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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第6章
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第71話 頼む

 高台にいる者で生きているのは、すみれただ一人だ。

「はあっ、はあっ……」

 即死魔法のデメリットを受けているすみれは、荒い息を吐き出しながら、デメリットが解除されるのを待っていた。

 デメリットが解除されれば、すぐに千尋を蘇生できる。敵はもう全て倒したから、大丈夫なはずだ。

 だが。

「―――油断したね、スミレさん」

 そんな声が聞こえた瞬間、大剣を手にしたスグリが、高台への坂道を歩いて現れる。

 おそらく、即死魔法が届かない範囲ギリギリのところに身を潜めていたのだ。

 すみれは気づいた。あれは、ナオによって即死魔法を使うように誘導されたのだと。

 デメリットが継続している今、HPは通常よりもずっと少なく、すぐに回復することもない。

 スグリに殺されてしまえば、次のループになっても生き返ることはできない。ヴィオラチュームや他の回復魔導士のように死に、全ての人間に存在を忘れ去られてしまう。アマリリスにも、リュウにも、エニシダにも、タケルにも。千尋にも。

 すみれは震える手で千尋の体を抱きしめる。それをスグリは冷たい瞳で見下ろす。

「君はもう必要ない。死んでくれ」

 すみれに向かって大剣が振り下ろされた時。

 すみれとスグリの間に小さな影が滑り込み、すみれの代わりに大剣の刃を受ける。すみれの目の前で倒れたのは、魔王の分身だった。

「魔王さま……!?」

「―――は?」

 すみれとスグリの声が同時に響く。

 すみれは慌てて魔王を抱き起こす。上体を斬られ、その小さな体を真っ赤に染めた魔王のHPのゲージは、ほとんど真っ白になっていた。大剣には毒が付与されていたのか、僅かに残ったHPも少しずつ削られている。

 薄っすらと目を開けた魔王は、すみれを真っ直ぐに見つめる。

「何やら胸騒ぎがしてな。……間に合って良かった」

 魔王の微笑みにすみれは泣きそうになる。

 ふいに何かが落ちる大きな音がして、すみれは振り返る。

 スグリが大剣を落とした音だった。

「…………カモミール? なん、で」

 スグリ。否、イウスティオは、寄る辺を無くした子どものような顔をしていた。

 彼からはもう、すみれへの殺意は消えている。すみれも、イウスティオへの恐怖は消えていた。

 すぐに毒を消して、回復させれば、魔王は助かるだろう。だが、デメリットはまだ続いていて、魔王を回復させることができない。

 それが悔しくて、すみれの瞳から涙が零れた。零れ続ける涙を、魔王は眩しそうに見ると。


本体()を頼む」


 魔王がそう言った直後、彼女のHPのゲージは完全に真っ白になった。

「魔王さま!」

 そして唐突に視界が暗転した。


次話は7月7日に投稿予定です。

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