親友の彼女に失恋 -side KOHEI-
「あーんな可愛い浴衣姿も褒められない奴なんか、やめちゃいなよ」
3年経った今でもアイツの話を口にすると泣きそうに目を伏せる。
好意をチラつかせても靡くどころか困り顔。
彼女のことだから、忘れるために利用しようだとか打算はこれっぽっちもなくて、友人として人として、俺を傷付けない方法を探しているのだろう。
(そんなん、わかってて押せないって…)
いっそさ。
いっそ手が届かないところに行ってくれたら諦めるのに。
あーもーさっさと付き合えよ。
学が、俺とまゆみんが付き合ってる誤解をしているのは知っていた。
知っていて否定しなかった。
「もー、そんな顔しないでよー俺が意地悪してるみたいじゃん。カナシー」
でももう潮時かな。
アイツのいない間に仲良くなって、十分アプローチもしたし、距離も縮まったと思う。
で、結果コレ。
もしこの2人が、お互い以外の人に目を向けでもしたら、その方が俺はキツい。
「今年はみんなで花火行こうね!浴衣だよ!絶対ね!」
花火デートで大泣きする彼女を宥めたのが3年前。
一昨年は誘わなかったけど、去年は浮かない顔で断られた。
今年は2人で、も、あえなく。
それならばと、みんなと一緒に行きたいキャラクター全面に出して、周りを巻き込んだ。
得意なんだ、こういうの。
◇◆◇
「じゃ、場所取りしててね!」
「え、ちょっ…」
狼狽える彼女と、困惑する学。
イタズラが上手く行ったようなしてやったり感と、一抹の寂しさ。
ねっとり絡み付く夏の熱気と祭りの喧騒が、不快だ。
「洸平、射的やろーよ」
「俺のために一番いいやつ取ってよ」
「あはは、なんでだよ!」
「俺腹減ったから焼きそば食うー」
「いってら」
「おー」
毎年やってた射的もヨーヨーすくいも、かき氷も、今年はなんだか魅力的に見えなくて、はしゃぐ友人達を見守った。
「キミも行っといでよ。」
彼らはいつのまにか夏祭りに夢中になってった。
俺が抜けてもみんな各々楽しむんだろう。
この騒がしさは、傷心の俺にちょうどいい。
「潮崎先輩のことお人好しって言いますけどー、大概お人好しですよね、コーヘーせんぱぁい?」
1人、出店にも釣られず、俺の隣に居座る女。
「ハイハイ、お付き合いどーもねー」
「先輩に誘われたら断れないですっ」
「俺、キミのことは誘ってないよ」
協力してくれた面々は、各々出店を楽しんでいる。
みんなをまとめてもいいが、例年ならそうしているのだが、今日はもうそんなやる気も出ない。
いつもそれを支えてくれる奴は、今頃…だろうし。
俺を気にかけてちょこまかと着いてくるのは部活の後輩だ。高校のバスケ部からの付き合いで気心は知れている。
「ねぇ、洸平先輩好きなチョコバナナ!あ、リンゴ飴の気分です?」
「いらない」
「じゃあ射的?先輩上手いですもんね、去年も取ったお菓子、ユメにくれて」
「帰る」
「やっ、やけ酒!付き合いますっ!」
「キミ未成年でしょ」
「宅飲み!宅飲みしましょ!ユメの家!それなら」
「お家で1人で飲みなさいねー」
「わー待ってぇー」
付き合いが長いコイツの前で明るく振る舞うのもバカらしくなって、返事も適当になる。
スタスタと歩幅と合わせずに人の波を縫って歩くと、ちまいソイツはワーとかキャーとか言っている。
ドサッと嫌な音がして、呆れて振り返ると、転んで立ちあがろうとしているソイツ。
流石に放ってもおけず、数歩戻って手を貸してやった。浴衣に下駄で、ちまちま着いて来ようとなんかするから。
「ありが…」
「あのね、迷惑」
「ぅ…」
「1人になりたいんだから、1人にして」
「でもでも!洸平先輩、“マユミン”がそんな顔してたら、絶対放っとかないと思う!」
ガシッと、貸した手を掴まれて。
その真剣な眼差しに、心の内側まで見透かされるような感覚になる。
今の俺には相当つらい。放っといてよ。
「…なんなの、ホント」
キッと睨み上げられて、その意志の強さに根負けした。




