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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第8章
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第90話 正義の味方

 自分の前に立ちはだかる大志を見て、滅びの理由はイウスティオ(みずから)の体を指差しながら嘲る笑みを浮かべる。

「お前、こいつにいいように使われてた奴じゃん」

 滅びの理由の言葉に、大志は無言を貫く。

「そこの回復魔導士を攫う手助けをしといて、今更正義の味方気取りか?」

 そうだ。確かに自分は一度、イウスティオに助けられて、彼に言われるがまま、すみれがナオに連れ去られるのを黙認した。

 それは、白の遺跡にある隠し部屋の水晶で見たから分かっている。

 我ながら、すんなりと納得してしまったものだ。

 あんな状態の自分なら、きっとそう行動してしまうと。

 後ろめたさはあっただろう。だが、自分を助けてくれた人に報いたいとも思ったに違いない。中学時代から友人だった千尋と喧嘩別れをして、千尋にも自分にも苛立って、この世界に来て後輩二人を死なせてしまって、自尊心がズタズタになっていたから。

 こんな自分でも役に立てると、証明したかったから、あんな愚かなことをしてしまった。

「―――ああ、そうだよ。でも、正義の味方面して、何が悪いんだ?」

 開き直ったような大志の言葉に、滅びの理由は瞠目する。

 咄嗟に言葉が出てこない滅びの理由に、大志は更に笑いながら続ける。

「元のそいつの方が、よっぽど人の心に付け入るのが上手かったぞ」

「黙れ! 負け犬の分際で生意気なんだよ!」

 大志の煽りに、滅びの理由は苛立ちを露わにする。そして大剣を大志に向かって振りかざす。それを大志はしっかりと受け止める。

「千尋! お前は雲井の傍を離れるなよ!」

 大志は振り返らずに背を向けたまま、声を張り上げる。

「もちろん!」

 千尋も同じくらい大声で返す。

 大志が滅びの理由を押さえている間に、スグリたちはそれぞれ、すみれを守るのと滅びの理由を足止めするのに分かれる。

 即死魔法のデメリットが消えて、すみれが救済魔法を使えるようになるまで残り十分。ここにいる全員がレベル90以上で、準備は万端に済ませたつもりだが、滅びの理由が何かしてくる可能性がある以上、油断は出来ない。

 すみれたちの予想通り、滅びの理由はすぐに動き出した。

「来い……!」

 滅びの理由がそう言った瞬間、彼の足元の影から無数の黒い獣のようなものが現れる。その気配は、滅びの理由と全く同じだ。

「つまり、即死魔法のデメリットが解除される前までに、お前らを殺せばいいんだよな」

 強さで分が悪いなら物量で押すまで、ということだろう。

 確かに、こちらは他の魔族に気づかれないようにする為、人数は少ない。

 最強の七人と大志、麗美、絵美里、亜里沙。一方で滅びの理由の方は、黒い獣を百体は出現させている。

低レベルならば良かったのだが、戦ってみて分かった。この黒い獣は、自分たちと同じくらいのレベルがある。すみれの補助魔法がありながら、一体を倒すだけでも手間取ってしまう。そして滅びの理由も、喚び出した黒い獣だけに戦わせておらず、貪欲にすみれの命を狙いに来ている。

 即死魔法のデメリットによる苦痛に耐えながら、すみれは疑問を抱いた。


 どうして滅びの理由は、この世界を何度もループさせているのだろうか、と。



次話は3月30日に投稿予定です。

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