職場と復帰交渉!中年でも復帰出来る!好景気万歳!それにしても、無職だったり、自分に自信がなかったりする中で飲む酒は、旨いけど体に悪いかもわからんね!それと、アカンナースの話するね!気は進まんけどね!
退院の日が近付き、準備しておかなければならないことが増えてくる。
例えば、病院で貸し出して貰っている介護用の箸。これを自宅でも使えるように、自分で準備しておかなければならない。
といっても、ネット通販で探してポチるだけだ。つくづく便利な世の中になったものだと思う。
例えば車の運転。脳出血の場合、認知や見当識に悪影響が出ることがある。そうなったら、運転はとてつもなく危険な行為になる。
だから運転に支障が無いことを、運転免許センターに証明してからでないと、運転を再開できない。
なにせ安全に関わることだから、ここでズルすると立派な犯罪になる。
俺は先生と相談し、証明書を書いてもらって、免許センターに送る。
平行して、ハンドル操作が上手くできない場合に備えて、片手でハンドリングできるようにハンドルスピンナーを準備する。
そして、なにより職場復帰だ。
実は俺はこの時点では無職になっている。
Uターンで転職したばかりの俺には、休職期間は1ヶ月程度しか無く、会社として3カ月も入院するなら退職してもらうしかなかったのだ。
俺は片手が不自由でタイピングが少々遅いが、認知に問題は無いから「もっぺん雇ってえ(はあと)」と、いけしゃあしゃあと元居た会社に持ち掛けた。
世は景気が良くて、人手不足だ。おかげで会社は、自己管理のなってない中年の復帰願いを前向きに検討してくれた。
学生だった氷河期と、介護に転職したリーマンショック期を思えば涙が出る。
だが、当然ながら会社としては、俺が謳っている健康状態が本当か確認する必要がある。
というわけで、会社の人間と数度、再就職前の面接をすることになった。
だが、初回は病院までわざわざ来て貰えることになったが、病院はまだまだコロナ対策の面会制限があった。
そこで病院の地域連携室と相談して、病院の会議室を貸してもらって、特別に面会の許可を貰う。
後日訪問して来た会社の人間は「思ったよりも元気そうで安心した」そうだ。
けっこうデカい会社だから、脳出血になった人間は俺が初めてでは無い。
過去に発症した人間は、俺ほど運が良くなかったらしく、復帰することが出来なかったらしい。
だから会社としては、いくら俺が「大丈夫っす」と言ったところで「本当かよ?」と思うのが当然だったろう。
退院後にもう一度役職者と面接することになってその場はお終い。首尾良く会社との交渉は上手く進んだ。だが、意識してなかったものの、交渉が上手く行くか、かなりプレッシャーだったらしい。
この頃、タイピングの練習も開始して、脳への負担が大きくなったこともあり、十分に寝ているのに、朝起きれないということがあった。
その話は前にも述べたが、俺はタイピングで疲れたせいだと思っていた。
だが、看護師さん達の観察だと、会社の人間と交渉する前は、プレッシャーを感じているのが丸わかりだったらしい。
自分自身では平常心を保っているつもりだった。だが、他の人を通して見た、客観的な自分は無職になるかも、というプレッシャーの前にクリボー並みに容易く潰れていたのだ。
振り返ると、俺の人生では氷河期、リーマンショック、Uターンと、割と無職の時期があった。
介護職時代は、一向に上がらない給料に常に「このままでいいのか?」と思っていた。
要は、自分に確信を持てない時期がけっこうあったのだ。意識してなくてもストレスになっていたのだろう。
そんな状態で一人飲む酒は、旨いことに変わりは無かったが、体に良くなかったのかもしれない。
特に、Uターンして職が無くて、ハローワークの職業訓練校に通ってたころは、酒を飲むと体の末端にしびれを感じるようになった。
単に加齢やそれまでの蓄積だったかもしれない。
だが、ここに俺は、「プレッシャーや、不安のある状態で飲む酒は、滅茶苦茶体に悪い仮説」を立てる。
そうでなければ、「月曜から夜更かし」でネタにされるような人間と比べれば、全然マシな飲み方しかしていないのに、体がぶっ壊れてしまったことが納得出来ないんだよね。
まあ、そんな感じで、退院前の日々をけっこう忙しく過ごしていた。
病院のスタッフには随分と世話になっていた。おかげでリハビリは順調に進んだわけで、退院直前に病院スタッフの対応について、アンケート記入を依頼されたとき、俺は当然満額回答を提出した。だが、アンケートを出した後で、悲しいことに例外に当たってしまったのだ。
比較的若い看護師達の中にあって、中年の女性看護師が一人居た。
コイツが何というか、接点は少ないのだが、その数少ない接点で確実に不愉快な爪痕を残してくれていた。
前にも軽く触れたが、俺は元クズヘルパーとして、彼女に同類の臭いを嗅ぎ取っていた。
(ああ、こいつは仕事が大嫌いで、できるだけ手エ抜こうとしてやがるな・・・)
とは言え、証拠がある訳でも無いから、そう感じるのは俺の主観でしか無い。
そう思っていた。
ところが、ソイツは退院直前に絶対にアカンことを俺の目の前でやらかしたのだ。
教訓:ストレス下で飲む酒は、旨くても多分、毒だ。




