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crawling chaos 5





















まず陣形を確認する


自分らがいる塹壕が敵の真正面に位置し、ぽつぽつとある岩や装甲車に隠れて塹壕の援護位置に付いている。少なすぎる遮蔽物で整えた防御陣形にしてはよくできていたが、とても十分とは言い難い


対する敵軍は歩兵戦闘車の後ろに隠れながら縦長に固まり、最大速力で突っ込んできていた。既に距離300メートルまで詰まりなおも接近中


前方で行われている戦車戦だが、MLRSの一斉発射がロケット弾のスコールを降らせ、T−80ともどもほとんどがスクラップと化している。未だに取っ組み合っているのはエイブラムスと、各PMCの主力戦車のメルカバMk4と10式のみで、それ以外のやや旧式な戦車はこちらへと向かっていた


恐らく的の戦法としては、『すれ違い様に叩き込むだけ叩き込んでそのままトンズラかませ』だろう、そのまま乱戦などという削り合いに発展する訳が無い


「こっちくんなこっちくんなこっちくんなぁぁぁぁッ!!!!」


ユリアナの照準によりMk19から40mm擲弾が毎分40発で飛び出し、敵陣にボコボコ穴を開けていく。弾が120発しかないのでこのままだと3分しかもたないが、敵との距離はあと200メートル、3分でも十分だった


「防御砲火だ、とりあえず撃っとけ」


「了解」


この際大事なのはとにかく派手に撃ちまくる事である。これは相手をビビらせる事に意義がある


SG552の透明な弾倉がしっかり装着されている事を確認し安全装置を解除、最初の1発を薬室に送るべくレバーを引っ張って装填する


サブマシンガンに特性の似ているSG552だが、遠距離でも申し分ない性能を発揮してくれる。ただ装備されているのがダットサイトという近距離用照準器なので、そっち方向にばらまく以外に意味を成さない


後方にいるストライカーのM2も合わせ弾幕形成、M82の狙撃にレオンも加わって撃ちまくっているが、派手なものに囲まれているためどうしても地味に見えてしまう


そもそも狙撃銃はこんな派手な戦闘に使うものではなく、少人数部隊の支援や要人暗殺に用いられるべきものだ。ジャベリンを撃ち切ってしまったためそうするしか無い訳だが


ちなみに観測手はエレナ。車内から無線で情報を送っている


「重ってぇなぁ……」


残り100メートル、PSG−1を捨ててスコーピオンに持ち変える


今の武装にあまり気に入っていないらしい


「それ自分で選んだんじゃねーの?」


「まぁ私財で買った私物だが、カタログスペックで選んじまった点はあるよな」


迫力だけならPSG−1はM82に匹敵している。名前を和訳すると『1号精密狙撃銃』となる通り、セミオート機構を維持しつつ命中率を追求した銃なので、重量が増加するのは仕方ない。重ければ重いだけ反動を吸収してくれる


「SSM接近!!」


ネアが叫んで、ストライカーからチャフが発射される。同時に急発進をかけて突っ込んできたミサイルを回避、弾頭は草原に突っ込んだ


「ッ…!!」


巻き上がった土に襲われ一時的に射撃停止


最初に復帰したのはユリアナ、次いでネア。その頃には敵陣の先頭が塹壕中心部に突き刺さり、土嚢と人が蹴散らされていく


「ていうか……まずいんじゃないのかこれは…」


「な…何が……」


「そろそろ巡航ミサイルが到着しちまう」



聞いて、ネアがスコープをあさっての方向に向ける


「どっちですか」


「方位325」


大まかに言うと北西だ


Mk19とM2の大火力で装甲車を追い払っている間に狙撃銃2丁で捜索が行われ、明は生身の人間を探して照準を合わせる


すぐに重機関銃を乱射する敵兵を発見。距離50メートルほどあって詳細がわからないが、ダットサイトの点と合わせて引き金を引く。5.56mm弾が数発飛び出し、目標の射手は車両から転落した


