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OP.SonicArrow





















気付いたら朝になっていた


「…………」


ベッドに潜り込んだ覚えは無いのだが、寝かしつけられたのかもしれない、明はそう思いながら掛け布団から抜け出す。もう片方のベッドは何か人型の盛り上がりができていたが、頭まで毛布被っているため詳細わからず


その後時計を確認してまだ早朝である事を知る。朝食までは1時間と少しで、二度寝する空き時間ではないし、かといってやる事も無い、世間一般に言う『早く起きすぎた状態』である


とりあえず換気をしよう、そう思ってベランダへの窓を開ける。部屋のサイズに見合った申し訳程度のベランダに出て外の様子を確認、正規軍は完全に起床しているようで、出発に備えて戦車を並べている。昨日と比べると数は激減していたが、それでもなんとか戦闘できるレベルまでは回復させていた


今日はまた別の都市に乗り込んで占領すると聞いたが、現状戦力では苦戦する可能性も


「や」


「ん?」


隣部屋からユリアナが出てきた


「よく眠れた?」


「数時間だけな」


「そ、私は子供エレナの寝かしつけが大変だった」


「なぜ?」


「知らないわよ、ベッド2つしか無いから一緒に寝ようって言ったらいきなり泣き出すんだもの。たぶん家庭事情どーたらこーたらの延長だろうけど」


やっぱ訳ありか


若者の傭兵なんてみんな訳ありとこの前言っていたが、どうも例に漏れないようだ。家の事で何かトラウマがあるようだが、今のところ話してくれないのでどうしようもない


「じゃ、お前は?」


「え?」


「なんかあるんだろ?」


「あーいいのよ私はどうでもいい事だし」



どうでもいいとか言われるのが余計気になって最悪なパターンでだな



「18年も孤児院にいるとカウンセラーになれるのね」


「まぁな、15超えたあたりから便利屋としか見られなくなるんだぞ」


「はは」


爽やかに笑う


それから一旦視線を戦車に移し、車両の数を確認。見るからに目減りしているのを一通り眺めてから溜息をつき、手摺りに肘を乗せ頬杖をついた


編成されてから1日たたずに壊滅させられては溜息もつきたくなるが、一番の不満は補充数にあるらしい、「少な……」と呟いて更に溜息


「あんなんで敵中枢まで突破しろっての?」


「無理か?」


「無理ってこたないけど…歩兵もある程度は対物戦闘しないと勝てないわよ」


人対戦車が生まれるという事か


「今日から攻めに行くのはもう撃破済みだから問題無いけど、その次までにはもっと増やさないと」



手摺りから離れた


最後にもう一度車両を眺め、ユリアナは室内へと戻る



「じゃ、また後で」


窓を閉じた




「…………さて」


換気は終わった、後は出ていく準備をするだけだ


残り時間45分


そして女性の寝起きは時間を食う、起こすなら早い方がいい



人間1人分の膨らみがあるベッドを見る



「おーい」


無反応


「朝だぞー」


揺すってみる。人間の感触がしたためいるには違いないがやはり無反応、健やかに惰眠を貪っていらっしゃる


とにかく布団を取っ払ってしまおうと端に手をかけ、ゆっくりめくっていく、黒髪が現れた


小さく丸まって眠るマリアンさんは歳相応の表情で睡眠を取っておられ、いつもの威圧感はどこかへ消え去っていらっしゃる。広いとは言えないが窮屈を感じるほどでもないベッドを半分以上余らせている様は、まるで何かから身を守るような



「…………はっ…」


じっくり観察している場合ではない、起こさなくては


肩を掴んで強く揺する


「ん……」


薄く目を開いた


「もう起きとけ、寝坊するぞ」


「…………」


カタツムリもびっくりの鈍重さで顔を上に向け、そこにいた明を視認。そしてVISTAも真っ青の処理速度でそれが誰であるか解析する


「…………」


「……………?」



沈黙した



「どうした?つーか見えてるか?」


「…………だ…大丈夫だ…問題無い……」


わたわたと起き出す。何を焦っているのか急いでベッド端まで移動し部屋備え付けのサンダルに足を通した、そこまではよかったものの立ち上がる際に手をベッドにかけ損ね、マリアンが視界から消えていく


「そんな転落で大丈夫か?」


「……一番いいのを頼む…」



手を差し出す



「いつも通りじゃないな」


「別に……」


手を引っ張って立ち上がらせ、尻の埃を落とすのを待つ。その際髪に埃がついてるのを見つけた、相手は孤児院の幼児ではないが、ほっとくのもどうかと思ったため長髪をすいて落とす


