18
「どういうことだよ?」
廊下で、修司のところに移動してきた真は、内心は興奮しているのを抑えて、問いかけた。
「だってさ、生徒会執行部に提出した質問状の回答が、心配した通り『検討する』って内容の、本気さがまるで感じられないものだったんだ」
「……」
真が何を言おうかといった様子で黙っていると、修司は落ち着いた態度で再びしゃべった。
「伊藤くんのお姉さん、生徒会長なんだってね。ごめん、知らなかったんだ。珍しい名字じゃないから、そうかもしれないと思いすらしなかった」
真はやはり発する言葉を選びあぐねて、にらんでいるような、いないような、微妙な眼差しで、修司をじっと見つめた。
「でも、強い立場の人は弱い立場の人間をしっかり守るべきというこだわりが僕にはあるんだ。そして、リコールはそれなりのことで、本当にやるのかじっくり考えたうえでするって決めたから、友達のお姉さんが会長だとわかったという理由で『やめます』なんてわけにはいかない。悪いけど」
修司も真から視線を逸らさずに言った。
「ごめんね」
その言葉を聞いた直後、真は速足で去っていった。
「真!」
離れた位置から二人のやりとりを見ていた浩子は、そう声を出して、彼の後を追ったのだった。
真は、自らの教室の席まで来ると、椅子にドサッと乱暴に腰を下ろして、脱力した姿勢になった。
ついてきた浩子が話しかけた。
「私、『そんな、リコールなんてしなくても、必要だと思うことは次の生徒会役員選挙に立候補して自分でなんとかすれば?』って大場くんに言ったんだけど、『僕が選挙で当選できるとは限らないのに、そんなに待っていられない。今の生徒会執行部のおかしさに気づいてさえいない人もたくさんいるだろうから、これくらいのことはやらないと』って返されちゃって……」
真は口を閉ざして何かを考えているような顔をしている。
「ごめんね」
浩子が言った。
「なんで宮城が謝るんだよ?」
「だって、あの新聞の記事をどうするか決まってなかったときに、私がおせっかいに彼のことを薦めたりしなければ、真と大場くんは親しくなってなかったから、もっと強く文句を言えたのに」
「関係ねえよ、そんなの」
少しの間の後、また浩子は口を開いた。
「だけど、リコールは地方自治体のやり方に倣って行うみたいで、生徒全体の三分の一以上の署名を集めて、そのうえ投票で過半数が賛成しないと、失職にはならないから、大丈夫だよ」
優しい口調でかけられたその励ましにも、真は何もリアクションすることなく硬い表情のままだった。