やっぱ死んだんだろうか、あれは


「見つかったか?」


捜索を始めてから十数秒


ネアが顔を上げ


「死の鳥が見えた」



ユリアナがMk19を担ぎ上げた



「総員退避ーーーーッ!!!!」


分隊全員と、近くで話を聞いていた兵士数人が一斉に塹壕から脱出する


僅かな差で全体に指示が飛んだらしく、ストライカーに駆け込む頃には連隊全体が退避を開始


「つかまって!!」


いつにも増した急加速でドリフトを決め後方にぶっ飛んでいく。巡航ミサイル到着前に可能な限り遠ざからなければならない


種類は恐らくAGM−129、B−52から発射されたものだ。アルメリアから購入した後に独自の改修を行い、搭載弾頭をクラスター爆弾としている、1基あたり10個ほどの爆弾に化けるだろう


それが15基となると、あたり一帯が耕される訳で


「とにかく撃ちまくれ!!」


上からマリアンに言われたため、開けっぱなしの後部ハッチからSG552を向ける。余ったスペースはユリアナのSCARが占領


かなりでかい発砲音が車内で反響する


「着弾10秒前だ!」



ボゴン!と、ミサイルの直撃を喰らった味方車両がこっちに飛んできた



「ひあぁ!?」


ミニガン装備のハンヴィー、積んでいた弾薬を弾けさせつつストライカーに衝突し、衝撃で左輪浮揚


「あ゛ーーっ!!」


「ぐわああぁぁ!!」


ユリアナに押し潰された




その頭上を飛行機みたいな形状の超長距離対地ミサイルが通り過ぎ


数秒で爆弾が地上に到達




今度は爆風で後部が持ち上がる


「ぬおおお!!!?」


「にゃああああ!?」


絡まりつつネアに衝突、勢いそのままレオンを奥まで叩き付けた



盛大にスリップしつつもなんとか停止まで持ち込む



「アッー……!」


通信機ごと玉突きされたレオンが呻いている


それを尻目にマリアンが銃座から静かに降り、外へ出た


今の爆撃で敵は半壊、生き残った連中も撤退を始めていて、まだ続ける様子は無い


空ではまだ戦闘が続いているが



「だ、大丈夫か!?」


「…俺はもう駄目だ……最後に…聞きたい事が…」


「なんだ!?」


角ばった通信機は痛かったらしい、レオンは本気で死にかけという有様


最後の力を振り絞り、言う


「どうだった…?」


「モチのようだった!!」




すごい勢いで蹴られた
























ぶっちゃけて言うと、F−15でSu−35に勝利できる可能性は雀の涙ほどしか無い、基本的なスペックがまるっきり違うのだ


しかし現状で言えば、それを遥かに上回る性能である最新ステルス機が僚機に、ファルクラムを片付けたラファール、F−16、F−2、クフィルがフリーとなっており、その実10対2で袋叩きしている最中だった


「で、その状況でなんでまだ片付いてないんだろうな」


『気にするな、それは誰にもわからん』


こうなったらもう技術云々の話ではない、取り囲まれ叩き落とされるのみ、の筈なのだが


今まで味方が撃った弾薬はサイドワインダー4発とバルカン数百発、そのすべてが完璧なタイミングで発射されていた


それをあのフランカー、力任せに急旋回してかわしてしまう


『少し計測してみたが加速力がかなりの数値だ、恐らくエンジン換装を施されている』


「シザースから回避機動取ってそのまま垂直上昇しても墜落しないエンジンってどんなだよ」


『さあ?』


片方のフランカーにラファールが食いつき、数秒食らいついてあっけなく引き離される。間髪入れずのF−2による挟み撃ちも軽くいなして上へ昇っていく


上空にいるという事はそれだけ多くのエネルギーを持っているという事である。一気に降下すれば瞬時にスピードへ変換されるし、何より相手より上にいるというのはそれだけで威嚇になる


