第66話 十二回目
魔王を討伐して、十二回目のループに突入した。
すみれたちが巻き戻る、三か月前よりもずっと前の時間。村主正吾を再び幽閉したスグリは、単独で「忘れじの塔」に来ていた。
「今回まで、あんな無駄な時間を使いたくはないからな。先に潰させてもらう」
剣を携えて、スグリは塔の中に入った。
三十分も経たないうちに、忘れじの塔内にいた魔族は全滅した。
三か月前に時間が巻き戻り、すみれは前までのループの記憶がない千尋を連れて、魔王の分身が待つ場所に向かった。
魔王の分身と共に、すみれと千尋は転移魔法で白の遺跡の隠し部屋に入る。千尋が部屋の中央にある水晶に触れると、彼は記憶を取り戻した。
その後、前回のループの記憶を共有する為に魔王が水晶に触れる。すみれの記憶を見て水晶から手を離した魔王は、すみれのお腹の辺りにそっと手で触れた。
「魔王さま?」
首を傾げるすみれに、魔王は手で触れたまま呟く。
「……そなたには、だいぶ痛い思いをさせたな。すまない」
その言葉で、すみれは魔王の行動の意味が分かった。
「大丈夫ですよ。怪我はすぐに治りますから」
すみれがそう言って微笑むと、魔王は複雑そうな表情を浮かべる。
「そういう問題ではないと、そなたの仲間にも言われたのではないか?」
「それは……」
全くその通りなので、すみれはそれ以上何も言えなかった。
それから少し三人で話をした後。
「それで、魔王さまに相談したいことがあるのですが……」
そう言ってすみれは魔王に話し始めた。
「―――なるほど。その男だけでなく、他の者にも“話したい”と」
魔王の言葉にすみれは頷く。
「はい。私の仲間のうち、三人くらいなら、この世界で起きていることを話しても大丈夫そうな方がいたので」
そしてすみれから挙がったのは、アマリリス、エニシダ、リュウだった。
「そなたから彼らの名が挙げられるのは、予想していたが……」
すみれが挙げた名前を聞いて、魔王は軽く眉根を寄せる。
「エニシダという男に記憶を共有するのは、やめた方が良いのではないか?」
意外な言葉に、すみれは首を傾げる。
「どうしてですか?」
魔王は複雑そうな表情を浮かべて答える。
「余がそなたの記憶を通して見たことだから、あまり強くは言えないが……あの男は記憶を共有した場合、それが顔に出そうな気がしてな……」
魔王の言葉に、すみれと千尋は顔を見合わせた。
その日の夕方、すみれはアマリリスの部屋を訪ねて、言葉をぼかしつつ聞いてみた。
「あー、あいつはやめた方がいいと思うよ。秘密にできないタイプだから」
すぐに、アマリリスから魔王とほぼ同じことを言われた。
「そうなんですか?」
「うん。何か隠し事をしてると、すぐに顔に出るんだ」
そう言っている間に何かを思い出したのか、アマリリスは苦笑いを浮かべている。
エニシダと親しいアマリリスが言うのなら、本当なのだろう。ならば、エニシダには申し訳ないが、今回はアマリリスとリュウにだけ話そう。
そしてすみれは、アマリリスに向き直る。
「アマリリスさん。話は変わるんですが、明日は空いてますか?」
すみれからの突然の問いに、アマリリスは目を瞬かせた。
次話は4月28日に投稿予定です。




