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第51話 イケオジ

「そんなスキルがあるんですね」

 ガーベラは驚いている。


「ふーん。それで、アイリスにエッチなことをして秘密にしてたんだ~」

 なぜか、賢者が賢くなった。


「ええ、そうです。秘密ですよ?」

 今、秘密でなくなりましたよ? アイリスさん?


 感想はそれぞれだったが、三人ともこれで解決できることは確信したようだ。

 まずは、牢番を呼びつけて『ピュア』で解錠させ、宰相のところへ案内させる。

 そして、開口一番にスキルを使えなくさせる。


『ピュア』『ピュア』『ピュア』「お前はスキルを一生使うことができない」


 スキルが使えなくなった宰相はあたふたしていたので、ガーベラが剣で脅す。


「ねえ、あなた、私が何か罪でも犯したと言いたいわけ?」


 ガーベラは本気だ。

 ダンジョンに潜っているときの顔をしている。

 放っておいたら頭と体がさようならをしてしまう。


「ガーベラ、殺してはダメだよ? 痛めつけるくらいならいいけど」

「え? そうなの? 私もやっていい?」

 そういいながら、サルビアは巨大な火球を構えていた。

「ひ、ひぃ……」

 宰相は怯えている。

 やっぱり、サルビアはバカなんだな……。


「あの、サルビアさん? それは死にませんか?」

「え? そう? 死んだら生き返らせるわよ?」

 え? そんなことできるの?

 賢者すげー!


「そ、そうなんだ。でも、一旦殺すのは後回しにして、お父様に弁明しに行きましょう?」

「そうだね! 早く、疑いを晴らしたいもんね」

「それもそうですね。そうしましょう」


 牢番の案内で王城を闊歩した。

 宰相に剣を突き付けて歩いている姿は異様で、すごく目立った。

 すぐに近衛兵が大量に近づいてきては、説明するというやりとりを何度も繰り返した。

 僕たちの後ろには大量の近衛兵が臨戦態勢でついてきている。

 スキを見せようものならすぐにでも取り押さえるつもりなのであろう。

 

 王城三階のお父様の執務室前にて、牢番は大声でお父様を呼び出した。

「失礼します。アーサー様の牢番です。現在、宰相閣下を人質にしてアーサー様が

ここにおられます。陛下に直訴したいようです。お通ししてもよろしいでしょうか」

「……通せ」

 お父様は少し間を開けて重苦しい言葉を返してきた。

 困惑しているのだろう。


 重い扉が開く音がする。

 中に入ると、お父様は下を向いていた。

「アーサー、お前が牢屋を抜け出して宰相を人質にしているということは、どちらかが、裏切り者であるということだな? アーサーは、宰相が裏切り者であると考えたから連れて来たわけか。それでは、今から『ピュア』を使って宰相に真実を語らせろ」

「ええ、そうですね。僕もそれが一番早いと思っていました。そのようにいたします」


「『ピュア』『ピュア』『ピュア』宰相、こうなってしまった経緯を全て嘘をつかずに話せ」


「ひぃ、はい。……まず、発端は私が魔王因子を発見したことにあります。魔王因子とは、人の体を触媒にして魔王を人工的に生み出すことができる魔法物質のことです。魔王因子を体内に取り込んだアウグスト公爵は魔王になりましたが、あれは私が画策したことです。その前にアーサー様に濡れぎぬを着せたのも私です。鑑定屋がミスをしたせいで鑑定屋は始末することになりましたが、アーサー様も同じくらい私には邪魔者でした」


「前の件もやっぱりお前だったか、なんでそんなに僕のことを目の敵にするんだよ?」


「そりゃ、邪魔ですよ。私のスキルと似たような能力なんですよ? これまでの悪事も暴かれるかもしれないじゃないですか?」


「それじゃあ、お前はこれまでも多数の悪事に手を染め、国家権力の中枢に居座ったというわけだな? そして、その悪事を隠すために王子にまで手を出そうとした。さらには、魔王の召喚までした……と、そういうことだな?」

 お父様の目は暗い。

 重苦しい空気が漂う。


「お前とは幼少期から一緒に国家運営について考えてきた仲だというのに、私を裏切ったというわけだな?」

 お父様は続けた。


「はい、申し訳ございません。しかし、しかしですよ? 国家運営を円滑に進めるためには、清濁併せのむ度量も必要です。多少の悪事など、国家という大きな組織を動かすうえでは必要なもの。実際に陛下も必要悪はあるとお考えではないですか?」


「そうか、お前は私の息子と、生涯の友として信じていたお前のどちらかを天秤にかけて選ばせようというのか?」

 お父様は頭を抱えながら続ける。

「……いや、違うな。お前は……だれだ? ……私の友は医師だ。アーサーが生まれた時に取り上げた医師ザッハトール・マルケスだ。お前のような存在は知らないぞ?」

 お父様は頭を抱えてうずくまる。

 

「ふははは、極限の選択を迫られることで記憶の矛盾に気づいたか。その医師とやらは、とうの昔に我が滅ぼしてやったわ。我は元神だ。ひれ伏すがいい」


 ビリビリと空気が震える。

 言葉の一つ一つに重みがあるかのように体にのしかかってくる。

 僕とアイリスはプレッシャーに押しつぶされ、その場にうずくまる。


「魔王因子を復活させ、この世界に魔王を召喚するところまで計画は進んだ。ここまでくれば世界の崩壊まではもう少しだ。お前たちにはもう用はない。さらばだ」


 そう言って、元神と名乗る人物は消え去った。

 名乗ってから真の姿を現したが、だらしない体の中年のおっさんだった。

 服装も残念で、ぴったりしたTシャツの裾からおなかが見えていた。

 圧倒的に宰相の方がイケオジだった……。

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