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Peaceful World  作者: ちてい
第一章 ドクサへの問い
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第1話 兆し

「オリヴィエ!」

「んー…」

「オリヴィエ!こら!いい加減起きなさい!」

「うーん…」

「また遅刻する気!?もう本当にあんたって子は…!」

「うわっ!やばっ…!行ってきまーす!」

「ちょっ…こら…!…全く…。せっかくお弁当作ったのに…忙しい子なんだから…。」


僕はオリヴィエ・クローマン。14歳。ここ、都市ゴルゴンに住むごく普通の中学生だ。

僕は勉強が嫌いだ。何故って?答えは簡単、面白くないからである。

できる事なら遊んで暮らしたいし、勉強なんてしたくもない。

そもそも創造主フェル様が望んだのは平和なはず…よくよく考えてみれば勉強なんて平和の下でする行為じゃないだろう?

僕にとってあれは苦痛そのものだ。平和とはかけ離れ過ぎている。

大人はみんな将来のために勉強しろと言うけれど、僕はまだ子供だし、そんな後の事は後で考えればいいじゃないか。


「オリヴィエ!また遅刻か!」

「あはは、すみません」

「何を呑気に笑っている!席につけ!」

「はーい」


「オリヴィエ、おはよう!」

「おはようサラ。今日も相変わらず元気だね」

「あったりまえよ!朝からそんな顔してちゃ1日持たないわよ?」


彼女はサラ・エルメス。僕と同級生の中級能力者だ。なんでも元気が取り柄らしい。脳筋なのだろうか。


「オリヴィエ?何か変な事考えてない?」

「え!?考えてないよ!」

「そう?ならいいけど」


彼女は妙なところで勘が鋭い。これに何度焦らされたことか…。


「では、オリヴィエ、この世界で最も高い能力者階級の名を答えてみろ。」

「え…!?なんで僕…」

「遅刻してきたからだ!!当たり前だろ!?」

「は、はい…えーっと…。」

「何だ?分からないのか?」

「い、いえ!そんなことは…」


いや、分かるわけないだろ…。能力者階級…?確か初心に初級、中級、上級…あとなんだっけなあ…。


「究極だよ。オリヴィエ。」

「あ、究極能力者です!」

「正解だ。みんなもいいか?究極能力者は世界でも有数、到達できれば職には一生困らない。みんなもここを目指して頑張るんだぞ。」

「はーい」


「あ、ありがとうサラ。助かったよ。」

「ふふ。ひとつ貸しだからね!」

「えぇ…。」


「それにしてもオリヴィエ、最近遅刻が多すぎないか?」

「いやぁ…そうかな?」

「そうよ!多すぎるでしょ!」

「うーん…そうかなぁ…。」

「はぁ…。オリヴィエ、そんなんじゃ進学できないぞ?」

「え!?」

「当たり前だろ…。能力者階級すら分からない中学生がいるか?見たことないぞ」


彼はゼラス・ホーリー。僕と同級生の中級能力者である。何でも勉強が好きらしく、俗に言う優等生って奴だ。明らかに僕とは対極の位置にいる。


「オリヴィエ、能力者属性は言えるのか?」

「能力者属性…ねえ…」

「はいはーい!じゃあ主属性から!」

「えーっと…氷雪、雷電、水泡、火炎…あ、治癒!」

「と、旋風と土石だな。副属性は?」

「副属性…えっと…空間、精神、毒血、怨霊…。あ、あと閃光と暗黒!」

「それと、原子、強化、創造、変化の計10種ね!」

「は、はあ…」

「オリヴィエ、ハッキリ言わせてもらう。お前の今の頭は小学生以下だ。」

「はあ!?」

「そうね…これは深刻な問題よ。」

「え、なに、僕ってそんなに頭悪いの!?」

「自覚がないところがまた救えないな…。」

「そうね…あ!そうだ!今日から毎日放課後は3人で勉強会でもしない?ほら、試験も近いし!」

「賛成だ。全員にとって利があると思う。」

「え、勉強会!?いやいやいや!」

「オリヴィエ、進学したくないのか?」

「いやぁそれはその…したいけど…。」

「ならお前も強制参加だ。いいな?」

「はい…」


こうして勉強が世界一な僕は、友人2人に言われるがままに勉強をすることになってしまった。


「オリヴィエ、いいか?属性には他にも特属性ってカテゴリがあってだな…」

「特属性…はい…うんうん…うわっ!?」


大きな揺れだ。


「天界恩恵波だな。またもフェル様が我々に恩恵を授けて下さっている。心より感謝を。」

「心より感謝を!」

「こ、心より感謝を…」


この揺れ、いわゆる地震のようなものを人々は「天界恩恵波」と呼ぶ。

伝承によればこの波は創造主フェル様から僕たち人間に向けた平和の恩恵らしい。

まあ依然僕はよくわかってないんだけどね。


「よーし終わった!お疲れ様!オリヴィエ、ゼラス!」

「お疲れ様。また明日だな。」

「あ、明日もやるんだ…」

「なーに言ってんの!当たり前でしょ!」

「は、はぁ」


にしても勉強というのは実に退屈でつまらない。あれを楽しいと言っているのは果たして本当に同じ人間なのか?

そもそも考えてみればおかしな話だ。ゼラスのように勉強を楽しいと思える感性を持って生まれた者は称賛され、僕のように遊びを楽しいと思える感性を持って生まれた者は怠惰だと言われる。

こんなのは偶然の産物ではないのか?僕は運命に負けた。ただそれだけの話ではないのか?

にしても明日からもあれが続くとなると…苦痛も苦痛だな…。


「ただいまー。」

「あれ。母さん、留守かな?…ん?」


『オリヴィエ・クローマンへ。至急ゴルゴンギルドへと向かえ。』


「ギルドから…?なんだ?もしかして僕の成績が悪すぎて都市から警告か!?…いやいや、そんな事あるはずないよな…よな?」


「オリヴィエ・クローマンです。招集命令があったので急遽伺いました。」

「あら、オリヴィエさん。此度は突然の訃報に接し、言葉もございません。ネルシア・クローマン様のご冥福を心よりお祈り致します。」

「え?」


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