表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第8章
87/89

第84話 母

 それからすみれと千尋は、最強の七人だけでなく、大志たちともレベル上げの為に依頼を受けるようになった。

「本当に俺らで良いのか? お前たちは“最強の七人”のメンバーなんだから、そいつらとレベル上げをした方が良いんじゃないのか?」

 大志の言葉に、すみれはふわりと微笑む。

「いいえ、伊刈先輩たちが良いんです。私たちと連携を取れる人で、レベルが高い人を増やしたいので」

 すみれにそう言われて、大志たちは顔を見合わせる。

 どうやらお世辞ではないらしい。

「分かった。なら俺たちは、お前のレベルが100になるまで付き合ってやるよ」

「助かります」

 どこか上から目線ながらも、棘は無い言い方にすみれはお礼を言う。

 そんな穏やかな彼らの様子に、千尋は少し離れたところで眺めながら、嬉しそうに微笑んでいた。

 美術部をあんな形でやめることになり、大志ともあの日から一度も話していなかった。正直、二度と会わないかもしれないとも思っていた。それが今、再会してあの別れが嘘のように平和で、千尋は泣きそうになった。

「千尋、さっさと行くぞ」

「……! すぐ行くよ」

 大志に呼ばれ、千尋は軽く目元を拭うと、すみれたちのもとに小走りで向かった。






 今から二十数年前、人王の息子としてイウスティオは誕生した。

 この世界の全ての人間が待ちわびた、人王の後継者の誕生。だが、彼の母親を知る者は人王以外、誰もいなかった。子であるイウスティオも、赤子の頃の朧気な記憶以外、母の姿は覚えていない。

 その為、王妃は息子を産んですぐに亡くなったとか、侍女との子どもとか、みなしごを拾ってきたなど、誰もが根も葉もない噂をしていた。

 幼い頃、イウスティオは一度だけ父である人王に尋ねたことがある。

「お母さまは、どこにいらっしゃるのですか?」

 死んだと答えられたら、子どもながらなんとか納得できたのかもしれない。しかし、父から返ってきた言葉は、別のものだった。

「母は生きている。ただ、やるべきことの為に遠くへ行っただけだ」

 幼いイウスティオには、父の言葉が理解できなかった。生きているのなら、どうして自分や父と一緒にいてくれないのか。


 そんな疑問を心に残したまま時は流れ、青年となったイウスティオは人王から、魔王を討伐するよう命じられた。

 最強とうたわれる仲間とパーティを組み、ついに魔王を討伐した。だが宴の翌朝、世界の時は一年前に巻き戻ってしまった。

 三度目の魔王討伐後、回復魔導士のヴィオラチュームも世界の異変に気づいていると知り、世界を元に戻す為に原因を探し続けた。

 しかし、ここからイウスティオの運命の歯車は軋み始めた。



 二十回目の魔王討伐作戦。イウスティオは今までと同じく、魔王にとどめを刺した。

 魔王が絶命する直前、彼女は今まで見せなかった微笑を浮かべて。

「……イウス……ティオ―――――」

 名前を呼んで、死んだ。

 イウスティオは驚き、魔王の亡骸を見つめる。

 名前の呼び方は、自分を殺した憎しみを込めたものではなく、ただただこちらを慈しむものだった。そして浮かぶのは、物心つく前にいなくなってしまった母のこと。

 まさか。

「…………母様?」

 魔王が自分の母なのか。



次話は来年の1月5日に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