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簡易上肢機能検査「1点」。おおう・・。回復への道のりは遠いなあ。それにしても、寝たきりってマジヤバイわ。自覚症状なく、体力がダダ下がりするんだもん。やべー、マジやべー。

俺は新天地である、40キロほど離れた隣の県のリハビリ病院に到着した。

受け入れの段取りが、いろいろある。

まずはベッドの位置決め。事前情報では、右麻痺が相当強いと病院側は認識していて、右麻痺対応の位置で考えていた。

だが、右腕や指が動き始めていたので、通常の位置に落ち着く。


他にも、心電図をとったり、歯の検査をしたり。

場所の移動は、自力で移動していない。

王侯貴族のごとく、車椅子を押されて移動した。疲れる要素は殆どない。


だが、その日の晩は、消灯時間よりも早く速攻で寝た。たかが車椅子移動が体に堪えていたのだ。


人間の体は、寝たきりが続くと筋肉が落ち、カルシウムが流出することで、体力が落ちるらしい。

1週間の寝たきりで、だいたい入院前と比較して、ざっくり15パーセントも体力が落ちると言われている。

この回復には1カ月はかかるらしい。


俺は、10日間、まさに寝たきりだったし、その後も見守り下でトイレ行く以外は、ベッドで過ごしていたから、ほぼ3週間寝たきりだった。

だから、3カ月の回復が必要な程体力が落ちていた計算になる。


これは案外恐ろしい事だと思った。

何故かと言えば、体力が落ちているその最中に、その実感が全くないからだ。


自分の体力が落ちている自覚が全く無い上、どの程度体力が落ちているのかも分からない。

だが俺は特に、ちょっとでも変化のあることをすると、ひどく疲れるようになったことで、明らかな変化を認めた。


しかも、一度落ちた体力。これを取り戻すのは大変だった。以前ほど体を動かせないからだ。

無自覚に落ちた体力は、ちょっとしたことで極端な疲労をもたらした。特に仕事に復帰した後、何かとすぐに疲れてしまうのには参った。

今でも残業はNGだし、金曜の夜にはヘトヘトだ。

さっきも述べたが、特に変化というか、いつもと違う刺激を受けると、ひどく疲れてしまう。

これには病後半年たった現在も悩まされている。


(え?仕事が嫌いなだけだろうって?うーん。そうかもしんない。)


介護の世界では、日に何でもいいから、最低1分は「立つ」ように言われる。そうしないと、寝たきりまっしぐらとされているからだ。

俺はその意味、怖さ。それを身をもって知った。

なんせ体力低下は、痛みを伴わないから、ものすごく気付きづらい。


高齢者でよくあるのが、大腿骨骨折で一時的な寝たきりになったが最後。体力・筋力が低下して一生寝たきりになってしまう。

骨折で1カ月は寝たきりになるのだから、高齢者には回復が難しいレベルで体力が低下するのだ。

元気だった利用者さんが、転倒して大隊部骨折。退院してきたら、寝たきりになっていて、そこから一気に。。

という事例をたくさん見て来たけど、そのメカニズムを俺は体感できたわけだ。


そして、翌日から早速リハビリが始まる。

初日は、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士によるテストだ。

初日からは1カ月毎にテストを行い、リハビリの成果を確認する。


まず、言語聴覚士によるテストは、簡単な知能テストのようなものだ。

例えば、「車」と言われて、4種のイラストから車を選ぶ、といった感じ。

どちからと言えば、高次機能障害の影響を重視している。


それ以降は、ひたすらお喋り。なんせ活舌が異様に悪くなっているのだから、喋ることによって回復させるのだ。

俺のメインの担当は、若い女性だったが、ガンダムの話、しかも宇宙世紀の話が出来たので、話ははずんだ。

おじさん、張り切って「0080」「0083」布教しちゃったYO!

他にもタブレットを使って、パズルゲームをしたり、新聞の内容を要約したり。


作業療法士のテストは簡易上肢機能テストと握力を計測した。

握力といっても、握力計を握るのが3本の指ではやっと。限りなく0に近い1キロだった。


簡易上肢機能。これには苦戦した上、現状を思い知らされる。

簡易上肢機能は検査キットを使ってテストする。キットはボードと、各5個くらいのブロックやボール等で構成されている。これを30秒くらいで麻痺がわの腕だけでボードの上を移動させて、能力を計るのだ。

移動させるものは、野球のボール、ピンポン玉くらいのプラスチックのボール、5センチ四方の布切れ、大きめのブロック、中くらいのブロック、小さめのブロック。さらにボールベアリング、コインくらいのタブレット、小さなピンだ。


まず、大きめのブロックと野球のボール。これが動かせなかった。大きく手を開けないからだ。

ピンポン玉くらいのプラスチックのボール。これが何とか一つ移動させることが出来た。

それより小さいものになると、指が上手く動かせず、まったく掴めない。

(一番難しいのは、ピンだった。)


結局、この時の簡易上肢機能検査は「1点」。。。


作業療法士は俺と同年代の男性だったが、ハゲの俺と違ってツーブロックが良く似合うイケオジだ。

彼は、2カ月後に効いてくるように、粘り強く、開かない手を曲げ伸ばしした。

それ以外では、急性期と同じように、軽い物を持って、移動させ、離すことを繰り返す。


理学療法士によるテストは、下半身の筋力や、いろんなシチュエーションでの移動速度をテストした。


テストの翌日から、彼は積極的に外へ連れ出してくれた。

(うわあ。外だあ・・・。)

1カ月ぶりの外出だった。

病院から200メートル歩いて、そこのベンチに座って、また病院に戻る。

それだけのことだが、今の俺には精一杯の冒険だ。


ベンチの横には遊歩道があった。この遊歩道、病院のある埋め立て地をぐるりと囲んでいて、1週2キロある。

そこを住民が歩いている。俺にはその姿が、遥か彼方へ旅立っていくように見え、とても眩しかった。


さあ、これから本格リハビリだ!!



:教訓 寝たきりマジやばい。


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