1、魔王の妹、人間界へ行く!(その3)
「アリスは人間界に行くんだもん!」
魔王の妹、アリス=ド=ノースポールは人間界へ強い憧れを抱いていた。
そんな中、王族の儀式「14の祭」を取り行うこととなった。社から人間界への扉が開く時。さぁどうなる?!
魔王の妹、人間界へ行く!
アリスは飛び石を超え、社殿に足を忍ばせる。
見所、正面には魔王軍一面に並んで見物す、
見所、中正面には役人集一筋並べてこれを観る。
片手に扇、片手は手ぶら。白昼堂々、さぁ御参照あれ!
(大丈夫、ちゃんとやった。舞い方も覚えている。
うん、大丈夫。大丈夫。)
アリスは深呼吸をして扇を右上から左下に弧を描くように振り下げ、右足を左足の踵に寄せた。
「始めろ」の合図。
楽師達、歌を奏で始める。
アリスは歌に合わせて舞う。
扇を右から左へと左から右へと交差させ、足をしなやかに動かす。
扇を右の手から上に投げたアリスは左の足で素早く器用に扇を掴み、空に蹴りを入れて左上へと飛ばして左手に渡す。
実に見事!
パチパチと見所から拍手がなる。
楽師たちが手を止めたかと思うと曲調が変わった。
テンポが早い。
アリスは足に神経を集中させて右左右右左とつま先立ちでリズム良くこなす。
(ああーーーーわわわ!つま先立ち辛い〜〜〜痛い〜〜〜早く終わって〜!)
精神的なリズムは良くなかった。
さぁ、みなさんご参照のところで大技!
アリスは見所に向け扇を投げた!
その距離二十三間!(約41メートルとちょっとぐらい)
扇を目掛けアリス、ふっと火放つ!
天晴れ!
扇、燃えに燃えひらひらと舞い炭となった。
アリス、内心ホッとして見所へお辞儀する。
おおっーー!
見所、どよめく。
魔王、手を叩き感嘆する。
ドーズ、首根っこ一枚繋がり安堵する。
魔王エーデル前へと出でて。
「皆の者、よく聞け。我が妹、アリスは踊りの時を見事に完遂した。今から異の時へ移る。」
エーデルはパチンッと指を鳴らした。
これはたまげた!
たちまち社に異界への扉が開いたではないか!
「アリス王女と魔界に栄光あれ!」
エーデルが拳を天に掲げて叫んだ。
オオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
エーデルの言葉に配下たちは皆、声を荒げて称えた。
「オーミ!オーミ!オーミ!」
一人の軍人が国名を叫び始めた。
「オーミ!オーミ!オーミ!」
また一人、また一人と国名を叫び始めた。
オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!オーミ!
遂には中正面の役人までもが叫びを始めた!
ドーズはすかさずアリスの元へ行き。
「アリスサマ。」
アリスは頷き
「うん、行こう。人間界へ!」
二人は社を跨いだ。
アリスは目を開けた。
「ここが、人間界、、、、」
アリスとドーズが出た場所は少し開けた場所で周りは雑木林に囲まれている。
上を見れば満天の星空が二人を出迎えている。
アリスは手に炎を出して暗がりをてらしながら見回し
「なぁーんだ、人間界も魔界とあんま大差ないのかぁ 〜」
アリスはガックリした。
「イチブブンダケヲミテイウンジャアリマセン!」
なんとか声を絞り出したドーズが言った。
「、、、、そーだね!まだ生人間も見てないのに私、初対面だけで語っちゃった!」
そう言いながらアリスは地べたに大の字に寝転がった。
リンーーリンー
虫たちが鳴いている。
「、、、、、、、、綺麗だね。」
魔界でも一応星は見える、、、、が、魔王城となると城下町の灯りが激しく星空は極めて見え難い。
そのせいか、はたまた人間界への強い憧れの為かは定かではないがアリスはこの星空が世界一美しい景色だと思った。
「アーーーーーーーーーーーーー!!」
アリスが起き上がる。
「こんなことしてる場合じゃなかった。早くしなくちゃ!」
「ソーデスヨ!こんなとこで、、ウッ」
ドーズは苦しそうにアリスを叱責した。
「ドーズ?」
アリスはドーズに近づき心配そうに聞いた。
ドーズは喉に手を当ててウッウッウッと悶えている。
うゲェっ
吐いた!ドーズは胃液と共に何かを吐き出した。
アリスは咄嗟にうゲェーと後退りした。
「、、、、ドーズ!これって!」
ドーズが吐いた物は一つのバッグだった。
「その中には、、、、人間界で必要なものが入っています、、、、」
「えぇ!どうやって持ち込んだの!」
