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OP.SonicArrow 5





















『問題が発生した』


「見りゃわかる」


帯状に建物が崩壊していく様は壮観だった。現在は檻の外側から内側に向けて自走砲とMLRSがありったけの弾をぶちまけて、孤立した部隊を援護しようともがいている


こういう時便りになるのはやはり航空爆撃だが、ストライクイーグルは既に爆弾落とし終わって帰宅していた、戦域上空にいるのは対地装備を持たない戦闘機2機とロケット弾装備のヘリ2機のみなので、どう頑張ったって全部隊を支援できるはずがない


「で、どうすんの?」


燃料はまだある、戦闘用を残しても1時間はここに留まれるが、F−15CとF−22Aに対地能力は無い、無理すればバルカンで攻撃可能ではあるが


『孤立した部隊をそれぞれ目視で確認してくれ、無線が錯綜して正しい脅威レベルを出せない』


つまり、一番危険な所を探して、ヘリを向かわせろという意味


偵察機の1機でも飛ばしておけばよかったものを


「…アストラエアからスキュラ隊、残弾はどれだけある?」


『まだまだありますぜ軍曹!』


「……軍曹じゃねえし…」


なんというか、気の抜けるパイロットである


「…ネメシス、上空警戒してくれ、俺は下に行く」


『騎(^q^)位?』


「…………」



本当に気の抜ける



「この状況…どうにかなんねえ…?」


『確かにイロモノ集団になってきたような気もするが、実力はあるんだ』


GPSマップを確認して最も突出している部隊を探し出す、見つけたらそこへ向かい、状況を目視する


74式戦車と、RWS非搭載のストライカーICVの2両編成で、目下敵1個小隊と交戦中。機関銃兵1人の制圧射撃で正面を押さえ付け、ストライカー搭乗の狙撃兵がめぼしい敵を潰し、その間に74式戦車が突撃、隠れていた連中を遮蔽物ごと吹っ飛ばす。合わせて10人程度の傭兵部隊はどこのレンジャーかという速度で敵を駆逐し、息付く間もなくアクセルを踏み倒した


「おい!!とんでもない勢いで突撃してんのがいるぞ!!やめさせろ!!」


『指揮系統が違うから時間がかかるぞ』


さすが寄せ集め


もう一度GPSを見て他に危なっかしいのがいないのを確認、傭兵部隊の前を飛んで偵察すると、重武装の敵兵が数十人、影に隠れて待機中


「仕方ない、ティア、行け」


『アイサー!!』


スキュラ隊1番機、ティアに指示を送って攻撃させる。ヘリとしては常軌を逸した機動性を持つAH−64Dアパッチロングボウが墜落みたいな動き方で降下、部隊の真上に陣取る


「おいおい、射手気絶してないだろうな」


『え?射手?…あー…大丈夫、なんじゃない?』


マガリといったか、スキュラ隊隊長に話し掛ける。例のふざけた女だ、相方は相当苦労してるに違いない


無口な奴なのか、無線から聞こえてくるのはマガリの声のみ。2人乗りであるアパッチでは少しばかり有り得ない状況である、もしくはマジで気絶したか


「声聞かせろよ、わりかし心配だ」


『あー、それは無理っす』


「何故」





聞いた所でレーダーが敵接近を知らせてきた




『来たぞ、方位80から82、機数は2。恐らくこの前のフランカーF1だ』


「便乗してきやがったか?足元見られてんな」


『距離130マイル、アムラームの発射体勢に…くそ!!先に撃たれた!!全機ブレイク!!』


操縦桿を思い切り右下に押し倒す


バレルロール気味に右急旋回して回避に入り、援護位置にいたネメシスは左側へ同じ事をやった。アラートは鳴っていないが、しばらくしてからスキュラ隊がチャフぶちまけながらビルの隙間に逃げ込んでいった


『貴重な対地攻撃力を失わせるな、アトリア隊、制空権を死守しろ』


「アトリア1了解」


『アトリア2、了解』


AIM−120アムラームを選択、アフターバーナーを使って射撃位置まで急行する。ネメシスはといえば機首を上に向けて全力で駆け上がっていた、なるほどいつもああやってたのかと、レーダーに映ってから初めて気付いた


『こちらティア、スティンガー2発だけだけど持ってるから、こっち来れば撃つよ』


「いいからお前はそこらの敵を一掃しろ」


『ういお』



さて、前回戦ってわかっているのはF−15Cの格闘能力ではSu−35には勝てないという事だ、接近されないよう立ち回らなければならない


ネメシスを前に、とも思ったが、邪魔しない方がいい気もする、放っておけば確実に1機は落とすだろうし


「……奴ら以外の反応は?」


『無い』


なら全弾撃ち切っても大丈夫か、あと1時間すれば交代役が来るし


「結局は数だ、性能がなんだっつーの」


『言ってて悲しくならないか?』


「……今言うな、それは今言うな、後でちゃんと自己嫌悪するから」

























「今度は何ぃぃ!!!!」


ものすごい風圧で後ろに押し戻される。明&ネアとの合流予測地点まで200メートルを切った所でヘリのエンジン音が降ってきて、現在、側転しながら現れたアパッチがストライカーの前方に陣取っていた。高度1メートル以下、もういっそ着陸しろと言いたくなる


