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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第8章
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第87話 告白

 すみれは大志たちを助けてから連日、レベル上げに勤しんでいた。

 今までのペースではレベルを100まで上げられない。だから、多くのクエストに参加する必要があり、文字通り朝から晩までレベル上げをしていた。

 クエストをクリアして、一度ヤマトの集落に戻ってきたすみれは、一人小さくため息をつく。

「……やっぱりレベル上がりづらいなあ」

 現在、すみれのレベルは92だ。既に今までのレベルは超えているが、レベルを100にしなければ、この世界を元に戻す救済魔法を習得することは不可能だろう。それは、すみれ自身が感じていた。

 レベルが上がれば上がるほど、次のレベルにする為に必要な経験値が増えていく。それはどのゲームでも同じだろう。

 すみれは空を見上げる。時刻は既に夕方だ。もう一つくらいはクエストをこなせるだろうか。

 どうしようか迷っていると、千尋がすみれに気づいて駆け寄ってくる。千尋と今日会ったのは、昼頃のクエスト以来だ。

「すみれちゃん」

「どうしました、先輩?」

 不思議そうな顔をするすみれに、千尋は心配そうに声をかける。

「最近ずっとクエストをやっているから、ちゃんと休んでいるのかなって」

 そんな千尋にすみれは安心させるように微笑む。

「大丈夫ですよ。夜はきちんと寝ていますし」

 千尋はすみれの顔をじっと見つめる。

 確かに、すみれの顔には疲れは見られないし、目の下に隈もない。彼女の纏っているローブにも汚れはついていない。どうやら嘘はついていないようだ。

 ならば、少しだけ自分のわがままに付き合ってもらおう。

「ちょっと二人きりで話したいんだけど、いいかな」



 一目のないところで話そうと、千尋はすみれを自室に招いた。

 だが、部屋に入ってから数分経っても、千尋はなかなか話し出そうとしない。

「先輩? どこか具合でも……」

 すみれが不安そうに千尋を見上げる。千尋ははっとして首を横に振る。

「ううん、大丈夫だよ」

 すみれに微笑む中、千尋は心を落ち着かせようとする。

 ずっと黙ったままだったから、心配させてしまった。これ以上彼女を不安にさせない為にも、覚悟を決めなくては。

「すみれちゃん」

「はい」

 千尋が努めて冷静に名前を呼ぶと、澄んだ声ですみれが返事をする。

 そうだ。自分は、どんな時も真っすぐに見つめてくれる彼女のことが。



「―――ずっと前から、君のことが好きなんだ」



 一瞬、時が止まった気がした。それは、彼女の顔色が変わらないままだったから、そう錯覚しただけだ。

「本当は、元の世界に帰ってから伝えたかったんだけど、我慢できなくて」

 全身が熱く、顔が真っ赤になっているのを自覚しつつ、千尋は早口で話す。

 だが、すぐに沈黙に耐え切れなくなって、思わずすみれに謝る。

「ごめん、返事は後でも―――」

 そう言って離れようとする千尋の服の裾を、すみれが掴んだ。すみれはうつむいていたが、微かに見える頬は赤い。



「……私も。私も、先輩のことが好きです」



 相思相愛なのが分かり、千尋は嬉しくなって思わず、すみれを抱きしめる。

「先輩!?」

 すみれが驚いて千尋を見上げると、彼の表情はずっと見てきた微笑みではなく、少年のような満面の笑みだった。

「良かった……! ありがとう、すみれちゃん!」

 心の底から喜んでいる千尋に、すみれも同じ気持ちだと言うように、返事の代わりに彼の体をそっと抱きしめた。



次話は2月16日に投稿予定です。

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