アリスはびっくりした。
それもその筈、儀式の際テロ事件などが発生しないよう、儀式が始まる1週間前からお付きの執事だけで無く城全体の部下達が身体検査を受けるのだ。
それ以外にも部屋検査やウソ診断など数多に渡る。普通なら不可能極まりない。
「私の種族のカエルはスキルとしては酸性の強い胃液 を吐くことで一般的には知られています、、、、
ですが私はもう一つスキルを持っています。
(無限の胃袋)と言うものです。
胃に仮の別の袋を作り、そこに物が溜めておける能 力ですよ。
私は下手て短時間しか使えませんがね。」
「ドーズそんな固有種スキル持ってたの?!」
アリスはびっくりした。
4歳から約10年の付き合いの為知らない事はもう無いと思っていたからだ。
「私、東の山岳地域の出身でして、、、、
冬には作物が全く採れ無い地域、それに加えて鈍く なる。
だからこその秘策なんです。」
ドーズはリュックにかかった胃液をハンカチで拭きながら話した。
「でもどうやってリュックを隠してたの?そもそもな んでウソ診断でバレなかったの?」
アリスは疑問をぶつけた。
「まず、ウソ診断ですがあの検査にはスキルに(嘘暴 き)を持つ種族が対応しますよね。
では、アリス様(嘘暴き)の場合どの様に見抜くと 思いますか?」
アリスはドーズの質問に対して3秒沈黙の後
「魔力を使って相手を解析するんじゃないの?」
「違いますぅー(嘘暴き)に特殊型はありましぇー ん」
ドーズはイラッとくる言い方をした。
アリスは「えぇー」としょぼくれた声を出した。
「いいですかアリス様。
あなたの周りは特殊型のスキルを持ってる人はぞろ ぞろいますが、一般的に特殊型スキル持ちは滅多に 居ません。
そもそも魔力量さえ少量しか無いのです。
(嘘暴き)の場合はそもそも本能的なプロセスで使用 しているので、スキルとして特殊型の分類ではあり ません。
そうなると型は?」
「基本型だ!」
「そうです!
なので、嘘の基準はあらかたパターンとして記憶し ています。
つまり百発百中で無く、そのパターンにさえ気をつ ければ引っかからない場合もあるのですよ。」
アリスは「なるほどぉー」とドーズの話を聞き納得した。
「リュックをどこに隠したか。と言う問いに対してで すが、まぁ私一応魔王城に13年勤務していますので 隠し場所なんか朝飯前なんですよ。」
「へぇー、ドーズがヘマしないって何か意外。」
「ヘマしたら最悪私の首が飛びますので、、、、」
生ガエルは死んだ目で言った。アリスは
「ま、まぁ!とにかくドーズ!ありがとう!」
にこやかに感謝を伝えた。
「本当にアリス様は私めを殺す気ですか!」
楽観的なアリスに生ガエルは身を案じた。
生ガエルはリュックを拭いたハンカチをしまい、起き上がり土を払った。
「さぁ、アリス様。これで私の話は終わりです。
もう そろそろ逃走しないとこわ〜い女王殿下に見 つかってしまいますよ。」
ドーズがリュックをアリスに手渡しながら言った。
「うん、ドーズ。本当にほーんとうに! ありがと う!」
アリスがリュックを受け取りながら笑顔で言った。
「ええ、アリス様お気をつけて。」
ドーズがリュックを渡しながら笑顔で言った。
「ドーズ、、、、」
アリスはドーズにギューっと抱きついた。
止めどなく力を強めていきながら。
「ア、アリスサマ、、、、嬉しいのですがクルシ、クルシ、、、、イ、デ」
とうとうドーズは気絶してしまった。
アリスはドーズの耳元に近づき
「(忘却)」
と言う。
その後、懐からゲームエネミーの限定モデルハードを取り出して生ガエルの口に放り込んだ。
次にリュックの中を漁り始める。
中には「人間界の歩き方」「人間界の作法」という明らかにドーズが書いた本や食料、地図などが入っている。
その中から逃走用の着替えを見つけた。
ビリビリッ
アリスは着物を口の鋭い牙で引き裂き、素早く着替えた。そしてリュックを前側に背負い、羽を広げる。
ドーズの方を向き
「ドーズ、ごめんね。」
と言ってから羽を羽ばたかせ方角もわからないまま飛び続けた。
解説
見所
能を見るための客席の名称です。
正面
客席。舞台の前にある席。
中正面
客席。舞台から見て斜めにある席。
です。あまり能の知識がないのであっているとは思います。知識不足で申し上げありません。
お手に取っていただき有り難う御座います。