「……狙ってるのか?」


「何を?」


「いや……」


異物を除き終え、長髪に漆黒が戻った


終わると同時にマリアンは明をチラ見し、部屋の出口へと歩いていく。朝食まであと30分、間に合えばいいが



去り際



「…………孤児孤児言ってればなんでも許されると思うなよ」


「は?」







































「いやー、案外来ないもんですねー」


「2日3日で来る訳ねえだろアホ」


アルズの頭を小突く


今日は作戦決行日であり、数時間後には空の人となる。しかしイーグルの代わりが到着しなかったため、F−22Aと肩組んで出撃することが確定した


そして現在、補充されたパイロットの出迎えをするため管制塔入口で待機中


「いきなりで大丈夫なんですか?」


「確かに連携はできねーだろうが、まぁどうにでもなるだろ」


近くの飛行場には大した戦闘機が無いようだし、連携できずとも性能だけは化け物じみているのだ、最悪ちょこまかしているだけで後は勝手に撃墜してくれる


どのみち10連敗した時点で心は折れているし


「それで、機種は何になったんだ?」


「F−15のF型、最新型ですよ」


「…あっそ」



F−15FはE型の発展型で、対地攻撃力増強のために複座としたものを再び単座に戻したものだ。1人乗りなので忙しい事になるが、頑張ればE型と同等以上の能力が得られる


しかしそうなるとC型との能力差が生まれてしまう訳で


「ほら来ましたよ」


「む」


ガタイのいい男が4人向かってきた。何と言うかまず第一にでかい、ソリッドやアルズは普通に職業パイロットといったら嘘だと思われるかよくて民間航空機だ、しかし連中は何も言わずとも軍人とわかりそうだ


「いやー、やっぱ裏口入隊とは違いますねぇ」


「裏口じゃねえよ限りなく裏に近い正面口だっつってんだろ」


「それどんな正面口ですか」



人数4人、間もなく管制塔に到着して、立ち止まり敬礼してきた


敬礼し返しつつ肩の階級賞を確認、同じだ、敬語使う必要無し


「キルケ隊だ、よろしくな」


「ああ、こちらこそ」


握手を求められたので差し出されたのを握る。手もでかい、地上では喧嘩しないほうが良さそうだ


「噂は聞いてるぞ、若いのに頑張ってるな」


「いやまだまだだ特に2番機が」


「はは、まぁ頑張りすぎてスコア全部持ってかないでくれよ」



今話していたのが中に入っていく


「復帰するまで任せとけ」


次いでチャラそうな金髪、その相方らしいスキンヘッド、集団から1歩離れて真面目そうな超長身


「任せとけー」


最後に身長150cm以下の少女


「こら」


「あぅ」


中に入ろうとしたアリソンをひっ捕まえる


「何やってんだお前は」


「ヤマザキ春のパン祭り」


「何言ってんだお前」


どうせ機体の出撃前チェックしてたら目新しい機体が降りてきたから気になってそのままついて来たんだろう。あのラプターはクラン軍籍だが、なにぶん1機しかないので整備面に不安があり、飛ぶ直前にはパイロット自らが整備に参加している。コクピットに陣取って下々に指示を出すだけだが


あと個人的には、『コクピットが狭すぎて効率よくチェックできない』というのもあると思う


「ま、とりあえずそこで待っとけ」


「ん」


頷いて、ソリッドの横に落ち着く。少しして暇になってきたらしく腕組んできたり腰に巻き付いてきたりしたのでそれをはね退けつつもう1部隊の到着を待つ


「とぁっ」


今度は背中に飛びついてきた


「……何なんお前」


「どうだむすこがたつたろう」


「俺の息子そんな安っぽくねーから」



誰かこいつどうにかしてくれ


そしてできれば隣で羨ましそうに見つめてきてるバカもどうにかしてくれ



「来ましたよ2つめ」


またガタイのいい兄ちゃんが2人来た


階級章確認、格下だ


「本日付けで赴任してきましたスキュラ隊です、よろしくお願いしま…っ…します……」


階級差があるので敬語、途中で背中のアリソンに気付いてどもってた。普通こんなもん見たら声出して驚くと思うが、なかなか優秀のようだ


つか恥ずかしい


「……行ってよし」


「あ、はい」


それ以外何も言わなかったので少々戸惑っていた。ジェスチャーではよ行けと伝えて無理矢理ドアをくぐらせ


「よ、よろしくお願いします」


2人目のイケメンも押し込む


「よろしゃーす!!」



女の子がそれについていった



「待て待て待て待てお前は待て!!」


「おうおうおうおう!?」


「そのネタはさっき見たから!!天丼とかいらねえから!!つかお前誰!?」


「いやいや今の流れ!!アイアムパイロット!!」


「いやいやいやいや!!」


「いやいやいやいやいやいや!!」


「いいから名を名乗れ!!!!」


「サー!!本日赴任のマガリ・M・ダグラス中尉であります!!」



以上、首ねっこ掴んでからのソリッドとの会話



「…………すまん何だって?」


「マガリちゃんでーす!」


脳天に手刀を下ろす


「その後ろだ」


「……中尉…?」


中尉、少尉と大尉の間、空軍では主に分隊の隊長等を務める。アトリア隊を例にすると、隊長であるソリッドが中尉、ウイングマンのアルズが少尉。アリソンは正規軍ではないため明確な階級が不明だが、本人日くそこまで高い地位は貰っていないという


まぁつまりはそういう訳で


「おかしい…この軍何かがおかしい……」


「落ち着いてください隊長、俺らもおかしい部類です」


あらためてその女を見る。アリソンほど小さくないもののまだ十分に小さい、年齢はいってても20あたりで、観察中せわしなく手をぱたぱたさせていた


一言で表すならば『動』だ、テンション高すぎる


「君も中尉だよね」


「あ…あぁ……」


「若いのにすごいねー」


「だからさっきから騒いでる理由はだな…」


「あー!!何そのかわいいの!!あたしにもおんぶさしてー!!」


「…………」



もうなんだっていいや

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