後輩は偽の恋人 -side KOHEI-
今まですれ違ってた不思議なくらい、2人でいるのがすごく自然だった。
付き合いたてのカップルらしく初々しさもまぁあるのだが。
「長年連れ添った老夫婦みたいな安定感あるよな…」
長らく、両片想いを見ていた友人がポロリとこぼしたその表現がしっくり来た。
穏やかに微笑み合って、遠目に見てもお互いがお互いを配慮し合ってるのが見て取れるような。
切ない気持ち半分、よかったなという気持ち半分。
「洸平、真弓さんと付き合うことになった」
「あーっ、そうなんだ!よかったじゃん、ずっと好きだったもんなー」
新学期の部活の後、改めて学が報告してきた。
“笹川さん”から“真弓さん”に呼び方が変わったねって揶揄ってやりたいのに、親友の真剣な表情に嫌な予感がした。
「あのさ、変なこと言うようだけど、洸平って…その…真弓さんのこと」
やめろよ、知らないフリしとけよ。俺がお前に嘘吐けないのわかってるだろ。
今、何を言ったって誰も幸せにならない。
「コウちゃーーん!」
タタタっと小気味のいい足音を立てて、ちまい後輩が腕にまとわりつく。
それにホッとしているなんて、どうかしてる。
明るくて短い髪が子猿みたい。その茶髪に、ちょっと大きめの赤い石のピアスがよく似合う。
「かーえろー?ねね、駅前のパフェ連れてってくれるんでしょ」
甘えるような触れ方に、なぜか心が落ち着いた。
もちろん、約束なんてしてないし、そんな呼び方許した覚えもない。
もう今更だ、ヤケだ。
「うん、帰ろうか、ユメ。」
肩に手を回して親友を見ると、驚き半分安心半分。
それが正解だったと俺も安心した。
「すみません…つい…」
「や、いーよ。助かった。」
ほっと安堵するユメは手を掴んで俺を見上げてきた。
「先輩、ユメをカノジョにしませんか!?」
「なんでそうなる」
「だってぇ、学先輩共通の知り合いだし、今のウソバレたら困るでしょ?」
「そりゃそーだけど」
指折り数え始めるユメ。
「ユメならー、口固いしー、好きな人知ってるしー、さっきみたいに助けてあげられるしー、友達とばっか遊んでても一緒に行けるから怒らないしー、バイト三昧でも応援するしー、ゲーム強いし退屈しないしー、先輩のこと大好きだし!」
「俺のこと好きだから問題なんだろうが」
「えええぇっ!?」
頷かない俺にユメは大袈裟に驚く。
そんな驚くか?
「ユメにとってはチャンスなんです!好きになってもらえるまで」
薄々勘付いていた。
可愛い後輩には変わりないし、戯れてるのは楽しい。
「先輩が“マユミン”を忘れるまででいいです!」
でも応えられない。
応えられないから、花火だって俺からは声かけなかったのに。
「…好きにならないよ、俺。キミのこと」
「わからないじゃないですかぁ!」
見下ろす俺を、真っ直ぐに見上げるユメ。
「期待しないどいて」
「やです!1%でも可能性あるなら賭けます!」
「…1%もないよ」
「ゼロじゃないならいいです!!」
「………」
そうだった。そういう奴だった。
ちまくて子猿みたいに可愛いクセに、誰よりも男前。
残り1分半で10点差でも、勝つ気でいるような負けん気の強い奴。
長身が有利と言われるバスケで不利なミニマムサイズ。
なのにコイツは低い位置での取られないドリブルを磨き、アシストに集中、かと思えば相手の一瞬の隙を突いてどこからでも点を決めに行く。
キッと睨み上げられて、これって告白されてるってことでいいんだよな?と疑問になって吹き出してしまった。
「勝手にすれば」
「はいっ!勝手にしますっ!」
もったいないよ、その真っ直ぐさ。
こんなのに付き合うなんて。
時間の無駄だよ。
やめときなよ。
「…駅前のパフェだっけ?奢るよ」
「ひぇっ!?」
「この前とさっきのお礼。行かないならいいけど」
ニパッと笑って、また腕にまとわりついてきた。
期待しないでほしい。
6年も温めてきた想いなんてそんな簡単に何とかなるわけないんだから。
もったいないよ。
やたら気が強いだけで、キミ、それなりには可愛いんだしさ。




