第80話 違和感
その日の夜、夢の中でフィーデスに呼ばれたすみれは、翌日指定された隠れ家に来ていた。
隠れ家の椅子に座るフィーデスたちは、困惑している様子だった。
「……まさか魔王さまが、あんなことをするとは思わなかった」
フィーデスたちにとっても、時間が巻き戻るとはいえ、魔王が世界を滅ぼすのは想定外だったらしい。
フィーデスたちは、イウスティオを倒す為に魔王がいる部屋の前の廊下で、こちらの様子を窺っていたという。だが、最強の七人と魔王は戦うことすらなく、世界はあっけなく魔王の手で滅ぼされてしまった。イウスティオを倒すどころの話ではなくなってしまったのだ。
「それで、その魔王さまについて、お話したいことがあります」
そう言ってすみれは、フィーデスたちに昨日、最強の七人で話した内容を伝えた。
「―――なるほど。確かに蘇生すれば、無闇に戦いを好まない、本来の魔王さまに戻る可能性が高いな。そうなれば話をすることが出来るはずだ」
フィーデスの言葉にすみれは安堵する。
すると、フィーデスはすみれに頼み事をしてきた。
「俺たちもそこに同席したいのだが、構わないか?」
「はい。私の仲間にも話しておきますね」
すみれはすぐに頷いた。
それからすみれたちは、この世界を元に戻す為の手がかりを探そうと、フィーデスたちが書き写した資料を読んでいた。
誰もが黙々と資料を読む中、すみれは創生の書の抜粋したものをもう一度読んでいた。
人間と魔族が文明を確立した頃、二柱の神が姿を現した。
この世界は、十二の月を越えた後、滅ぶだろうと告げた。
滅びの理由を突き止めて、世界を救えと告げた。
人間で最も勇気ある者と。魔族で最も知恵ある者。
一人は世界を救う筆頭に。一人は世界を留める楔に。
たとえ滅びが近づいたとしても、その前まで何度も時を戻そう。
世界が救われて、時が再び進むまで。
滅びの理由。魔王が世界を滅ぼそうとしているから? だがそれは、“世界を留める楔”としての機能のはずだから、別に理由があると思う。
人間で最も勇気のある者。最初はイウスティオだったが、役目を果たさないと魔王の分身が判断したから、現在はスグリだろう。
そこまで考えた時、すみれは違和感を覚えた。
「…………あれ?」
「どうした?」
フィーデスから尋ねられ、すみれは口ごもる。
「えっと、何かが根本的に違う気がして……」
その何かは、具体的には分からない。だが、その考え方のままでは、一生世界を元に戻すなど出来ない。そんな気がするのだ。
「すみません。こんなことを言っても、混乱させるだけなのに」
謝るすみれにフィーデスは首を横に振る。
「いや。その感覚は忘れない方が良い。俺たちも心に留めておこう」
そして二時間ほどで、彼らの集まりはお開きとなった。
次話は11月10日に投稿予定です。




