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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第8章
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第83話 助けた理由

 周辺に魔物がいなくなり、静まり返った境界の森の中で、すみれは大志に尋ねる。

「吉田さんと柴田さんはどこにいますか?」

 ここにいない亜里沙(ありさ)麗美(れみ)の所在を聞かれ、大志は自分たちが走ってきた方向を指さす。

「……この先で魔物に殺されたよ」

 すみれは大志が指をさした方向を見る。

 やはりそうか。だが、大志と絵美里の様子から、二人が殺されてそこまで時間は経っていないと思われる。ならば、自分の力で生き返らせることができるはずだ。

「分かりました。先輩、行きましょう」

 すみれが後ろにいた千尋に声をかけると、彼は頷く。そして立ち尽くす大志と絵美里に声をかける。

「ここにいると危ないから、大志たちもついてきて」

 絵美里が返事をしようとした時、隣から大志の罵声が響いた。

「ふざけんなよ! 俺は一刻も早くこの森の外に出たいんだよ! 俺はまだ死にたくない! さっさと森の出口を教えろ!」

 今までのすみれだったら、萎縮していただろう。だが、今の彼女の表情に怯えの色はない。

「大丈夫です。お二人にも補助魔法をかけたので。それに、死んだとしても私が生き返らせます」

 真っ直ぐに目を見て言ったすみれを見て、大志は毒気を抜かれて思わず瞬きをする。

「……本当に雲井か?」

 そんな大志に千尋が頷く。

「うん。すみれちゃんは最初から強かったよ」

 ただ、彼女自身が自覚していなかっただけで、最初から優しくて、強い人だ。ただ、この世界に来てそれがはっきりと表に出ただけのことなのだ。

「……そうか」

 そう大志が呟くと、彼はすみれたちに大人しくついて行った。




 亜里沙と麗美は、すぐに見つかった。魔物に殺されてぴくりとも動かない彼女たちを、すみれはためらうことなく蘇生した。

蘇生(レスシタティオ)

 呪文と共に、亜里沙と麗美の体が淡い光に包まれて、やがて消える。すると二人の肌に血色が戻り、心臓と呼吸の音が聞こえて来た。

「…………あれ」

「…………いき、てる?」

 目を開けた亜里沙と麗美は、戸惑ったように視線を彷徨わせて、やがて自分たちの横に座っているすみれに気づく。

「あ……えっと……」

「助けて、くれたの? ……えーと」

 すみれは最初、彼女たちが自分を見て驚いているのかと思ったが、どうやら違うらしい。少し考えて、分かった。

 自分の名前を忘れているのだ。あれだけ「友達でしょ」と言ってきたくせに。今更、名前を憶えていなくても構わないが。

「―――それで、千尋と雲井は俺らに何をやらせたいんだ?」

 唐突に聞こえてきた大志の声に、その場にいた全員が振り返る。

「わざわざ俺らを助けたんだ。理由があるんだろ?」

 そう尋ねる大志の表情は、誰かを馬鹿にするようなものでも、自嘲するようなものでもない。ただ、あくまで自分たちの状況を確認する為の冷静なものだった。

 そうだ。大志は元々、他人を嘲るような性格ではない。冷静に周りを見ることが出来る人だ。だから美術部の部長になったのだ。友人である千尋を副部長にしたのも、一番向いていると判断した為だ。

 千尋から聞かされていた大志の姿を見て、すみれは覚悟を決めた。

 今の彼らなら、きっと大丈夫だ。

「この世界を救って、私たちが元の世界に帰れるようにする為に、力を貸してください」



次話は12月22日に投稿予定です。

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