crawling chaos 3
主要戦力内訳
・クランフォール
M1A1エイブラムス
AMX−30
AMX−10RC
M2/M3ブラッドレー
M109A6パラディン
MLRS
LAV−AD
AAV−7A1
ローランドミサイルシステム
MQ−1プレデター
ラファールD
F−15Cイーグル
F−16Cファイティングファルコン
A−10AサンダーボルトⅡ
E−3Cセントリー
F−22Aラプター(1機)
・星の知慧派
メルカバMk2〜4
マガフ
ナグマショット
M163
M110
ハンヴィー
クフィル
Su−47ベルクート(1機)
・銀の黄昏
74式戦車
10式戦車
96式装輪装甲車
96式自装120mm迫撃砲
03式中距離地対空誘導弾
軽装甲機動車
OH−1
F−2A
Mig−1.44フラットパック(1機)
・傭兵
T−55
BMP−1
M113
ストライカーICV
何書いてあるかさっぱりわからん
「要は味方がいっぱいいるって事だよ。歩兵の数はまだわからんが、1個大隊は軽く超えるだろうな」
慣れとは恐ろしいものだ、エレナの暴走運転が普通に感じてきた
軽い休憩を重ねつつ移動を続け、現在午前5時の夜明け方、紐でふん縛った物資がずれないよう押さえつつ貰ってきたコピー用紙を眺め、死にかけのユリアナのためエチケット袋を作成中
「もうあんな醜態は絶対に晒さないーー……」
青い顔で寝転がりながら言うな
昨日まで膝を借りていたマリアンが狭いのを理由に助手席へ行ってしまったため、頭はネアの膝の上。苦笑していたが、別段嫌ではなさそうだ
「……いいなぁ…」
「え?」
「あ……いや、うん、俺は何も言っていない」
いや言ったろう
と返した所でどうせ認めないだろうからスルーして、空気の入れ換えをするためハッチを開ける。いつの間にか味方が集まっていたらしく、戦車から対空車両まで一通り揃っていた。上空では部隊直俺のラファールと破壊神A−10Aが旋回中
「お……」
朝焼けまぶしい空の前方から青い機体が飛んできた。敵では無いようだが、クランフォール所属でも無さそうだ
「F−2だな、銀の黄昏か?」
「ああ、例のPMC?」
「またの名を『平成の零戦』」
「おおー」
零戦といっても戦闘機ではなく支援戦闘機、実質的な対艦攻撃機だ。外見はF−16をベースにしたためにそれと酷似、それ故『フェイクファルコン』や『バイパーゼロ』などの俗称がある。しかし侮る事なかれ、ぱっと見の外見以外すべてが違う。全体的に大型化し、翼の形状も変更、内装についてはほとんど原形が残っていない。対艦ミサイル4発という過剰な攻撃力もF−16には無い点だ
「ほら見えてきた、よくわからんが兵器構成が東矮だな」
道路の先に軍用車両の群れ。さっきの資料にも書いてある通りの74式、10式、96式その他もろもろだ。民間企業がなぜあんな高価かつ最新鋭な装備を持っているのか
少し奥にももうひとつ集団がいる。あっちが『星の知慧派』か
「メインクライアントからの報酬と借りパクですよ。民間企業で社員の死亡が戦死者としてカウントされないとしても、貧弱装備じゃ色々と困りますから」
車内のネアが言う
「そうして借りてきたのを『壊れた』とか『応急処置のパーツ取りに使った』とか適当に理由つけて返さないんです」
「ほう。だが何であんな極東の?想定使用状況と実情が噛み合ってないだろ」
「……サムライに憧れがあったんじゃないですか?」
その集団に合流する頃にはタンカーが追い付いてきた
タンカーといっても船ではなく飛行機だ。中型の輸送機に燃料を満載したもので、戦闘機の空中給油に使われる。ここでメシを食って、交代役がやってくるまで護衛を継続するらしい
ちなみにジェット機の燃料の主成分は、灯油
「確かにね、急加速急減速は大事よ、緩急の速度差がそのまま回避率に繋がるからね。でも常時それを実施する必要は無いじゃない」
「意図的ではないんですよ」
「だからその突撃本能がどうにかなんないのかって……」
「ヴァラキア人ですから」
「ヴァラキア人じゃ、しょうがないね」
なにせ宇宙まで突撃かましてしまった連中である
ノリ良く返してしまったユリアナが肩を落として車内に戻り、入れ代わりでマリアンが出てくる。今の今まで寝ていたようだ、よく眠れたなあの揺れで
「……」
草原に布を敷き武器の手入れを始めた
リュックに目一杯詰めてあった弾薬が欠乏するレベルで撃ち続けたため、銃身内が真っ黒になって機関部も傷んでいる。規模はどうあれ解体して掃除してグリス塗るしかない訳だが
「大丈夫か?」
「あと20000発は耐える」
いや銃ではなく
「問題無い、仕事はこなす」
「そうか?」
「問題無い」
ならいいが
「敵が来るぞ」
「え?」
気付けば後ろにレオン、何を思ったのかジャベリンのミサイル弾頭を2発抱えている、特攻でもするのか
「今警報が鳴る、戦車を先頭に兵員輸送車の群れだ」
「規模は?」
「数では負けてるな、フランカーとファルクラムも飛んできてるとよ」
敵と聞いてユリアナが飛び出てくる、依然として顔は青いが精神面でどうにかできそうだ
次いでエレナが運転席へ、マリアンは分解したMG4を車内へ放り込んでM2重機関銃を握る
「やりますか」
アンチマテリアルライフル抱えて出てきたのがネア。全長140cmのバレットM82は装甲車対策だろう、戦車には勝てないが兵員輸送車には天敵となる
ほどなくしてサイレンが鳴り始め、上空のラファールとF−2が牽制をかけに去っていく。地上も慌ただしくなってきた
