第19話 百人長アーサー
「組長、今度の隊長は少し様子が変ですね」
「お前もそう思うか?」
「だって、剣聖の言うことすら聞かなかった、あのガラハッドのやつを手なずけてますよ?」
「そうだよな? 夢じゃないよな?」
「そうですね。確認のために日頃の恨みをこめて殴っていいですか?」
バゴッと音が鳴り、騎士が一人頭を押さえる。
もちろん、組長ではなく、平の騎士がだ。
「アーサー兄さん、次は何をしましょうか」
「ちょっと、兄さんはやめてくれよ。恥ずかしいよ」
「いやぁ、妹の世話を見てもらうんだから兄さんですよ」
そう、この、ガラハッドという男はだれの言うことも聞かない、乱暴者で有名だったらしい。
僕にもすぐにカラミに来た。
そこを、『ピュア』で本音を聞き出したら、どうやら妹が重い病で薬を買う金を稼ぐために、ダンジョン内で暴走をしていたらしい。
僕が「僕の部下として働くなら薬代くらい面倒みてもいい」と伝えたとたん「兄さん」と呼びだしたのだ。
部下の面倒くらい見て当たり前だと思っていたから、逆に申し訳ないんだが、これはこれでいいだろう。
ガラハッドのおかげで学んだことは、コミュ症をこじらしている僕がされてうれしいことは、多くの人が喜ぶということだ。
『ピュア』を使えば本音を引き出せる。
本音を引き出せばその願いをかなえてやれば信頼してもらえる。
簡単なお仕事だな。
問題は『ピュア』と『催眠術』を合わせて12回しか使えないということだ。
部下は百人いるのに。
まぁ、単純計算で十日あれば解決できるので、なるべく部下と話すようにしよう。
今日は早速、ダンジョン攻略の日らしい。
千人長としてのガーベラの手腕を見せてもらおう。
あと、心配していた、僕の方がガーベラより地位が低くなる問題は、先送りにした。
解決方法としては、結婚までに僕の方が出世していればいいだけだ。
百人長は問題なくできそうなので、それを足掛かりに千人長まで上がればガーベラに並ぶ。
そこまで行けば少なからず体裁は保てるだろう。
まあ、最悪、結婚直前に近衛騎士へ転職するって技もあるんだけどね。
それは最後の手段としてなるべく使いたくない。
できることなら、自分の力でガーベラの結婚相手としてふさわしくなりたい。
あ、やっぱり、さっき、『ピュア』を使ったおかげかな?
なんだか、ポジティブな気持ちになっている。
そんな効果があるなんて知らなかったな。
相手だけがピュアになるんだと思っていた。
さて、これからダンジョン攻略だ。
うまくできるといいのだが、僕も戦いたい。
レベリングは途中で終わっているのだ。
それに、アイリスのレベリングは全くできていない。
だから、僕のメイドというポジションで連れて来た。
サイトはめんどくさいので置いてきた。
勇者パーティのプロデューサーというポジションもおいしいが、今は真面目に頑張りたい時期だ。
サイトのようにふざけた存在がいると気が散る。
隊長というポジションだが、先頭で戦うつもりだ。
がんばろう。
「よし、アーサー隊、僕に続けぇー!」
「おおおーー!」
百人がついてくる。
なんか隊長っぽい。
いいね。
まずは、前回同様、4階層の階層主であるオーガをテイムしよう。
それまでは、アイリスの『盾』と僕の『剣聖』スキルのコンビネーションを試す。
ガーベラから教えてもらったが、100%の『剣聖』スキルを発動することは滅多にないそうだ。
逆に、どれだけ抑えられるかで勝負は決まるらしい。
100%で使うと腕が使い物にならなくなるので、半分くらいの力で使うのが通常攻撃らしい。
僕も百人長として隊長の仕事をしながら、アイリスと練習を重ねた。
『剣聖』スキルは半分の力でなら使えるようになった。
100%か50%かの二択だ。
ガーベラや、先代剣聖クラスになると、1%単位で調節できるらしい。
それは、長年の鍛錬が必要なので、僕にはまだ無理だ。
ちなみに、『剣聖』スキルはパッシブスキルなので、常に使える状態にある。
ゆえに、気を抜くと100%を出してしまう。
発現するだけで非常にレアなスキルである。
しかしながら、ストライク家の血筋のものにはなぜか発現しやすい傾向がある。
逆に言えば、ストライク家でもないのに、発現したアーサーが異常と言わざるを得ない。
よって、僕は『ピュア』以外のスキル情報をオープンにしていない。
これは、多くの者がそうであるので、問題ではない。
そもそも、ベーススキルに吸収されてしまうため、本人以外には見えなくなるのだ。
本来であれば、ベーススキルになりえる『剣聖』が、なぜか僕には派生スキルであった。
これが『ピュア』がいかに規格外なスキルであるのかを示す証拠となる。
僕は『剣聖』スキルを得てから自信を持つことができた。
あのガーベラ・ストライクと同じスキルが手に入ったのだ。
剣聖の名は国内外を含めて有名である。
もちろん外国にも剣聖はいるが、その情報も僕たちは持っているくらい有名だ。
そう、僕は自信をもって何かに取り組むことなんて、前世を通しても一度もなかった。
今回のダンジョン遠征では、隊長として、『剣聖』保持者として、自信をつけることができるだろう。
必ず成功させて帰ってこよう。
かなり、話数の順番がぐちゃぐちゃでした。
PCをつかって整理しました。
まだ、間違いあるかもしれません。
誤字も多いかもしれません。
間違いあればご報告いただけると幸いです。
読みにくくて申し訳ございませんでした。