14
隆也は、修司がやっていることのすべてを把握しているわけではないし、今の正太との会話も距離があったために断片しか耳にできていない。全部の行動をつかむのは現実的に無理であるし、それはそれで構わないと思っているが、ともかく彼は修司をたびたび観察していた。
やはり修司の人間性が気になったからである。私立校の友人たちの情報によって個人的に興味を覚えたのもあるけれども、玲香が不安をぬぐえていないのが明白なことが大きかった。
そうして見ていると、善人のかたまりのようで、なるほど暴力とは無縁にしか思われず、その落差から気味の悪さを感じ、玲香がやたら怖がるのもおかしくはないと納得できたのだった。
関心が強くなった隆也は、修司に目をやる回数が増えていった。
そんなある日だった。
休み時間に、廊下に独りでいた彼の前方から、修司が歩いてきた。二人は知った間柄にはなっておらず、隆也はじろじろ見たりなどしなければ修司は通り過ぎていくだろうと思っていた。
ところが——。
「やあ、前原くん」
隆也はビクッとした。
「僕に何か用でもあるの?」
友好的な微笑み顔で、相変わらず善い人の雰囲気しかない修司が、そう声をかけてきたのだ。
どう反応するのが良いか考える時間がなく、とっさの判断で、隆也は何を言っているのかわからないといった表情で小首をひねった。
その隆也に対し、修司は言った。
「つけ回されるなんて気持ちのいいことじゃないよ。やめてくれないかな? さもないと……」
続きの言葉を聞いて、隆也は衝撃を受けた顔になったのだった。
「高山さん」
また別の休み時間に、廊下で、隆也が玲香を呼び止めた。
「大場くんの、この前俺が私立の奴らから聞いたって言った、怖くて近寄りがたい人だったって話なんだけどさ」
「うん」
「あれ、間違ってたんだ。ごめん」
「え? 本当に?」
「ああ。俺が尋ねた連中は悪くもいいかげんでもないんだけど、そいつらが他の友人に訊いて、話があちこち行く過程で、誤った情報になっちゃったみたいなんだ。それをわざわざ確かめて教えてくれたのは、その、俺と仲が良かったなかでもとりわけ真面目な奴だから、正確だと思う。なんで、安心しなよ。穏やかで普段ケンカしない人は、怒ったときのさじかげんがわからなくて、極端な行動に出ちゃったりもするんだよ。それであんな事件なんて言われるくらいの暴力を振るってしまった可能性が高いし、念のためにできるだけ関わりを持たないようにしておいたほうがいいとは思う。でも、本当に大丈夫だから、怖がる必要はないよ」
隆也はこれでもかというくらいの笑顔を見せた。
「うん。わかった。ありがとう、心配してくれて」
玲香も、今度こそ本当に安心したといった具合に、笑みでいっぱいの表情になったのだった。
ところが、二組の教室で、自らの席に着いた隆也は、苦虫を噛みつぶしたような顔になった。
「くそっ」
彼は修司と接したときにこう言われたのだ。
「さもないと、きみの大好きな高山さんが、どんな目に遭うかわからないよ」




