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回復魔導士は私だけ  作者: たまごがわ
第5章
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第59話 恩人

 緊急事態に、すみれを除いた最強の“七人” はすぐに集まった。

「今、攻略サイト班が、彼を発見した場所から、どこに捕まっていたか予測してくれている。もう少ししたら、位置をある程度絞り込めるそうだ」

 スグリの言葉に千尋たちは頷くが、彼らの表情は暗いままだ。

 プレイヤーたちが行方不明になっているという話をした翌日に、すみれが攫われたのだ。防ぐこともできたのではないかと、強く後悔しているのだ。

 それでも、今の自分たちに出来ることは、すぐに出られるように準備を万全にしておくことだけだった。




 すみれが“条件”をのんだ後、囚われた他のプレイヤーたちのもとに、魔族がやってきた。プレイヤーたちはまた拷問されるのかと恐怖する。だが。

「お前たちを解放してやる」

 そう言って魔族は、ここに来た時と同じように、プレイヤーたちの頭に周囲が見えないよう布でできた袋を被せて、鎖から外された手首を後ろ手に拘束する。

 魔族たちはプレイヤーたちを立たせると、彼らを牢獄の外に連れ出した。


 プレイヤーたちは牢獄の外に出てから、境界の森の中をずっと連れ回されているのを感じた。おそらく、歩いた時間や歩数などで、牢獄の場所を特定されないようする為だろう。

 一時間ほど歩かされて、ようやく魔族たちから止まるように命じられる。

「お前たちを捕らえた場所まで戻ってきた。そのうち、誰かが見つけてくれるだろうよ」

 そう言って魔族たちは境界の森の中へ去っていったのが、足音で分かった。



 それから数分後、拘束されたプレイヤーたちを、探しに来ていた他のプレイヤーが発見した。

 拘束を解く中、体調を気遣われ、プレイヤーたちは一応大丈夫だと答える。

 拷問をされて痛かったことは痛かったが、そこまで長く囚われていたわけではなかった為か、思ったよりもHPは減らされていない。

 ひとまずヤマトの集落に向かおうという話になった時、プレイヤーの一人が気づく。

「あれ? スミレさんは……?」

 そう言われて他のプレイヤーたちも気づいた。

 自分たちと同じように捕まったはずの彼女の姿は、どこにもなかった。





 プレイヤーの一人である“ジューン”は、魔族たちがプレイヤーたちを解放したところを偶然見た。そして彼は今、魔族たちに気づかれないよう離れて後をつけている。

 ジューンは「リレヴァーメン」の攻略サイトライターの一人で、回復魔導士のスミレが行方不明になったことを知ってすぐに行動を開始した。


 彼は、別に現実ですみれと知り合いだったわけではない。会ったことがあるのはゲームの中だけだし、実際に顔を見たのはこちらの世界に来てからだ。

 だが、スミレにはプレイヤーとしてだけでなく、ライターとしてかなり助けてもらった。

 「攻撃手段を持たない」ということから、敬遠され続けた回復魔導士として根気よくレベル上げしてくれたおかげで、そのデータを攻略サイトに載せることができたのだ。

 ゲーム内のチャットで、レベルが一上がるごとのステータスの数値を教えてほしいと頼み、彼女は了承してくれた。それによって回復魔導士の詳細のデータが分かり、スミレに憧れた新規のプレイヤーたちが回復魔導士になることもあり、それが彼にとっては、とても嬉しかった。

 そんな恩人が危険にさらされていると考えたら、居ても立っても居られなくなったのだ。


 ジューンはどこかへ向かう魔族たちの背中を密かに追う。森の木々が少なくなり、広い場所に出ようとした時、背後から冷たく硬いものを首筋に当てられる。

「―――――動くな。これ以上先に行けば、あいつらに気づかれる」

 鋭い殺気に体の芯が冷えるのを感じながら、ジューンは背後の者の言うことをきいて、歩みを止める。

 後ろを振り向けずにいると、背後にいる者が紙のようなものを、ジューンの手に握らせる。

「“そこに”回復魔導士がいる。この世界の地理と敵情に詳しいのなら、仲間と共に助けにいってやれ」

 その言葉にはっとしてジューンは恐怖も忘れて振り返ると、そこには既に、誰もいなかった。


次話は来年の1月6日に投稿予定です。

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