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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第7章
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第77話 異変

 しばらくして全員が落ち着いてから、すみれはイウスティオに起きた異変を話した。

 それを聞いたフィーデスは、少し考え込む。

「確かに、このループに入ってから、あの人間をこの森で見かけなくなったな」

 今までは必ず一度は見かけたし、姿を見なくともあの人間の気配を感じることが多々あった。だが今は、気配を全く感じない。

「そろそろ俺たちも、動く時が来たのかもしれないな」

 そう言ったフィーデスに仲間三人も頷く。

「あの、動くって……」

 すみれの言葉に、フィーデスが微笑を浮かべる。

「魔王さまが命懸けで行動したのに、俺たちが怯えて隠れ続けるわけにはいかないだろう」

 そしてフィーデスは続ける。

「イウスティオを倒す。それがこの世界に、どのような影響を及ぼすかは分からないが、仲間の仇だ。いつかはやろうと決めていた」

「……はい」

 フィーデスの言葉に、すみれは曖昧な笑みで返す。

 イウスティオはフィーデスたちの仲間や過去のパーティの仲間、ループの記憶が保有できる回復魔導士たちを、身勝手な理由で殺した。許すことはできない。

 だが、復讐の為に彼らが手を汚すのは、見たくない。これが自分のエゴなのは、分かっているから言えないし、止めることなど出来ないが。

「魔王さまが倒された後、倒しに行く。お前は、お前の仲間を止めておいてくれ」

「分かりました」

 フィーデスの頼みにすみれは頷く。

 自分にできるのは、せめて彼らが悔いなく復讐を果たせるよう、祈ることだけだ。





 それから日が経ち、魔王討伐作戦が開始された。

 イウスティオから、今までのような覇気は感じられない。おそらく魔王の分身を殺してしまったのが要因なのだろう。

 魔王の死に際の顔に惚れたというイウスティオ。だが、彼が求めていたのは、あくまで彼女が正気に戻って絶望した顔だ。ならば、魔王の分身の死は、彼にとって想定外の出来事だったのだろう。

 すみれたちは今まで通り、戦いに紛れて魔王の居城に、抜け穴から侵入する。静かな城の中、魔王が待つ部屋の大きな扉の前で、イウスティオは先に進もうとしない。

「……スグリさん?」

 エニシダに声をかけられ、イウスティオははっとしたように顔を上げる。

「す、すまない! すぐに魔王のもとに行こう!」

 イウスティオは慌てて開いた扉の向こうへ歩き出した。



 広く、とても天井の高い部屋で、魔王はいつものように玉座に座っていた。

「―――――来たか。よくぞ来た……」

 そう言いかけて、魔王はイウスティオを見て瞠目する。

 そして玉座から立ち上がった魔王は、イウスティオを冷たく見下ろすと、今までとは全く違うことを言い放った。

「……余と戦う前から、そのような腑抜けた顔をしているとはな。それでも人王の息子か?」

 魔王は怒っていた。初めて見る魔王の表情と言葉に、すみれたちは困惑する。

「……お、オレは」

 魔王はイウスティオに蔑むような眼差しを向けると、一つため息をつく。

「戦う気がないのならば、結果など見えている。ここで世界を滅ぼした方が、そなたの為になるであろう」

 その直後、魔王の体が黒い魔力の渦に包まれて、その姿を隠す。

「か、カモミール待ってくれ……!」

 イウスティオが魔王に向かって手を伸ばす。それは寄る辺を無くした子どものようだ。



 だが、彼の手が魔王に届く前に、魔力の渦は最強の七人も、この世界も全て巻き込んで、大爆発した。




予約投稿忘れててすみません……!

次話は9月29日に投稿予定です。

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