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独裁者  作者: 柿井優嬉


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「フッフフ~ン」

 数日が経過した放課後、コメディー部の部室として使用している教室で、真が鼻歌まじりに何かを書いている。

「うーむ。我ながら上出来ではないか?」

 その紙を持って、遠目から眺めるように見て、独り言を口にした。

 それは、お笑い大会のポスターである。コメディー部は順調とはとても言えない状況にあるが、それでも大会のほうを一回やってみようかと考えたのだ。うまくいけば、コメディー部への関心や入部が激増するかもという狙いもある。

 すると、いきなりドアが開け放たれた。

 やったのは修司で、真のもとにズンズン近づいてきた。

「おい、どうしてくだらないことばかりするんだ。僕に腹が立っているんだろう? 言いたいことがあるんじゃないのか?」

 学校を盛り上げるには至っていないけれども、真はずっとコメディー部の活動に励んでおり、それが修司は気に入らず、いらだっているようだ。

 真は落ち着いたまま答えた。

「別に。もう済んじまった話だし、怒ったってどうなるものでもない。俺がやってる活動をくだらないって言うが、学校の雰囲気が暗くて嫌だから明るくしたいんだ。良いことをしてると思うけどな」

 さらに表情を険しくした修司は、真の胸ぐらをつかんだ。

「来い」

 そう口にすると、そのまま引っ張って移動し始めた。

「何だよ? 放せよ」

 真は、言葉同様に抵抗した振る舞いはするものの、全力というほどには逃げようとしていない。

 そして二人は四階にある生徒会室に入っていった。この日は活動日ではなく、他の役員は誰もいない。

「僕を攻撃しろよ」

 やっと手を離し、目の前にいる真に、修司は挑発する感じで述べた。

「そんな気はないって言ってんだろ」

 相変わらず真は、同じ土俵には上がらないといったテンションだ。

「姉のことでムカついているんだろ! やれよ!」

「やらねえ」

「やれってんだよ!」


 その頃、浩子は所属している図書委員会の集まりで図書室にいた。

 時計を気にして何度も目をやり、ひどく焦った様子の彼女に、同じ委員の男子生徒が声をかけた。

「どうしたの? 宮城さん」

「ちょっとさ、長くない? 今日はすぐに終わるって話だったよね? 終了しそうな雰囲気もないし」

 二人は小声で言葉を交わしている。

「まあね。でも、まだ十分も経ってないよ」

 すると、浩子は立ち上がった。

「すみません! ちょっと急用で、私、帰ります!」

 場を取り仕切っている生徒、それに他のコたちも、ぽかんとなったために、言葉は返ってこなかった。

「そのぶん、後でたくさん仕事をしますので、失礼します!」

 そうして、図書室から飛びだしていった。

 ところが、帰ると宣言したにもかかわらず、彼女はカバンが置いてある自らのクラスの教室へは行かずに、階段を上がっていった。

 廊下を走り、どこかの部屋に着くと、ドアを勢いよく開けた。

 そこは生徒会室で、先ほどの状態の真と修司がいた。

 急いでやってきて、激しく呼吸している浩子を見て、真が問いかけた。

「どうしたんだよ?」

 浩子は、修司に向かって口を開いた。

「大場くん、あなたについて、真実をすべて聞いたよ、久慈くんから」

 修司は何も言葉を発さず、少し後方にある椅子へ歩き、ドサッと腰を下ろした。

「久慈……って誰だ?」

 真が尋ねた。

「大場くんが前に通っていた武秀中学校で、クラスメイトだった人」

 その男子生徒のフルネームは久慈傑であり、浩子を無理やり招き入れた、彼の豪邸と言っていい自宅において、彼女は修司に関する詳細な話を教えてもらったのだった。


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