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真は、放課後になっても、新聞の記事の内容をどうするかが、依然として決まっていなかった。
ま、その気になれば何かしら書けるだろう。
そう思い、雨が上がっているのが目に入ったのもあって、家でやることにし、帰宅するために下駄箱のところで靴を履き替えていた。
「伊藤くん」
誰かが小走りで近づいてくるのが足音でわかっていたが、その人物に名前を呼ばれて視線を向けると、修司だった。
「さっきはごめんね、断っちゃって」
彼は、昼休みのとき同様に、申し訳なさいっぱいの表情で謝った。
「いいって、いいって」
真は本当に気にしなくていいというふうに微笑んだ。
「それで、代わりと言ってはなんだけど、記事にしたらどうだろうってことを思いついたんだ。提案させてもらっていいかな?」
「え? もちろんいいけど……」
さっき初めて顔を合わせた間柄で、そうくるとは思っていなかった真が戸惑い気味に答えると、修司はすぐに続けた。
「じゃあ、言わせてもらうね。今回保健委員をやるので健康に関することをいろいろ調べたら、前から知ってはいたけれど、学校の先生がものすごく忙しくて大変で、精神的な病気にまでなってしまう人も、本当にたくさんいることがよくわかったんだ。で、それについて書いたらどうかな? 先生の苦労が伝われば、余計な負担をかけまいと生徒の問題行動が減って、楽になって体調が良くなることで先生たちはめったに怒らなくなるだとか、好ましい効果が生まれる可能性があるし、そういった記事を載せれば、伊藤くんは先生たちから感謝されるかもしれないよ」
「あー……」
真はなるほどという表情をつくったが、本音は心に響いていなかった。やはり彼としては楽しい内容のものがいいのだ。
「ありがとう。それにするかはわからないけど、参考にさせてもらうよ」
胸の内では「ないな」と思いつつ、感謝を口にして、軽く手を振って修司のもとから去った。
しかし、その直後の、校舎から外への出入口を数歩過ぎたところで、ピタッと足を止め、つぶやいた。
「待てよ……」




