第39話 ブリーフィング
「集まったようだな」
お父様はそう言うと、周囲を見回した。
集まったメンバーは、僕、お父様、お母様、フランソワ、アイリス、サイト、宰相、あと、あのイカツイおっさんは近衛騎士隊長かな?
確実な見方という意味ではこれくらいしか呼べないのだろう。
ガーベラは最悪のことを想定して外で待機している。
最悪とは、ガーベラの謀反だ。
無いとは信じたいけど、一応、敵対派閥の旗頭を入れるわけにはいかない。
同じ理由でショコラも入れていない。
ショコラは今頃いつも通り『鑑定』作業をしているはずだ。
「さて、今回は複数の情報スジから城内でのクーデターに関する情報が手に入った。そこで、私が最も信頼している者だけをここに集めた」
おお、なんか選ばれし勇者感がすごいな。
アイリスは僕のメイドだからギリOKとしても、ストライク家が召喚したサイトはギリアウトな気がするけどいいのかな?
「そのクーデターの決行日が今夜ではないかと考えている。それで、みなには、その対処法を考えて、行動に移してほしい。何か案が有る者はいるか?」
近衛騎士隊長らしき人が、手を挙げる。
「うむ、ラーハルト。話してみよ」
「はっ。お初のお方もおられます。わたくしは、ラーハルト・ヒッケラーと申します。近衛騎士隊長を務めております。以後、お見知りおきを」
終わりかよ!
作戦ではなく、自己紹介?
コイツ、空気読めないやつだな?
すると、サイトが手を挙げた。
イヤな予感がする。
「ヘーイ!レディースエーンジェントルメェーン、アイム、サイト!」
ついに日本語消えた。
これで通じるのか?
「え? れでぃーす?」
お母様がいつものツッコミをいれる。
「あ、すいません。私はサイトです」
だれもツッコまないけど、こいつの本名は斎藤だからね。
サイトは聞き間違いで、斎藤一さんです!
しかも、一番重要な『勇者』という情報が抜けてるし。
「もう、自己紹介したいものはおらんか?」
お父様があきれている。
そりゃ、あきれるよね。
フランソワも手を挙げる。
まさか……?
「私はフランソワ・ポーターと申します」
近衛騎士団長だけがドキリとしている。
ほかは皆知ってるからね。
「私の祖父が皆様に大変ご迷惑をおかけいたしましたが、私はこのように陛下のご温情に甘えている次第です。今回は私もポーターの名前を持つものとして命を狙われると伺っています。しかし、緊急時には、私の命など、捨て置いてください。私は陛下の安全が第一だと考えています。よろしくお願いします」
フランソワは肩まで伸びた茶髪を揺らしながら深々とお辞儀をした。
「フランソワ、それはもっともです。陛下の安全が第一義です。しかし、あなたの命も粗末にする気はありません。命を軽んじるようなことは口にすべきではありません」
ぴしゃり、と言い切ったのはお母様だった。
かっこいい。
ちょっと惚れそう。
マザコンだ。
「そうだな、イザベラの言う通り、自分の身も自分で守れ。もちろん、お前にはサイト殿もいるだろう? 自分だけの体だと思ってはいけないぞ?」
え?
自分だけの体ではない?
「はい。承知しました」
フランソワはおなかをさすりながら答えた。
あれ?
妊娠した?
妊婦を戦場に連れてきちゃだめでしょ?
いや、向こうから襲ってくるから、フランソワがいるところが戦場になるもんな。
当初の計画と同じだ。
保護対象である、お父様とフランソワを近くに集めて同時に守る。
何も変更はない。
問題ない。
全員がそれぞれ意見を述べるが、結局は同じだった。
二人を王の私室に閉じ込めて周囲を夜通し警戒する。
念のため、一階の警護にはガーベラを配置し、堂々と攻めてこようものなら剣聖の刀の錆にすると言うものだった。
具体的には、城全体を近衛騎士五百人で夜通し警備、それ以外の五百人は城壁内の巡視、お母様はお父様と同室で、ほかの非戦闘員の方々はお父様の私室の近くの空き部屋に。
僕とサイトはお父様の私室の前で待機、ほかに、近衛騎士からも数名が選抜されて私室前に集まるらしい。
アイリスは僕から離れたくないらしく、横にいる。
宰相と、近衛騎士隊長は三階から全体を見下ろして、指示を出すらしい。
会議終了後、食事をとり、それぞれの持ち場につく。
そのころには、日は落ちて、あたりは完全に闇の中だった。
中でも、王の私室前の廊下は少しの月の光さえ入らない真っ暗闇だ。
暗いのはイヤなので、すぐに蝋燭に火をつけた。
蝋燭もたっぷり予備を持ってきた。
異世界転生して不便なことナンバーワンがコレだな。
夜の間に何もできない。
暗いから寝るしかない。
季節感は日本と同じような感じなのにで冬場は日が短い。
今は夏の終わり頃なので、まだ日は長いが、それでも、夜になると何もできないので、退屈だ。
まあ、その分、美少女を眺めたり、美女で妄想したりと、おいしい思いもしているので、どっちがいいと聞かれたらコッチを選ぶ。
そう思いながら、アイリスのおしりを眺めていた。