第77話 異変
しばらくして全員が落ち着いてから、すみれはイウスティオに起きた異変を話した。
それを聞いたフィーデスは、少し考え込む。
「確かに、このループに入ってから、あの人間をこの森で見かけなくなったな」
今までは必ず一度は見かけたし、姿を見なくともあの人間の気配を感じることが多々あった。だが今は、気配を全く感じない。
「そろそろ俺たちも、動く時が来たのかもしれないな」
そう言ったフィーデスに仲間三人も頷く。
「あの、動くって……」
すみれの言葉に、フィーデスが微笑を浮かべる。
「魔王さまが命懸けで行動したのに、俺たちが怯えて隠れ続けるわけにはいかないだろう」
そしてフィーデスは続ける。
「イウスティオを倒す。それがこの世界に、どのような影響を及ぼすかは分からないが、仲間の仇だ。いつかはやろうと決めていた」
「……はい」
フィーデスの言葉に、すみれは曖昧な笑みで返す。
イウスティオはフィーデスたちの仲間や過去のパーティの仲間、ループの記憶が保有できる回復魔導士たちを、身勝手な理由で殺した。許すことはできない。
だが、復讐の為に彼らが手を汚すのは、見たくない。これが自分のエゴなのは、分かっているから言えないし、止めることなど出来ないが。
「魔王さまが倒された後、倒しに行く。お前は、お前の仲間を止めておいてくれ」
「分かりました」
フィーデスの頼みにすみれは頷く。
自分にできるのは、せめて彼らが悔いなく復讐を果たせるよう、祈ることだけだ。
それから日が経ち、魔王討伐作戦が開始された。
イウスティオから、今までのような覇気は感じられない。おそらく魔王の分身を殺してしまったのが要因なのだろう。
魔王の死に際の顔に惚れたというイウスティオ。だが、彼が求めていたのは、あくまで彼女が正気に戻って絶望した顔だ。ならば、魔王の分身の死は、彼にとって想定外の出来事だったのだろう。
すみれたちは今まで通り、戦いに紛れて魔王の居城に、抜け穴から侵入する。静かな城の中、魔王が待つ部屋の大きな扉の前で、イウスティオは先に進もうとしない。
「……スグリさん?」
エニシダに声をかけられ、イウスティオははっとしたように顔を上げる。
「す、すまない! すぐに魔王のもとに行こう!」
イウスティオは慌てて開いた扉の向こうへ歩き出した。
広く、とても天井の高い部屋で、魔王はいつものように玉座に座っていた。
「―――――来たか。よくぞ来た……」
そう言いかけて、魔王はイウスティオを見て瞠目する。
そして玉座から立ち上がった魔王は、イウスティオを冷たく見下ろすと、今までとは全く違うことを言い放った。
「……余と戦う前から、そのような腑抜けた顔をしているとはな。それでも人王の息子か?」
魔王は怒っていた。初めて見る魔王の表情と言葉に、すみれたちは困惑する。
「……お、オレは」
魔王はイウスティオに蔑むような眼差しを向けると、一つため息をつく。
「戦う気がないのならば、結果など見えている。ここで世界を滅ぼした方が、そなたの為になるであろう」
その直後、魔王の体が黒い魔力の渦に包まれて、その姿を隠す。
「か、カモミール待ってくれ……!」
イウスティオが魔王に向かって手を伸ばす。それは寄る辺を無くした子どものようだ。
だが、彼の手が魔王に届く前に、魔力の渦は最強の七人も、この世界も全て巻き込んで、大爆発した。
予約投稿忘れててすみません……!
次話は9月29日に投稿予定です。




