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浩子は目を覚ました。
はっとなって周りを見回すと、家具など、ある物すべてが高級そうな、広めの室内で、彼女はソファーに腰かけた状態であり、目の前には、同じ型のソファーに座っている、自分と同じ年頃と思われる男性がいた。
だ、誰?
乱暴な感じは皆無で、おとなしい人柄に見えるものの、修司もかつてそういうことがあったように、状況とのギャップが激しいゆえに不気味で、余計に恐怖を与える要素となり、浩子はおびえて身構えた。
それに対して、少年は冷静な態度で口を開いた。
「大丈夫です、危害を加えるようなことは一切しません。僕の話を聞いていただきたいだけです」
「え……話?」
「はい。確実に耳を傾けてもらえるよう、ここに来ていただくために、手荒に扱ってしまい申し訳ありませんでした。宮城浩子さん」
「……はあ。あ、あなたは?」
「僕は——」
彼は、以前に麻奈と萌美が過去の修司について教えてもらった、あの武秀中の男子生徒だった。
「会長」
生徒会室で、役員の一人の女子生徒が、椅子に座っている修司に声をかけたが、返事はない。
「あの、会長」
少し口調を強くして、彼女は再び呼んだ。
「ん?」
心ここにあらずといった様子だった修司は、ようやく目の前の女子に意識を向けて答えた。
「一年三組の中川くんに、勉強を教えてもらってありがたいけれど、クラスで自分だけあんなに親切にしてもらうと、他の生徒たちの眼が怖いというか、肩身が狭い状態になってしまう、と相談されまして」
「そう」
修司は、その話がどうでもいいような、元気のない虚ろな表情で、それ以上は何も言わなかった。
「会長、何か楽しいイベントでも、企画してやりませんか?」
女子生徒はよどんだ空気を変えようとする感じで明るく言葉を発した。
「最近、うちの学校、雰囲気が暗くないですか? それを一掃するような。もちろん会長にやることの案があればそれでいいですし、ないなら私や他のメンバーで考えますよ」
しかし、修司はその提案がお気に召さなかったらしく、ギロッとにらむ視線を彼女に注いだ。
「あ、いや……駄目ならいいです。すみませんでしたっ」
慌てて大きく頭を下げ、女子生徒は修司のもとから離れていった。
そして彼女は、別の役員たちのところへ移動した。
「どうしちゃったんだろう? 会長」
女子生徒から話を聞き、声を潜めながらも、皆、充満している思いの丈を次々に口にしだした。
「ずっと機嫌が悪いよな」
「それ以上に、やる気を失ったって感じ」
「こんなこと言いたくないけど、権力者になるのが目的で、それを達成しちゃったからってことなのかな?」
「えー? だって、普通の中学校の生徒会長なんて、そんなたいした身分じゃないでしょ。総理大臣や大統領とかならまだしも」
「だったら、前の生徒会役員たちを引きずり降ろして、自分がその座に就くっていうのが、面白そうで、やりたかったのかも」
「ちょっと! 大場くんはそんな人じゃないって、このメンバーは特に、わかってるでしょ。確かに元気はないけど、弱いコたちへのサポートをちゃんとやってるじゃない」
「だけど、どうすんの?」
「何が?」
「一般の生徒のかなりが、今の生徒会に腹を立てるくらいの不満を抱いていて、しかも相当たまってるよ。なのに、会長があんな状態でさ」
「じゃあ、クーデターを起こす?」
「え?」
「他の役員みんなで力を合わせて会長を執行部から追いだせば、僕たちは許してもらえるかもよ」
「あんた、本気で言ってんの?」
「本気というほどじゃないけど、だからどうするわけ? 一般の生徒たちの怒りが僕らに向かってきたら」
「それより、大場くんに敵対心をあらわにすると、陰で暴力を振るわれるって噂、あれ、本当なの?」
「なあ。でも、その話がなかったら、とっくにこの執行部は責め立てられて窮地に陥ってるよ」
「なら、クーデターなんて画策したら、会長の護衛だか何だかが、うちらに襲いかかってくるじゃん」
「あ、そうか」
「だったら、八方塞がりじゃない。私たちはもうおしまいだね」
「あんな奴、信じるんじゃなかった」
「ちょっとってば!」
不安から混乱して周りが見えなくなっていた役員たちは、そこで一人残らず、はっとした表情になった。
修司が、いつのまにかだいぶ近くにいて、彼らを見つめているのに気づいたのだ。おそらく今の会話は耳に入ったであろう。
けれども修司は、先ほどの女子とのやりとりの際と変わらず冴えない顔つきで、黙って離れていった。
役員たちは、しばらくの間、固まったようになったのだった。




