悪友とやけ食い -side YUME-
「ガパオライス、カルボナーラ温玉乗せてー、ハンバーグ、ステーキ、ポテトフライ…エビフライ追加で。あっ、わらび餅いいな。抹茶のパフェ…うーん、どっちもいっちゃえ!あとガトーショコラ」
ファミレスのタッチパネルを操作して、気になったものを追加しまくる。
目の前の風太はゲンナリしている。
「……食えんの?」
「余裕っしょ。アンタもなんか食べる?」
「…余ったらもらうわ」
「余んないよー」
自分が付き合うって言って付いて来たんだから、本気でやってほしいものだ。
一通り頼んで満足した。
「別れたんだ」
「そっかー」
こういうときはやけ食いに限る。
しくしく泣いて部屋に引き篭もるタイプではない。
普通はお酒とかになるんだろうけど、チューハイ1本で気持ち悪くなるし、楽しくない。
失恋したしバッサリ髪切るのもいいと思ったけど、これ以上切ったら坊主にするしかないから諦めた。
「まあ、不毛な恋も終わってよかったじゃん?…んが!」
失礼なことを言う口には、無言で唐揚げを突っ込んでやった。
「アッツ!!」
不毛かあ。わかってた。でも諦められなかっただけ。
洸平先輩の好きな人は、サラサラロングだったな。
穏やかに微笑んでいるタイプ。
真似しようとも思えないくらい、あたしとはかけ離れた人だった。
洸平先輩の好みがああなら、あたしは完全に射程範囲外だ。
「おま…ホントよく食うねぇ」
運ばれた食事からかっこんで行くと、ちょいちょいあたしの苦手なものから摘んで行く風太。
わかってんじゃん。
気心知れていて、思ったことを言えて楽だ。
一人で黙々とやけ食いより、コイツがいてよかったかも知れない。
「これからどうすんの?」
「んー、仕事も頑張りたいし、バスケの社会人サークル入ったし、そっち頑張りながらいい人探すかなー」
シメのパフェをつつきながら、膨らんだお腹が苦しい。
生クリームが重い。その下のゼリーはいけそうなんだけど。コーヒーでも持ってくるかとドリンクバーに立とうとしたところ。
「じゃ、オレと付き合おう」
「はーぁーー?」
「好きなんだ」
冗談と流せないくらい、見たことのないくらいの真剣な表情で。
同時に、幼馴染の可愛い可愛い妹分の顔が浮かんだ。
「…ごめん、アンタのことは好きだけど、そういう風には見れない。」
◇◆◇
慌てて話しに行った妹分は、
「実は、とっくに振られてるんだぁ」
と、寂しげに目を伏せた。
もうさ、もったいないよ。
こんな可愛くていい子に応えないなんて。
あたしより絶対こういう子がいい。
あー…コウちゃんも、こういう子の方が好みだったのかなぁ。
普段ならそんなあり得ないこと考えないんだけど、今だけは考えてしまった。
あたしのために、もう気にしていない風に話してくれているのはわかる。
挙げ句、
「ゆめちゃん、ふーくんのこと真剣に考えてあげてください!!」
と頭まで下げられてしまった。
困った。
そんな簡単な話じゃあない。
忘れられるなら、とっくにこんな恋なんて諦めてる。
トボトボと歩いていると、花火大会のチラシがデカデカと貼られているのが目に付いた。
何だかんだ言って毎年あたしから誘って、無理矢理連れ出したりもして、コウちゃんと花火を見ていた。
あたしにとっては記念日みたいなものだったけど、コウちゃんに取っては嫌な思い出だったのかも知れない。
「…もう、見に行くこともないかな」
思わず独りごちて、余計に寂しくなった。
自分で手を離したクセに。




