あれ?スマホのパスワードが?なんか思い出せないんですけどおおお!?今時、入院生活にはテレビカードなんかより、スマホなのにいい!
さて、ここからリハビリと回復の話をダラダラ書く。
(と、その前に一つだけ、自分を褒めたいことがある。
それは、早退した日に(昼間から)酒を飲まなかったことだ。
そんなん、当たり前やろと思われるかもしれないが、酒カスの身としては奇跡的に自制を発動していたのだ。
もし、酒を飲んだ状態で、脳出血を発症していたら、脳に空いた穴は、どこまで広がっていただろうか?
想像しただけでゾッとする。
どちらかといえば、俺は運の悪い方だと思うが、今回の件では「運が良い」と思うことが多々あった。
(まあ、こうなった以上は、少しでも前向きに「俺は運がいい」とでも考えるしかないしね。))
ほんで、目覚めた俺は、動かない右半身を見てこう思った。
「やっちまったモンは、仕方ない。リハビリがんばろう。独身で良かったあ(泣)」
それに俺は、あの医師の「まだ若いから、きっと回復するよ」という言葉を、素直に信じていたのだ。
この時点で、体のステータスは0どころか、マイナスになっていて、起き上がることすら出来なかったけど。それでも、悲観することなく「まあ、何とかなるんじゃね?」と、考えていた。
早々と、母親が身の回りの物を持って来てくれた。
膝が悪いし、齢なのに苦労をかけて申し訳ない。(だいたい、母親の面倒見るためにUターンしたというのに、これでは本末転倒だよね。)
持って来てくれた物で主なものは、靴とスマホだ。
体を自力で起こすことが出来ないので、ベッドコントローラーで体を起こし、とりあえずスマホを受け取る。
そして、いつものように、待ち受け画面を操作しようとしたのだが・・・。
「??!」
パスワードが思い出せんのだ・・。
自分の中では、絶対に忘れない数字にしているはずなのに。
これは、俺だけの話ではないらしく、「脳卒中あるある」らしい。
失語の顕著な現象として、スマホのパスワードを忘れてしまうというのがある。
俺に起きたのは、まさにこれだった。
症状が回復してくると、思い出せるのだが(俺も、確か1日くらいで思い出せた)結構あせる。
それに、大事な事を思い出せそうで、思い出せんのは、けっこうな苦痛だ。
言うまでも無く、スマホが使えるのと、そうでないのとでは、入院生活のQOL(Quality of life)=生活の質が全然違ってくるしね。
母親が気を利かして、TVカードを買っていてくれたのだが、勿体無いことに一切見なかった。
こういうことが無いよう、全国の中年諸氏には、スマホのパスワードをどこかに控えておくことをお勧めする。
それに脳卒中だけでなく、不幸にして亡くなった時、家族は思い出の欠片を求めて、故人のスマホを操作しようとする。
その時にパスワードが分からないと、遺族は苦しむことになるからね。
(パスワードを解析してくれる専門の会社はあるけれど、まあ、いい値段がする。)
ほんで、何とかパスワードを思いだしたんだけれども、今度はラインを打つにも、誤字りまくる。(これには我ながら、けっこうイラついたね。)
さて、入院直後の俺は絶食状態で、その代わり点滴で栄養を保っていた。
ほんで、点滴というのは、汚い話で恐縮だが、尿量が爆増する。
だが、俺の体は麻痺の影響で、尿意もなければ、排尿することも出来ない状態だった。
でも、尿は点滴でどんどん溜まっていくものだから、下腹部に尿意とは異なる不快感が沸き起こる。でもって、だんだん増してくる。
俺は様子を見に来た看護師に、相談ベースで下腹部の違和感を訴えた。
ところが、看護師の反応は手慣れたもので
「それじゃあ、カテーテルを突っ込んで、導尿するね。『多少』痛いけど、我慢してね(はあと)」
というものだった。
というわけで、おれは看護師に尿瓶をあてがわれ、尿管にカテーテル(ようするに管)をつっこまれた。
「ひんぎィィィィィィィィィィィっ!!?」
激痛のあまり、俺は何は無くとも、排尿のリハビリを頑張ろうと誓う。
まあ、痛いのは最初だけなんだけど。けっこうな激痛だった。
尿瓶とカテーテルを使った排泄は、2、3日だったと思う。3日目くらいから、自力で排尿ができるようになり、尿瓶、ポータブルトイレに移行した。
さて、汚い話はこれくらいにして。
同じく3日目くらいから、点滴が終了。食事が開始された。
車椅子に移って、サイドテーブルに載せられた食事を摂るのだが、半身不随の身には一苦労だ。
まず、ベッドのリモコンを操作して、体を起こす。
そこから、左脚と、かすかに動く右脚をベッドから降ろす。
上半身を起こし易くなるので、左手でベッド柵を持って、腕の力も使って体を起こす。
以上、介護でいうところの「端座位」一丁あがり。
ちなみに、左腕でしっかりベッド柵を持っていないと、今の俺は姿勢を保てない。
そこから車椅子に移る前に、自宅から運んでもらった靴を履く。
のだが、右足がむくんでしまっていて、右手が使えないこともあり、自力ではこれがまた、なかなか足が入らない。
靴を看護師に手伝ってもらって履くと、ベッド柵をしっかり持って、やはり看護師に見守られながら「片足で」たちあがる。
そのまま、看護師がベッドに、ななめ横につけている車椅子に、やはり片足で座る。(看護師はいつでもフォローできるように、すぐそばで待機)
あとは看護師がテキパキと、食事の準備をしてくれる。
仕事とはいえ、こんな間抜けな中年のために、働いてくれる看護師や介護スタッフには感謝しか無い。
ちなみに、食事はペースト食だったけど、味は悪くなかった。
俺が馬鹿舌だけなのかもしれんけど。
教訓:携帯のパスワードは念のために控えておくのが吉