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神経通わなくなると、麻痺だけじゃなくて、体が変形して、ねじ曲がって痛むんすよ!でもご安心!ポジショニングでどうにか夜も寝られない!なんてことは避けられます!あと、少し脱線してマラソンの話するね!

おれは「1時限目」の理学療法のリハビリで、昨夜の出来事を話す。

話を聞いた理学療法士は、痛みの残滓が残っているので、マッサージを施してくれた。

自分では、右半身が満足に動かないものだから、セルフでマッサージをすることも、ストレッチも上手くできない。

おかげで、右肩と上腕に残っていた、鈍い痛みと違和感はスッキリした。


だが、残り1カ月を切ったリハビリのゴールデンタイムを、ただのマッサージに充てるのは、余りにも勿体ない。

理学療法は足メインで、足のリハビリは順調だった。

だから、おれはマッサージを理学療法のコマを当て、作業療法を優先することにした。


だとしてもだ。退院したら、マッサージは受けられなくなるから、対策が必要だった。


作業療法の兄さんは、事情を聞いて、考え込こんだ。

拘縮対策もだが、リハビリも手を抜くわけには行かないからだろう。

彼は、応急処置として、仰向けに寝ている間、畳んだバスタオルや、クッションを腕の下に敷くことを提案した。

これにより、歪んだ右腕が重力に引っ張られることが解消される。すると、痛みが出なくなるのだ!

とはいっても、寝返りを打ってしまえば、それまで。根本的な解決にはならない。

だから、これはあくまで応急処置だ。俺も、作業療法士の兄さんも、右手の機能回復に集中していたせいか、なぜバスタオルを敷いたことで痛みが解消したかについては、スルーしていた。

だが、ともかく、この処置により、俺は安眠を取り戻す。


俺はかつて、神経性難病や事故の後遺症で体が歪んだまま寝たきりになった人達に接してきた。

彼等は、腕の下にタオルやクッションを置く(ポジショニングと呼んでいた)ことが多く、また、その置き方に拘りがあった。

その理由を、俺は身を持って知った訳だ。

同時に、神経性難病や、脳卒中の利用者の体が歪む理由も理解した。

神経が通わなくなることで、麻痺が起きるだけでなく、体が歪んで行くのだ。

だから、特に、若い障碍者の家族は、体が歪まないように、せっせとリハビリをしていた。

歪むと、相当な苦痛が、身動きできない家族を襲うからだ。


俺も、ヘルパーとして障碍者のお家に訪問していた時は、家族さんから言われた通りに、二度と動かない腕や足のリハビリをしていた。

だが、内心では、どうせ動くことはないのに、無駄なことをする。と思っていた。

だけど、それは間違いだった。

本人をこれ以上苦しめないために、必要なことだったのだ。


理学療法と比較して、作業療法の方は、若いスタッフが多かった。

リハビリをしながら世間話をしたりするが、彼等はこんなクソダサオジサンの話を聞いてくれた。

中でも、話が弾んだのは、マラソンに興味のある、男性スタッフだった。

彼は、走ることに興味があるが、レースに出たことはまだなく、日常でそんなに走っているわけでも無いようだった。


42.195キロを完走したことがある。と言うと、彼のように、まだ完走したことが無い人からは、神を仰ぎ見るかのように評価されることがある。

彼もそうだった。


だけど、走ったことがある人なら分かると思うけど、タイムに拘らずに走るだけなら、フルマラソン完走はそんなに難しい話では無いのだ。

社会人になって、働きながら独学で簿記二級や、応用情報技術者に受かる方が、よっぽど難しいと思う。


練習できる環境と、習慣さえ形成すれば、OK。それさえできれば、あとは続けるだけ。半年くらいでフルマラソンはクリアできるだろう。

え?その入口に立つのが、そもそも難しいのと、続けるのが大変だって?

うん。そうかもね。でも社会人になってから、自主的に資格の勉強をするのと、根っこの部分の考え方は、一緒だと思うんだよ。オジサンは!

(あるいは、毎日400字でいいから、WEB小説を書き続けるのと似てるかもしれない。)


彼も若いから、きっかけさえあれば、フルマラソン完走程度は簡単にクリアできるはずだ。

だが、入口で足踏みしているのだ。

その気持ちは良く分かる。

ランニングの習慣を身に着けようとして、挫折した人も一杯見て来たからだ。


多分、一番問題なのは、学校体育や部活の弊害で、走ること即ちしんどいこと、という刷り込みが多くの人にあることだ。

俺は、彼に、それが誤解であることを最初に説いた。


ランニングは気楽に体を動かすものであるべきだ。息が切れるような、しんどい走り方は、最初のうちはしなくていい。いや、してはだめなのだ。

ランニングは音楽を楽しむ時間とするのがベスト。お気にいりの曲を3つ。15分ほど楽しんでる間、ゆっくり走るだけ。

最初はこんなんでいい。

だから、一番必要なのは、シューズやウェアではなく、音楽を聴くためのツール。昔なら、iPodやウォークマンだ。


走ることが目的でなく、気分良く音楽を聴くための15分。

これなら毎日できる!かもだろう!


それを聞いた彼の反応は、

「え?そんなもんでいいんですか?それならできるかも!」

という反応だったと思う。


「いいんじゃよ。最初はこんなもんで。習慣がしっかり身に着いたら、時間、距離を伸ばしていけば良い。ハアハア言って走るのは、一番最後にしておくことじゃ。なんなら途中で歩いてもいいしな。クソ真面目に考えぬことじゃ。若者よ。」


そして俺は、彼にRUNNETの存在を教えてアカウント登録を促した。

今は、どこかで毎日みたいに大会やってるから、10キロくらいの手頃なレースにさっさとエントリーすることを薦めた。


大会に出てみると、滅茶苦茶テンションが上がる。

結果として、完走できなくても、イメージ通り走れなくても、構わない。

悔しいという気持ちがバネになるし、非日常的な経験が「また出たい」と思わせてくれる。


勿体ないのは、多くの人が、初めてのレースへのハードルを、必要以上にげて、いつまでも初レースに踏み切れないことだ。

勿体ない。彼のような若者は、貴重な「若い」時間が有限であることを、まだ良く分かっていないのだ。

だから、つい背中を押したくなった。


甲子園の出場がかかってるわけでも、大学入試でもないんだから、1発で決めようと思わず、気楽に挑戦すればいいのだ!

たとえ、結果が散々でも、その結果をフィードバックすれば、目標までの距離が正確に見えて、結果、立ち止まっているよりゴールは早くなるのだ!


というわけで、彼は適当な近場、直近のレースを見つけ、エントリーした。

トレランがあればベストなんだけど。残念ながら無かった。(トレランはロードよりも、本能的に楽しいからね。)

残念ながら、大会直前に退院したので、彼の結果は聞いていない。だが、きっと良い経験になったはずだ。

俺にとっても、ランニングは氷河期負け組の自分が唯一、人生の中で、確実に積み上げて来た経験だ。それを若い世代が役立ててくれたことが凄く嬉しかった。

そういう意味で、彼には感謝したい。


:教訓 拘縮の痛みが出ても手はある!ポジショニングで痛みはかなり軽減できます!

オジサンは自分の経験を、若者が役立ててくれることが嬉しいから、うまいこと使い倒さないと損だよ!

あと、フルマラソン完走は、実は大したことじゃないよ。社会人で資格取る方が大変だよ。本当だってば。


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