「じゃあ支援射撃頼める?車両隊は前衛回って、そこのオヤジは対戦車戦準備」
「おう。つか狙撃は俺の領分なんだがな…」
撃ってるとこ見た事無いが
敵機来襲の報を受けてからアフターバーナー点火し、マッハ2で味方部隊上空を駆け抜ける。敵はT−72とT−80の混成で目下エイブラムスと交戦中。PMC所属のメルカバと10式は両翼に大きく展開して鶴翼体勢、挟み込むまでエイブラムスが耐えられるかというと、微妙な所だ
普及型のT−72とは違い、ハイエンドのT−80はエイブラムスとて圧勝は得難い。後方の自走砲と航空隊の頑張り次第だろう
『フランカー6、ファルクラム6。うちファルクラムは爆装している、味方へ近付けさせるな』
「了解」
味方はPMCのF−2、クフィル合わせて総計11機。その内でフランカーに勝てる機体はイーグル、ラファール。4対6だ
勝てない筈は無い
「敵機捕捉後アムラームはオールオフ、それから突っ込む、自分の判断で交戦しろ」
『ウィルコ』
2番機ネフティスから返答が返り、下の戦闘を飛び越えた
アトラスとのデータリンクもありレーダー自体にはもう映っている。後はミサイルの射程まで近付くだけだが、既に友軍が格闘戦を始めてしまっているため、タイミングは計らないといけない
「連中一旦離れさせろ、撃つぞ」
『わかった』
距離80km、アムラームミサイルにとっては十分すぎる距離だ。イーグルに装備されているアムラームは4発で、ネフティスも合わせて8発。敵8機に対し同時攻撃を仕掛ける
といっても4発一気に発射する訳ではなく
アムラームの誘導方法は戦闘機からのレーダー照射で行うセミアクティブ方式、ミサイル自身のレーダーを使うアクティブ方式、プログラムに従って単純にまっすぐ飛ぶ慣性誘導を組み合わせたややこしい誘導になっている
誘導するだけならミサイル自身のレーダーのみで十分なのだが、いかんせん小さいために射程が短く、それを補うために戦闘機のレーダーで近くまでエスコートしてやる事になる
「オールオフ!」
まず1基目を投下する
ロケット点火したアムラームが急加速を始め、機体のレーダーから目標を指示してやる。進路を微調整しつつ飛んでいった
後はミサイル自身が搭載するレーダーで追跡して貰い、機体からのレーダー照射は止め次を投下する
そのあたりで味方機が一斉に飛びのき、敵機も回避行動に入った。命中率は、まぁ2機落とせればいいほうだろう
もともとこれはファイアアンドフォーゲット能力(撃ったら忘れろ)獲得のための誘導方法だ、同時多目標交戦は副産物に過ぎない
従来の中距離ミサイルはセミアクティブホーミングのみで、ミサイルが命中するまで"前方にしか照射できない"戦闘機のレーダーで敵を捉え続ける必要があった。つまり誘導中は回避運動が取れない事になり、他の敵から攻撃された時点で攻撃失敗となってしまう
それをミサイル自身にレーダーを積む事で克服したのがAIM−120『アムラーム』。一定範囲内に入った時点で誘導中止、他にかかる事ができる。別に一斉発射するための機構ではないのだ
つっても接近後は格闘戦になる事がわかりきってるこの状況、重たいだけの中距離ミサイルを残しても無意味な訳で
『1基がフランカーに命中、反応ロスト。ああ、もう1基、両方ネフティスのものだ』
「ち……」
こちらの命中はゼロ。2番機より戦火が低い隊長というのはどうなんだろう
『調子がいい、今日のエースは貰いますよ』
「やれるもんならな」
マッハ2のまま飛んでいたため敵はもう目の前まで迫っていた。アムラーム回避で体勢を崩したファルクラム1機にF−2が取り付き、短距離AAM(Air-to-Air Missile)でエンジンを停止に追い込む。数秒で機体は爆発してパラシュートがひとつ残った
あっちは奴らに任せておけばいいとして、最優先で排除するべきはフランカー4機。認めたくはないが格闘戦能力に関しては圧倒されているのだ、基本的に長引いた分だけ勝率がなくなると考えていい
『ネメシスがアムラームを発射、30秒後だ』
「っ……」
そういえば、レーダーにまったく映らない猛禽類が1機紛れ込んでいるのを忘れていた
データリンクとIFFが正常動作していれば友軍のレーダーには映るのだが、アレが空軍に編入されてまだ2日、更に何故かパイロットがPMC銀の黄昏所属で、システム調整が間に合わなかった
よってステルス機F−22Aラプターは管制機からの情報提供を受けられない状況にある。まぁそんなもの跳ね返して有り余る機体性能であるし、何より"敵と環境が同じになっただけ"だ
『退避!』
機首を思い切り引き上げ上昇に移る
飛んできたアムラームは1基のみで、射程ギリギリからの発射らしい、ロケットエンジンは既に燃え尽き慣性で飛行していた
ただ、1発だけという事は極限まで命中率が高まっているという事である
最終的にフランカー1機に命中し、機体を鉄屑と爆煙に変えた
敵機残り8機
『このまま継続的に遠距離攻撃を行う、一気に畳み掛けろ』
「…了解」
ラプターのコンセプトは『ファーストルック・ファーストショット・ファーストキル(先に見つけ先に攻撃し先に倒す)』であり、気違いじみた機動性を持ってはいるものの、ステルス効果が削がれる格闘戦にわざわざ参加する必要もない。だから搭載兵器も中距離ミサイル中心になっており、接近戦は任されているのだが、何と言うか
負ける気はなくなったものの、同時に無理して気張る気もなくなった