第33話 夜襲
晩御飯はとってもおいしかった。
みんな笑顔で会話もはずみ、楽しい食事をとることができた。
ストライク家から譲られた家具たちが大活躍し、食卓の場を華やかにしてくれた。
先代剣聖は本当に家具好きだったらしく、非常に多くの家具を倉庫にしまいこんでいた。
ライオネラは処分に困っていたらしく「ちょうどよかった」と喜んでいた。
なぜか、やたらと「ホッ」とした表情だったのが印象的だった。
「さあ、食事も済んだことだし、順に水浴びをしてこようか」
「人数が多いですものね。それでは、アーサー様、お手伝いいたします」
「ありがとう」
いつも通りアイリスと水浴びに行こうとする。
「なんかズルいわね」
サルビアがつぶやく。
「ん? 何がズルいの?」
「だって、私だってアーサーの裸を見たことないのに、同じ年のアイリスは毎晩でしょ?」
「いや、彼女の仕事だし」
冷静に反論するも、サルビアの口はとがっている。
「そ、そうです。私は仕事でやっています」
ちょっと、口元がにやけているので、余計に周囲を混乱させる。
「あー、アイリス、役得だと思ってるでしょ! ちょっと交代しなさいよ」
おいおい……。
僕は幼いころからメイドに水浴びの手伝いをされているせいで慣れ切っていたが、一般では違うらしい。
フランソワからそれを引き継いで、アイリスもやっていたわけだが、これはダメだったのだろうか?
いや、水浴びくらい何も感じないんだけどな?
僕はダラけたいので、誰かが何かをしてくれるなら全てを受け入れる。
「あ、そうだ、アーサー? 私の今の立場って何?」
「僕の婚約者です」
「そうじゃなくて、仕事よ、し・ご・と」
「んー、一応、メイドになりますかね?」
「やっぱり? それじゃ、私が水浴びの手伝いをしても問題ないじゃない」
「いえ、私は王城から派遣されているアーサー様専属メイドです」
「一緒よ。今日は交代ね?」
仕方ないとばかりにアイリスは首をふる。
困った表情もかわいい。
サルビアは勝ち誇った様子で服を脱いでいく。
みんなの前で。
わかった、こいつ、バカだな。
賢者なのにバカってすごい矛盾を持った存在だ。
まあ、美少女だからOK!
オールOK!
いや、でも、毎日のことだから気が付かなかったけど、水浴びってエロイベントだったんだな。
フランソワの体を見たくらいじゃ、何も興奮しなかったからな。
サイトには悪いけど。
もちろん、アイリスは水浴び用の服を着ての奉仕だけど、僕は素っ裸だったしな。
油断していたな。
アイリスのパンツを見て喜んでいた僕がバカみたいだ。
その後、僕は全裸のサルビアと一緒に水浴びにいった。
というか、エロイベントだとわかった今、サルビアの全裸は下半身が反応してしまう。
ビンビンのまま体を拭かれたのは恥ずかしすぎたので、誰にも言えなかった。
サルビアからは「やる気マンマンね」とささやかれてドキッとした。
しかし、彼女とは会えなかった時間が、それなりにあったので、ここまで距離を詰められて安心している。
そうこうしていると、アイリスはちゃんと奉仕できているか心配だったらしく、なぜか全裸で入ってきた。
そして「うんうん」とうなずいている。
サルビアの働き具合を見てなのか、僕のビンビン具合を見てなのかは聞けなかった。
最終的には、なぜか、ガーベラも入ってきて、水浴び場は女だらけになった。
僕はガーベラに下半身を見られないようにしゃがんで、美少女の全裸を堪能した。
「さあ、裸の付き合いもできたことですし、みんなと仲良くなれて安心しました」
ガーベラがこの裸祭りに終止符を打ってくれた。
「そうね。みんな、よろしくね」
「はい。アーサー様の水浴びは当番制にしましょう」
一人、アイリスは仕事の話をしていた。
「さあ、完全に日も落ちたことだし、寝ましょう」
「そうだね。寝よう寝よう」
「私は片付けをしてから寝ます」
「この裸の付き合いをしたメンバーで寝ようよ!」
また、サルビアが変なことを言いだした。
「そうですね。なんだか楽しそう」
「私は仕事が……」
「もう、アイリス! 明日手伝うから今日は寝ましょう?」
「そうですか? わかりました。でも、奥様がたと同衾するなんてできません」
「もう、奥様なんて言わないで。名前で呼んでよ。年も一緒なんでしょ?」
「そうですが……」
「そうだ! アーサー! 彼女とも結婚すればいいじゃない!」
ん?
なんだって?
「そうですね。私、彼女が好きになりました」
顔が赤い。
え?
そういう意味?
百合ですか?
いや、冷静に考えろ。
これはチャンスだ。
美少女がさらに増えるんだ。
実際、さっきの水浴びは完全にエロイベントだった。
アイリスの体もばっちり記憶に刻んでいる。
小ぶりだが、形のいい胸。
キュッとくびれた腰。
ぷっくりかわいいお尻。
パーフェクトだった。
彼女が僕のものに?
なんてことだ。
神こんな近くにいたのか!
「ああ、結婚しよう」
養えるかは知らんけど。
毎日その裸を見せてくれ。
「アーサー様。ありがとうございます。明日からもよろしくお願いします」
伝わってるよね?
よくわからない返事をもらった。
まあ、いいや。
寝よう。
みんなで。
いや、手は出しませんよ?
結婚前に妊娠すると、ドレスが着られなくなりますからね。
そんな所へやってきたのだ。
賊が。
窓を割って入ってきた。
黒装束を身に纏っている。
しかし、僕の両サイドには、剣聖と賢者がいる。
護衛には『盾』スキルのアイリスもいる。
剣聖は蝋燭の燭台を持ち、振る。
音速を超える速さで振られた燭台からは衝撃波が生まれる。
部屋の中を爆風が遅い、賊を壁に叩きつける。
賢者は杖も無しに、魔法を使う。
片手をかざし、氷のつぶてを射出した。
詠唱なしに唱えた呪文は魔法を作り出し、賊にぶつかり続ける。
賊は三人、あと一人は僕の前へやってきた。
アイリスが割って入る。
もちろん盾なんてない。
ベッドサイドのローテーブルを盾にして防御する。
完全に攻撃を『受け』たところへ僕の『剣聖』手刀を入れる。
黒装束だと思っていたが、胸当てはしていたらしく、僕の手刀がはじかれる。
僕の右手は金属に音速で直撃し、骨折していた。
「痛ってー!」
僕が叫ぶと、未来の嫁たちが賊へ襲い掛かる。
どっちが賊かわからないほどの形相だった。
「殺さず情報を引き出そう」
賊がかわいそうで思わず出た言葉だ。
だって、相手にしているのは、国家の最高暴力だよ?
勝てるわけがない。
ん?
まてよ?
国家の最高暴力が僕の両サイドを固めている。
この状況って誰がみてもヤバイよね?
今度こそ国家反逆罪に問われたら言い逃れできないよね?
また?
まあ、いい。
今は、この賊だ。
何者なんだ?
目の前にはガーベラに縛り上げられた賊三名がいる。
こいつらから情報を集めなければ。
一体何者なんだ?
僕たちは取り調べをすることにした。