第67話 それぞれの役割
翌朝、すみれと千尋、アマリリス、リュウは、誰とも会わないようにしながら、ヤマトの集落の外に抜け出した。リュウには千尋から話してくれて、すぐに了承してくれたそうだ。
そしてすぐに、人間の少女に姿を変えた、魔王の分身を見つけた。
魔王はすみれたちを見回して。
「みんな来たね? じゃあ、行こうか」
歩き出した魔王に、すみれたちはついていった。
魔王とすみれたちは、白の遺跡の裏側まで行くと、転移魔法で遺跡の隠し部屋に入る。
リュウとアマリリスが、転移魔法で入った部屋を物珍しい表情で見回していると。
「じゃあそろそろ、そこの二人の為に、正体を明かさないとね」
魔王は人間の少女の姿から、本来の姿に戻る。そして自分が魔王であることを告げるが、リュウもアマリリスも、特に警戒している様子はない。
「……驚いたな。そなたたちは、余を警戒しないのだな」
そう言う魔王に、リュウとアマリリスは微笑む。
「敵意がないからね、警戒する必要がないよ」
「うん。スミレとチヒロが会わせたい奴が、悪い奴なわけがないし」
自分たちのことを信頼してくれている言葉に、すみれと千尋は嬉しくなる。
そしてすみれは、部屋の中央にある水晶を指さして。
「その水晶に触れてください。それで魔王さまの過去と、私たちがこの世界で今まで何をしてきたのかを、見ることが出来ます」
「分かった」
「分かった」
リュウとアマリリスは頷くと、水晶に手で触れた。そして魔王の過去とすみれたちが、この世界で何をしてきたのかを、見始めた。
しばらくして、リュウとアマリリスが水晶から手を離す。そしてリュウは魔王を、アマリリスはすみれの頭を優しく撫でた。
突然のことに、特に魔王は驚き、戸惑っていた。
「な、なんだ!?」
「いや、ね。頑張っている子には、ご褒美をあげないとって思っただけだよ」
微笑むリュウの手を、魔王は顔を赤くしながらどける。
「そ、そのようなものは必要ない! このような形だが、そなたたちより百歳は年上だぞ」
魔王の言葉に、すみれたちは驚いた。
その後、いろんなことを話していた時、アマリリスが軽く手を上げる。
「ねえ。ちょっといい?」
その一言でその場にいた全員が、アマリリスを見る。
「あたしたちの仲間のスグリが、本当は人王の息子のイウスティオなんだよね?」
「はい。そうです」
すみれが頷くと、アマリリスは続ける。
「でもさ。さすがに元の世界でゲームを一緒にやっていたのは、そのイウスティオじゃないんじゃないかなって思ってさ」
すみれたちは、はっとする。
すみれたちが魔王に目を向けると、魔王は肯定する。
「ああ。余の目的はそなたたちの世界の人間を連れて来ることだったから、こちらの世界の者は誰も干渉できないようにした。だから、スグリとしてゲームをしていたのは、あの男ではない」
イウスティオに殺されれば、魔王以外は次のループで存在しないことになる。つまり、すみれや魔王などの一部の者を除いたほとんどの人間は、イウスティオに殺された者の存在を忘れてしまうのだ。だが、自分たちは元の世界でのスグリの記憶がある。
「つまり、本物のスグリさんはまだ生きているってこと?」
「その可能性は高いだろうな」
おそらく、本物のスグリはどこかに囚われているのだろう。イウスティオがスグリを演じるのに必要だから。
「これで、俺たちがやるべきことは決まったんじゃないかな?」
リュウの言葉にすみれたちが頷く。
スグリの動きを警戒しつつ、フィーデスたちと、この世界を元に戻す方法を探る。それと並行して、どこかに囚われている本物のスグリを見つけ出す。
それぞれの役割が決まり、すみれたちは白の遺跡を後にした。
次話は5月12日に投稿予定です。




