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片想いから始まるHappy ends  作者: 卯月はる
先輩に片想い
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後輩に告白 -side KOHEI-




メッセージを送るも、既読にならないまま数日。電話も出ない。

焦れて、仕事帰りにユメの家に寄る。


まだ帰宅していないようなので、マンションの前で待っていた。


「ユメ」

「…何?忘れ物ですか?送ります。」


待ち伏せするのも想定内だったのだろう。

大して驚きもせずにツンとそっぽを向くユメ。


「違ぇ。話しにきた」

「あたしは話すことない!」


ユメが声を荒げ、住人らしい人がチラチラとこちらを見て通り過ぎていく。


溜め息を吐いて、ユメは俺を部屋に招き入れた。

久しぶりのユメの家。


俺の物は玄関にある段ボールにまとめて詰め込まれていた。


それから、部屋の中も段ボールだらけ。

そのままにしてあったローテーブルに、ユメは麦茶を出してくれた。


俺専用のマグカップではなく、柄のないプラスチックのコップに。


「引っ越すのか?」

「洸平先輩には関係ないです。」


こちらを向こうともしないユメ。

何でこうなる前に話さなかったんだ。後悔しても仕方ないけど。


「ユメ。こっち見ろって」

「イヤ。そんな話しに来たなら荷物持って帰って!」


グビグビと音を立てて飲んでいるが、それは麦茶。


俺は諦めて思ったことを一方的に話すことにした。

怒られるのも詰られるのも、甘んじて受け容れるつもりで。


「おいユメ。夢架。…まぁいい、そのまま聞いて」


夢架は驚いたように俺を見た。

初めてちゃんと、名前を呼んだから。


「やり直そう、夢架」


ガンっとテーブルにコップを置く夢架。


ようやく俺の方を向いたかと思えば、キッと俺を睨み上げていて。


「もう、セフレは嫌!」


やっぱりそう思ってたのかという納得と、俺の方を見てくれた喜びと。


「セフレなんて思ったことないけど」

「じゃっ、じゃあ何!?」

「彼女」


目が丸く見開かれる。


そんなに想定外だったのか、長いまつ毛をゆっくりと瞬かせる。


「かの…え?仮?」

「仮なんて言ってたのお前だけだから」

「んぇ」


意味がわからないと俺を睨む夢架。


「だっ…絶対好きにならないって!」

「…言ったっけ?」


全く記憶にない。


…が、言い訳をさせてほしい。


失恋した直後においそれと他の人に目を向けられるはずがないだろう。そんなに器用じゃない。


が、ここでわざわざそんな無粋なことは言わない。


「こんなに好きにさせておいて、勝手に終わらせるなんて酷くない?」


夢架の隣に移動する。


頬に触れても、拒否はされなかった。


「好きだよ、夢架」

「コウちゃんのバカ!」

「うん、ごめん」


ポカポカと俺の肩を叩く夢架。


困惑しているのは承知の上で、どんな形でもいいから、俺の隣に戻ってきて欲しかった。


「俺と付き合って」


耳元で囁くと、夢架は俺の腕に飛び込んで来た。





◇◆◇





「…で、この段ボールの山は何だ」

「引っ越そうかなって。」


モゾモゾと布団を手繰り寄せて、腕の中でいい位置を探している夢架。


「…それはわかるけど」

「ンー、更新のお知らせ来てたし」


なんでこんな夏前の半端な時期に…と思ったが、夢架は入社してしばらくは実家から通っていて、通勤がキツいからとここを借りたと言っていた。


ここに住み始めてからもう2年か。


「コウちゃんとの思い出ばっかの家に居たくないし?」

「……悪かったって」


暗い部屋でもクスクスと笑っているのがわかるから、もう怒ってはいないだろう。


「じゃーウチ来れば?」

「は?」

「部屋余ってるし、職場もそんな遠くないだろ」

「や、そうだけど。」

「いろいろ考えてもいい時期だろ、俺らも」


学とまゆみんは結婚するし、他の奴らもだ。


「この前だって、夢架とその話をしようと思ったのに『ユメはもういらないね』だもんなぁ」

「はぁっ!?そんな素振り全く…」


ブツブツ言ってる夢架。


“言わなくてもわかってくれる”は如何に甘えだったのか突きつけられる。


もう、学のこと揶揄えないな…


「…えーと、ご家族は?」

「今…どこっつったっけな。ヨーロッパのどっかで働いてるわ。しばらく帰って来ないんじゃない?」


仕事で世界中を飛び回ってる父親に着いて行った母親。


転校なんかもしたくなくて、中学生くらいからはこのだだっ広い家に置いて行かれていた。

ここは俺の家だと思っているらしく、両親は帰国してもホテルを取ったりしているようだ。


前回帰国したときにはこの家の名義をどうするみたいな話もしていたが、父親に任せることにした。


「やっと話してくれたぁ」

「…興味ある?そんなの」

「あのねえ、仲良い友達にも隠してるようなの、こっちから聞きづらいっての」


そういうものか。


「言葉にしないとわかんねぇもんだな」

「だーねー」


夢架の気になっていること、俺が伝えられていないこと、伝えているつもりになってること。


話すようにしないと。

意識しないと、口に出さないようだし。


「ねーねー、コウちゃんはユメのどこが好きなのー?」


うふふふとどさくさでいろいろ聞こうとする夢架。


「ちまいトコ」

「ち、ちま!?気遣いできるとか可愛いとか色気があるとかあるでしょ!?」


キーキー耳元で言っている。


暗くても表情がわかるくらい、一緒にいたのだと実感した。


「あー…いや。どんな不利な状況でも常にできることを考えてるトコ」


それは、バスケでも、…恋愛でも。


「あの日も、体当たりでぶつかってきてくれて、たぶん、結構救われた」


小さい体でいつも一生懸命。

冷静でいて本気で情熱をぶつけてくる。


俺はキャラクターを作って一線を引いていたのに、真っ向勝負を仕掛けてくるからのらりくらりと交わせない。


尊敬していたのだ。


高校の頃、感情が恋愛に変わるよりずっと前から。


「花火、行くでしょ?今年も」

「うっ、うん!」


初めてコウちゃんから誘ってもらったと腕の中で夢架はカラカラ笑ってくれた。


夢架の体温を抱きしめながら、思い付くままに話しているうちに夜は更ける。








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