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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第8章
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第89話 滅びの理由

 世界救済作戦当日。最強の七人は今までの魔王討伐作戦と同じ流れで、魔王の居城の中に潜入した。

 城内には、魔王以外に敵は誰もいない。だからここで、この世界を元に戻す。

「すみれちゃん、準備はいい?」

 千尋の確認にすみれは頷く。

「はい。いつでも行けます」

 そしてすみれが魔法の呪文を唱えようとした時。

「―――救済魔法なんて、そんな都合のいいものが本当にあると思ってるのか?」

 突然の声にすみれたちは驚いて振り返る。そこにいたのは、イウスティオだった。だが、雰囲気が今までとはまるで違う。

「アナタ……誰?」

 警戒をしながらタケルが尋ねる。すると、イウスティオらしき男はつまらなそうに答える。

「オレに名前は無い。だが、オレが何なのかは答えてやる。魔王が言っていた“滅びの理由”だよ」

 イウスティオの姿をした者の言葉にすみれたちは瞠目する。

「イウスティオはどうしたんだ?」

 大剣の柄に手をかけながら問うスグリに、滅びの理由はイウスティオ(じぶん)の胸の辺りに手を当てる。

「こいつは魔王の分身を殺した後から、心が不安定になっちまったからな。魂を殺して体を貰い受けたのさ」

 本当はもう少し様子見していたかったけど、と少し残念そうに滅びの理由は呟く。

 滅びの理由を前に、すみれたちは臨戦態勢でい続けている。

 滅びの理由が自分たちを邪魔してくることは、魔王から事前に聞いていたから、予測していた。だが、それがイウスティオの体を奪って現れたのは予想外だった。この状況からして、滅びの理由は人間や魔族の体に憑りつく、実体のない存在だと思われる。

 すると滅びの理由は唐突に、すみれたちに質問を投げかけてきた。

「どうして創世の書に、世界の異変の解決法が書かれていなかったと思う?」

 そうだ。ずっと疑問に思っていた。いくら古い書物でも、世界の異変がどのように解決されていたかだけ、全く記されていなかったことが。

「簡単な話だ。回復魔導士がその体にオレを封印して、そのまま死んだからさ」


 当時の回復魔導士は、最後まで救済魔法をどうすれば使えるようになるか、分からなかった。だから回復魔導士は、その身に滅びの理由を封印した。そして滅びの理由ごと命を絶ったのだ。


「あの回復魔導士は死んだ後も、オレを魂で縛り続けて復活できないようにしてたんだ。迷惑な奴だったぜ。それも数千年の辛抱だったけどな」


 数千年、回復魔導士はこの世とあの世の境で、文字通り魂を削って滅びの理由が復活しないようにしていた。だが、一人では限界が必ず来てしまう。


「数千年経ってあいつの魂はボロボロになって消え去った。つまりオレがあいつを殺したようなもんだ。だから解決法は誰も覚えちゃいないし、オレもやっと復活できたってわけ」


 滅びの理由は、自由に動ける生物の体が無ければ、何も出来ない。復活した後に滅びの理由は、下等魔物を仮の宿としてしばらく様子を見ていた。


「そこでオレはイウスティオ(こいつ)を見つけたんだ。どこかに行ってしまった魔王(ははおや)に執着している勇者様を、な」


 滅びの理由はイウスティオの体に入り込んだ。己の力が使えるようにして、後は何もしなかった。何もしなくとも、イウスティオは勝手に力を使いこなし、勝手に暴走していった。


「笑えるよな。倒すべき相手が間近にいるのに気づかないで、どんどん悪に染まっていくんだから!」

 それを聞いてすみれたちはようやく分かった。イウスティオに殺された人たちが次のループで復活できなかったのは、滅びの理由の力によるものだったのだ。そして、イウスティオに殺された人のことを誰も覚えていなかったのも、それが原因だ。

「それでどうするんだ? お前もあいつと同じように、数千年孤独にオレを封印し続けるのか?」

 嘲る滅びの理由を、すみれは真っすぐに見つめながら告げる。

「いいえ。救済魔法はあります」

 滅びの理由は目を丸くする。どうやら虚勢を張っているわけではないらしい。

「へえ。そう言うんだったら、やってみなよ」

 軽く促す滅びの理由に、すみれは呪文を唱える。

「じゃあ、お望み通り……即死(トラヴァメッサー)!」

 すみれの即死魔法は、確かに滅びの理由に命中した。だが、完全に無効化される。それでも関係なしにすみれは即死魔法のデメリットを受けて、その場に座り込む。

 そんなすみれを見て、滅びの理由は笑い出す。

「オレに即死魔法をかけるなんて、とうとう焼きが回ったか! オレは生物でさえないから、効くわけがないんだよ」

 荒い息を吐き出しながら、すみれは少しも絶望した様子を見せず、微笑んでいる。

「……いいえ。即死魔法はあくまでも、救済魔法を使う為の準備です」

 救済魔法を使うには、順序がある。

 即死魔法を使い、そのデメリットが解除された後にようやく使えるようになるのだ。

 ざわり、と心が逆立つのを滅びの理由は感じた。

 嘘や冗談を言っているわけではない。あの回復魔導士はその方法で、本当に救済魔法を使うことが出来る。

 滅びの理由の瞳に、初めて敵意が宿る。

「だったら……救済魔法を使う前に殺してやるよ!」

 そう言って滅びの理由は、すみれに向かって大剣を振りかざす。

 だが。

「―――そんな簡単に行くと思ったか?」

 そんな声と共に滅びの理由の大剣が弾かれる。すみれの前には、いつの間にか大志が立っていた。



次話は3月16日に投稿予定です。

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