第4話 嫌われ兄のピュア
お母様は正室ではない。
だからといって、貴族出身の側室であるため、僕の立場は悪くない。
しかし、5 男は違った。
彼はお父様が戯れでもうけた町娘との子。
彼はパーティや、公の行事であからさまに嫌がらせを受けていた。
はっきりさせよう。
彼、アドルフ・ド・サリュームに嫌われている。
同じ側室で同じ年なのに、扱いが違い過ぎるからだ。
では、そんな嫌われているアドルフに『ピュア』はどこまで効くのだろうか?
気にはなっていたが、アドルフに会うのが嫌すぎて、やってみようとも思わなかった。
しかし、先日の3回がけの効果が凄すぎたことを考えれば、アドルフにも効くのではないだろうか?
そう考えるのは、彼からの嫌がらせがひどいからだ。
顔を合わせるたびに舌打ちするし、横に並べば、お尻をつねるし、足を踏んでくる。
周囲にわからないように、コッソリやるのが陰湿なんだ。
それを終わらせたい!
今日はアドルフと王城で顔を合わせる日だ。
子供たちは当番で月に一度、王城でお父様とお食事会を開く。
アドルフと当番で王城へ行くのが今日だ。
「アドルフ、アーサーよ、よくぞ来た。待っておったぞ。部屋へ入れ」
王城の入り口でお父様が待っていた。
お父様は分け隔てなくどの子も愛してくれている。
それはアドルフもわかっているようだ。
「はい。お父様。さあ、いくよ、アーサー」
実はすでに馬車で一度『ピュア』を使っている。
軽く効いているようだが、馬車を降りる時に足をつねられた。
『ピュア』「お兄様、待ってください」
待ってくれなかった。
中々効かないな。
城へ入り、昼食会場へ到着した。
メニューは、サラダ、スープ、軽い魚料理、小さな肉料理、パン、デザートという、簡素だが、コースになっている。
「どうだ? 稽古はがんばってるか?」
「はい。剣術が上達したと、師範がおっしゃられてました。あと、ドラゴンハートのスキルがレベル6まで上がりました」
「そうかそうか。アーサーはどうだ?」
「いえ、上達はしていません。しかし、剣聖がフィアンセになりましたので、少しずつ教えてもらっています」
「そうだな。お前は上手くやったもんだな。あの引っ込み思案の侯爵の娘を落としたんだろ?やるじゃないか。大したもんだ」
やめてぇ。
ほめると、後で嫌がらせされるぅ。
「お父様、俺は今度冒険者ギルドに登録する予定です。たくさん魔物を倒して近衛騎士団に入ります!」
「おお、そうか。ケガには気をつけろよ?無理はしないように」
「はい!」
最後のデザートまできた。
やっと終わる……。
進路がモロ被りなのが心配だな。
ダンジョンで会ったら殺されそうだ。
やはり、今だな!
『ピュア』『ピュア』
「お兄様、僕もダンジョンへ行きます。会った時はよろしくお願いします。だって僕、弱いんです」
さぁ、どうだ?
「お、おう。助けてやらなくもないが、自分でも鍛えろよ?」
どっち?
効いてる?
わからないまま帰りの馬車に乗った。
しばらく沈黙が続いた。
「あ、あの、さっきの、話だけどよ。本当に助けてげなくはないんだからな!」
デレた!
成功だ!
大発見だ。
嫌われてる人間にも重ねがけすると、デレる!
あぁー!
これ、人選ミスだ!
女の子にやりたかったー!