本来そういうエネルギー戦闘はF−15の領分なのだが


「ま、味方が多いならどうにでもなるわな」


メインに据えるべきはやはりF−22Aだろう。レーダーに映らないというのは圧倒的なアドバンテージになる


「おい、ネメシスに指示出してくれ」


『む?なら回線を中継する、ついでに自己紹介したらどうだ』



何を紹介しろというのか



イーグルの後方を追従するラプターを見る。コクピットには人影が見えていたが、耐Gスーツとヘルメットのためどんな人間かはわからない。ただ体格はかなり小さいようだ


そうこうしていたら、こっちに気付いて手を振ってきた


「…………」


手を頭に添えて


ウッーウッーウマウマ


なんだあいつ


「……あー…、こちらアストラエア、聞こえるか?」


意味不明ながらもとりあえず話し掛けてみる。ちゃんと聞こえたらしく、向こうはコンソールを操作してノイズを排除


『うん、聞こえる』




結果、ロリボイスが帰ってきた




「おい誰が小学校に繋げと言った」


『案ずるな、ちゃんとネメシスに繋がっている』


コンソールを食い入るように見て周波数が間違っていない事を確認、それから視線をラプターに戻す


「……ネメシス、お前いま何やってる?」


『ウマウマ』


戦闘機乗ってる、と答えて欲しかったのだが


「最近のPMCってのはこんなもんなのか?俺がおかしいのか?」


『まぁこっちとしてはお前も若すぎる部類だがな』



それを言われると反論できない


とにかく、戦闘に支障はなさそうなので言いたい事は後で言うことにしよう。目下の問題はフランカーだ



「アトリア1からアトリア2へ、連中の真上に陣取って押さえ付けろ、可能なら落とせ」


『アトリア2、了解』


ラプターが昇っていく。元々レーダーに映っていない事もあってすぐに見失った


これだけで準備は完了


「さあ、モグラ叩きだ」


エンジンパワーを上げつつ旋回し、戦闘機の群れへ突っ込んでいく。丁度クフィルが追い回されている所で、救援がてらフランカーを後ろからロックオンした


距離が遠い事もあって目立った回避行動は取らず、クフィル追跡を継続してミサイル発射、白煙が伸びていく


フレアを撒き散らして回避行動に入り、ミサイルはクフィル側面をすり抜けていった


『フローラ隊はアトリア隊アストラエアの支援。残りは下から突き上げろ』


フランカーは加速力は凄まじいものの、代わりに最高速度が犠牲になっているらしい、比較的簡単に追い付けた。その点に関してはラプターと同じだ、あれはアフターバーナー無しでマッハ1.7出るが、最速でも2.3までしか上がらない


まぁあれは『これ以上は空中分解の危険がある』という理由だが


ロックを継続したままフランカーの後ろを捉え、もう1機のフランカーがイーグルの後ろにつく。そのまた後ろからラファールが追跡し


『よし、やれ!』


下を塞いで、追い込んでやる


今までずっと上に逃げていたため特に疑問も持たなかったのだろう、当たり前の如く上昇を始め、そこにステルス機が隠れているなど露とも思わず編隊を形成




3秒後、組んだばかりの編隊を慌てて解いた




『フォックス2、フォックス2』


サイドワインダーがラプターの弾薬庫ウエポンベイから発射される。イーグルと違って短距離AAMは2発しか積んでいないため、今ので撃ち尽くした事になる


フレアと旋回でそれを回避し、急加速で振り切って撤退に入ろうとする。だが加速力でもラプターは負けていない。どんだけ高性能なら気が済むんだよと思ったが、資料上では『対地攻撃能力を排除して空対空戦闘に特化した』とあった気がする。排除したといっても汎用爆弾とディスペンサー兵器を積めるため、何も積めないイーグルより遥かに高い



『……追い付けない』


バルカン撃ちかけながら言われても



やがて言った通りに引き離され始め、20mm弾数発を当てたあたりで諦めてしまった


『逃げられたか。まぁいい』


「どうする?燃料がそろそろやばい」


『そうだな。増援を送る、お前達は帰投してくれ』



言われて、機首を西へ向ける



今日は1機撃墜。未使用のミサイルが3発あるため、上々の戦果と言えるだろう


さて


帰ったら3機撃墜のエース様に罵声を浴びせてやるとしよう

なーんか、作風がいつも通りになってきちゃったな。

爽やかさ+で行きたい今日この頃。

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