車内でレオンが何か叫んでいるが何も聞こえない、少しして無線機を投げてよこした


その間にアパッチは10メートルほど上昇し、74式を乗り越えて前進、部隊より先行する形を取る。離れた事で爆音が幾分か和らぐ


『こちらスキュラ隊ティア、今からそっち援護するから部隊ナンバー教えてー』


女性の声だ


が、ユリアナだって女である、言うほど驚きはしない。しかし非常識ではあると思う


「えー…第666分隊、コールサインはダガー2。目の前のアパッチでいいの?」


『そーだよー』


30mmチェインガンを掃射し始めた


『で、何したいの?』


「迷子が2人、もう少しだけ前進できれば合流可能なんだけど」


『オーケーわかった、とりあえず正面は押さえ付けるから、対戦車兵優先に片付けてって』


正規軍にしてはやけに聞き分けがいい、傭兵とは基本的に使い捨てであるはずなのだが、まぁどこぞの米軍のノリだろう。道路上にいる敵兵をロケット弾で吹っ飛ばしていく


「狙撃用意!!」


無線機を胸に装着しつつ命令を下し、自らは74式の前に出る。そこで制圧射撃を担当していたマリアンと合流しつつアパッチを追い掛け


「目標!!対戦車兵!!片端から!!」


言った途端にMG4の咆哮、掃射された飲食店の窓ガラスが弾け飛び、店内を真っ赤に染め上げた


目的地まであと100メートル、そろそろ連中が見えてきてくれないとまずい事になる、ここまでゴリ押ししてきたのだ、もうすぐ弾が無くなってしまう


『ああ見えた、なんか派手なオレンジの女の子だけど間違いない?』


「それ以外ありえない!!」


やはりあの人間離れした髪色は目立つようだ、ステルスには絶対向かないがこういう時便利である


ホロサイト付きのSCAR−Hをアパッチと同じ方向に向ける、ビル影やら何やらに隠れている連中のうちRPGを持っているのを探し出し照準、トリガーを引いた


この試作型アサルトライフルが撃ち出す弾はマリアンや明、ひいては軍全体が標準装備している5.56mm弾と違い7.62mm弾を使用、その分威力が上がっているが反動も大きく、フォアグリップを付けていないとフルオートで撃つのは難しい。そうするとグレネードランチャーを装備できないが、そもそも装備する気が無いので問題無い


「まずいぞ!!こいつら集まって来てる!!」


「1分だけでいいから押さえ付けて!!」


指揮系統が潰れたからか、騒ぎに集まる野次馬の如く敵が集結していた、4個小隊はいるだろう、このままだと包囲される


「先に退路を確保する!!道開けてくれ!!」


ギャリギャリギャリ!!と急速反転した74式がストライカーの脇を通って後方へ。前方ではアパッチのチェインガン乱射が大部分の敵を吹っ飛ばし、RPGを撃とうとしているのはレオンが狙撃、それ以外はユリアナとマリアンがしらみ潰しにしていく。だが、倒しても倒しても湧いてきていた


「来た来た来た!!」


アパッチの下をくぐり抜けて迷子2人が登場、少なくともネアは弾切れのようだ、明を後方援護に置きながら全力疾走している


「お待たせしました!!」


ストライカーまで辿り着くなりネアはウージーとベネリM4を車内に投げ捨て、奥からミニミ機関銃を引っ張り出す。使用目的はマリアンのMG4とまったく同じ、外見もそっくりである。細かい特徴を挙げるならばMG4は高い連射速度を持つ火力特化型だが、ミニミは部隊支援を最優先に各性能をバランス良くまとめており、M16用弾倉を使って射撃することも可能、利便性を追求した仕様となっている


「いやすげぇぞあの子、1人で1小隊潰しやがった」


「いいから早く乗れ!!!!」


「おうおうおう!!」


ネアの援護射撃を受けながら明をストライカーに押し込み、マリアンにも戻ってくるよう指示、撤退行動に移る


「こちらダガー2!!これから撤退するわ!!焼き払って!!」


『オーケー、後ろは任せな!!』



74式が砲弾をぶち込み、同時に全速力で撤退を開始。包囲を突破するべく残った火力をすべて前方に集中する。背後では断続的にロケット特有の飛翔音が起こり、途端に追撃がぱたりと止んだ


「今本隊の一部がこっち側への侵入に成功した!!敵の指揮も破壊したみたいだし、逃げ切れればそのまま行けるぞ!!」


「それ以外には!?」


「無指揮になった連中が全部ここに殺到してる!!」


言いながらPSG−1を捨ててM2を撃ち始めるレオン。ネアとマリアンのマシンガン2丁に加わって低音のリズムを響かせ始めた。ユリアナは全速走行するストライカーの助手席まで移動し前方の様子を確認する


『ッ…!!まずいぞ!!前方400メートル!!戦車が出て…………』




無線機からそんな声が聞こえた直後、先行する74式の砲塔が吹き飛んだ




「停まりますか!?」


「もう生きてない!!とりあえず忘れて!!」


スクラップと化した74式を掠めて右の脇道へ。瞬間的に見えたのはエクストロキアのT−72だった、まさかそんなものがあろうとは


場所は幹線道路のど真ん中、良い位置を取ったものだ、最短ルートを潰されている。こちらの戦車は無くなったし、避けて回り道する余裕は無い


『お困りかい?』


いや、そうだ


所詮は車両、ヘリに勝てるものなんかじゃない


「タンゴ、ヤンキー、エックスレイ、ホテル!!航空支援を要請!!」


アパッチに座標を伝えて、エレナには幹線道路に戻るよう指示


『巻き込まれないようにね!』



脇道から飛び出した瞬間、空から降ってきた槍がT−72を串刺しにした


爆炎、轟音、車体を大きく揺らしながらも反対側へ



「……包囲突破に成功」


マリアンが上部ハッチから降りてくる


「とりあえず本隊の後ろまで行こう、もう弾が無いし、再編成する必要もある」


「はぁ……そうね、補給終わる頃には片付いてて欲しいけど……あ……」


「どうした?」




「気持ち悪くなってきた……」

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