヤはどこで保管していますか?」


「え……ごめん、わからないからあそこの人に聞いてくれ」


少し遠くで偉そうな制服男と話しているレオンを指差す。忙しそうだが、タイヤ置き場くらいなら教えてくれると思う


「了解です、失礼します」


再度敬礼、それから指差した方向へ駆けていった


ちゃんとレオンの所まで辿り着けたのを確認してからしゃがみ込み、ストライカーのタイヤを凝視する


しばしじっと観察していたら左側4列目のタイヤに無数の亀裂が走っているのを発見した。なるほど、サイドウォールとはそのまま"横壁"という意味で、この亀裂の事をクラックと呼ぶんだろう



「何やってるの?」


「いや別に」


ユリアナが来たので立ち上がる。昨日と同じくSCAR-Hを肩から提げ、腰にLAW2本。その後ろではマリアンがMG4を担いで立っていた


「なかなかいい車貰ってきたじゃない、運転手は?」


「運転手は……あれ」


栗色のロングヘアーを捜して指差す。エレナと名乗った少女は物資集積所からタイヤを掘り出そうとしていた


「…どれ?」


「あのタイヤ持って一息ついてる奴」


「……どれ?」


「あのすごい勢いでタイヤ転がしてる奴」



例によってタイヤも似合わなかったが、手慣れている。人にもぶつからず進路を制御してこちらへ疾走中。ちょこまかしている姿は小動物のようだ



「え……あれ?」


「たぶんそれ」


運転手を発見してしまったユリアナは名状しがたき物を見たような顔をしている、残念なことにそれが正しい反応である


そうこうしている間にエレナがストライカーまで到達、スパナで左側4列目を外し始めた


「うわマジだ……」


僅か30秒足らずでナットを外し終え、古いタイヤが脱落。次いで新品を装着


「う……」


できなかった


悪路も難無く走破する軍用タイヤはでかくて重く、女性の細腕で持ち上げるのは無理があったらしい。手をこまねいている


手伝った方がいいかもしれない


「ほら、貸してみ」


「あ…すみません……」


位置を変わってタイヤを持つ


素晴らしく重い、男の明でも上がるかどうか


「ふん…!!」


目一杯力を入れると5センチ浮き上がり、力尽きる前にエレナが軸へ誘導して差し込む。動かなくなった


「ありがとうございました、普段は機材を使うんですが」


「ああ…だよねぇ…」


一瞬持ち上げただけなのに手の感覚が無い


ナットを戻して締め直し交換完了。古いタイヤは捨てず、なぜかロープをかける


「もうひと仕事お願いできますか?」


「え?」


「予備タイヤとして積載したいのでこれを上まで」


「……」












「何をそんなに疲れてるんだよ」


「ちょっとタイヤが…」


気付けば出撃10分前、ストライカーはエンジン始動してアイドリング中。後は乗るだけである



「偵察結果は?」


「敵主力は本隊方向に陣形敷いてる、そのまま近付かせてくれるといいがな」


「じゃあ動かれる前に行っちゃいましょう」


「まぁあと10分待て、遠足とは違うんだからよ」



融通の効かない…、と言いながらユリアナが乗り込む。さっきからガコガコとスティンガーミサイルを積んでいたマリアンも内部に消え、残るは明とレオン


「……何かおかしいと思ったんだ」


「何が?」


「乗ればわかるさ」


言って、車体を上っていく


「?」


よくわからなかったが予測しようもなく、とにかく乗り込もうとレオンの後を追う。車内はやたら広く、寝泊まりしても大丈夫そうだ


「正規軍部隊に合流します」


「おー、おうっ!?」



ぐいん!と急加速した


一気に40km/hほど出ただろうか、そのまま"8輪車で"ドリフトを決め、トラックの群れへ突っ込んでいく


「ぎゃっ!!」


遠心力で体が吹っ飛んだ


壁に激突するかと思い身を縮めたが、体に激痛が走る事は無く


ぶつかったのはレオンの体


「おっと、大丈夫かい?」


「ぎゃあああああ!!」


「何だその絶叫は」



ストライカーは暴走していく


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